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ニールの目ざめ (48) 最大の異変

マリアの心配をよそに、三人は公園へと入っていきますが……。

「大丈夫だよ。もう心配ないさ」


マリアの心配をよそに、ニールは、にこやかに答えます。


「そうだよ。ニールが大丈夫だって言ってんだから、大丈夫に決まってんだろう?」


ドッジが薄弱な根拠ながらも、太鼓判を押しました。


人の気も知らないで!


マリアは言葉にはせず、心の中でドッジを責め立てます。


彼女からしてみると、もし心配事を口に出してしまえば、それこそニールがまた気にし出すのは明らかで、確証がない今、推論を口にするのはためらわれたのでした。


ご機嫌の二人と心にモヤモヤの残る一人は、揃って小さな門をくぐります。公園の中ではいつもの通り、彼らより小さい子供を連れた十二、三組の親子やお年寄りが、それぞれにうららかな昼下がりを楽しんでいました。


「それにしても、砂場はいつも人気があるねぇ」


公園の中心にある大きな砂場に差し掛かった時、ドッジがふと漏らします。


砂で出来た社交場には、大きな木の影が真ん中あたりまで伸びていて、今も小さな子供たちが七、八人、お城を作ったり、泥で団子を握ったりして遊んでいました。


昔はボクも、ここでよく遊んだなぁ……。


ニールは砂場で戯れている子供たち、そして少し離れたベンチで歓談している親たちに、かつての自分やパパ、ママの姿を重ねます。

まぁ、”昔”と言っても、ほんの四、五年前の話なんですけどね。パパやママが聞いたら、笑い出しそうです。


小さな感慨にふけるニールが、何気なくマリアの方を見ると、彼女はなんとも言えない不安げな表情をしていました。


やっぱり、心配なのだろうか?


自分の身を案じてくれるのは嬉しいが、それが過ぎてはかえって申し訳ないと思ったニールは、マリアにわかるよう、大袈裟に手を振りあげながら、


「ほら、ここまで来たって、ボクは何ともないよ。だいじょう……」


と、言おうとしました。でも”だいじょうぶ”の、最後の”ぶ”の字を言いかけた時、異変が起こります。


”あの感覚”が、急に蘇えってきたのです。


ニールは咄嗟に、辺りを見回しました。しかしこれまでと同じで、特に変わった事があるわけではありません。


なんで? もう治ったはずじゃぁ……。


彼は自問自答しますが、答えが閃くわけもありません。ニールは、とにもかくにも、ここを離れようと思いました。そうすれば、この変な感覚が収まると考えたからです。


早く! あの頭痛が襲ってくる前に!


マリアとドッジに報告する間もなく、ニールは公園の出口を見据えました。


そんなニールの変化に、彼を注意深く見ていたマリアが、まず気がつきます。


「ニール! また?」


しかし彼が、その問いに答えるよりも早く、


「おい、どうした。ニール!」


マリアの声を聞いたドッジがニールの肩を掴みました。


しかし彼らの声に、耳を傾けている時間はありません。とにかく地獄のような頭の痛みがやって来る前に、この場を離れなくてはいけないのです。


お願い! 頭痛よ、来ないで!


ニールは心の中で必死に叫びますが、その願いは脆くも打ち砕かれました。


”変な感覚”


すなわち頭の中で、ノイズのようなものが不協和音を奏でる症状はドンドンと加速し、やがてはこの前と同質の痛みを、ニールの頭にもたらします。


やめて!


声にならない声で叫ぶニール。


しかしノイズは増々酷くなり、これまでの最高潮に達します。


思わず両ひざをついて、その場にうずくまるニールを見て、マリアとドッジもその場で膝をつき、彼の顔を覗き込もうとしました。ですが、周りの大人は誰も気がつきません。


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