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ニールの目ざめ (52) 予期せぬ妨害

作戦成功……と思いきや。

実はこれ、先日ニールがエンシャント・ケイブに行った時、ゼペックからお土産としてもらった品なのです。ニールは最初、受け取る事を拒みましたが「セディー(ニールのパパ)には、いつも贔屓にしてもらってるから、そのお礼じゃ」と言われ、半ば無理矢理に持たされたものが、まだポケットの中に残っていたのでした。


二人の男の子は、目をキラキラとさせてコマを見つめます。そしてその回転が止まり、ニールの手の上に転がると、


「さぁ、今度は向こうでやってみよう」


と、ニールが言いました。そして二人をせかすように、ニールはドッジたちの待つ、公園の垣根の方へと小走りに急ぎます。


これで、全員救出です!


垣根の前のベンチに、八人の子供たちが勢ぞろいしました。


「これでいいんだな? 何だか知らねぇが、間にあったみてぇだな」


ドッジが、ようやっと安全地帯に辿り着いたニールを迎えます。


「あぁ、そうみたい。みんな、ありが……」


と、ニールがお礼を言いかけると、マリアが、


「ニール、あれ!」


と、何事か叫びます。


ニールとドッジが彼女の方を見ると、マリアは半ば血の気の引いた顔で砂場の方を指さしていました。


「何だ!? ちくしょう!」


彼女の指さす方向に、顔を向けたドッジが声を張り上げます。ニールも続いて「あっ」と声を出しました。


「まだ、居やがる!」


ドッジが、悪態をつくのも理解できます。何故ならば、全員救出したはずの砂場に、脱出させた子供たちよりもまだ小さい男の子が、一人遊んでいるのです。自分よりも大きい子供が皆去ったので、遠慮をしていた彼がこれ幸いとばかりに、砂場を占領しに来たのでした。


その光景を見たニールが、慌てて砂場の方へ駆け出そうとしたその時です。


彼の体は、突然ガクンという衝撃を受け、一歩も前へは動かなくなりました。


「あなたたち、何をやってるの!?」


甲高い声が、辺りに響きます。


作戦に夢中のあまり、三人は気づかなかったのですが、砂場での異変を目ざとく見つけた四十代半ばの中年女性が、ニールたちの集まっている場所へと来ていたのです。


「小さい子を、イジメたらダメじゃない!」


彼女は、如何にも自分が正義の遂行者の如く振る舞います。まぁ、事情を知らなければ(この時点では、ニールしか事情を知らないのですが)、彼ら三人が、年下の子供にちょっかいを出していると勘違いされても仕方ないでしょうね。


「おばさん、離して!」


彼女の方に向き直ったニールが、必死に妨害者の手を振り払おうとしますが、如何せん、女性とはいえ大人の力には敵いません。


ニールは手を掴まれたまま、再び砂場の方に目を注ぎました。小さな子供は、一人で夢中になって砂遊びをしています。


「おばさん、離して下さい。事情は後で離しますから」


ニールは懇願しますが、中年女性は、


「あなた、何言ってるの?そんな事を言って、逃げる気でしょ。一体どこの子なのかしら。親は一緒に来ているの?」


無慈悲な正義感から発せられた言葉のナイフが、ニールの胸をグサリグサリと傷つけました。


どうしよう!? このままじゃ……!


諦めかけたニールが、三度砂場の方を振り返ったその時です。


「きゃっ!」


突然、彼の後ろで中年女性が悲鳴をあげました。


驚いたニールは、女性の方に向き直ります。


何が起きたかって?


ドッジが、彼女に体当たりをしたのです。


普段なら、いくらドッジが同年代の子供たちよりも体格が良いと言っても、大人をどうにかする事なんて出来ません。


しかし女性がニールに気を取られていたおかげで、彼女はガキ大将のタックルには全く気付きませんでした。そのせいもあり、女性はバランスを崩し、その場にひざまずいてしまいます。


その拍子にニールを捕らえて手も外れ、彼は千載一遇のチャンスを得る事となりました。


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