表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/102

ニールの目ざめ (30) ママの不機嫌

家へと無事帰ったニール。でもママの機嫌が何か悪そうで……。

「でもよ、寝る子は育つって言うからな。まぁ、俺はそのおかげで、ここまで成長したわけだし」


ドッジがエヘンとばかりに、胸を張りました。


「脳ミソは、あんまり成長してないみたいだけどね」


マリアが、そう返すと、


「なんだとぉ!」


と、ドッジがひときわ大きな声で、怒鳴ります。


「ちょっと、そんな大きな声を出したら、ニールの症状に響くじゃない!」


「あ、すまねぇ。つい」


痛いところを突かれたガキ大将が、ニールの方を見て頭をかきました。


それから念のためという事で、十五分くらい静かに木陰で過ごした三人は、立ち上がって公園の出口へと向かいます。


「なぁ、家まで送って行こうか」


公園の出口を前にして、ドッジが言いました。


「そうよね。治ったって言うけど、家に帰り着くまでに、また悪くなるかも知れないし」


いつもは喧嘩ばかりの二人の意見が、珍しく一致します。


「大丈夫、大丈夫。心配ないよ。


それにマリアは今日、塾の日だろ。ドッジの方は、帰ったらお母さんの手伝いをするように言われてるって、さっき教室で話してたじゃないか」


ニールが二人の厚意を、やんわりと辞退しました。


「水くせぇ。友のためなら、そんなもんは、どうってことないぞ」


ドッジが、胸をドンと叩きます。


「そんな事言って、本当はお手伝いをサボりたいだけなんじゃないの?」


マリアが、疑惑の目でドッジをジロジロと眺めます。


「み、見損なうな。んなワケ、あるはずないじゃんか」


半分、図星を突かれたガキ大将の心臓が、ひとつドキンと鳴りました。


「ほらほら、ボクは大丈夫だから、二人はちゃんとそれぞれの用事をして」


ニールが、笑いながら話します。


普段と変わらぬ彼の表情に、二人の親友は納得し、心配ながらもそれぞれの帰途に着きました。


手を振って別れたニールの心に、わずかながら、トゲの刺さったような悔いが残ります。


あとで本当の事を言ったら、それこそ”水くさい!”って言われるんだろうな。


ニールはそう思いながら、ママの待つお家へと足を向けました。幸いにも、ドッジやマリアが心配したような事態は起こる事もなく、三時には、ママ特製のホットケーキをおいしく頂きました。


おやつを食べ終わったニールは、早速、カバンの中からメリドルお手製のプリントを取り出します。テストのためというよりも、やっぱり魔法についての事柄には興味がありました。


プリントを三回ばかり見返したニールは、それを机の引き出しにしまい、本棚にある読みかけの小説を開いて、小一時間ほど空想の世界へと羽ばたきます。その後、ちょっぴりうたた寝をした彼は、水を飲みに一階へと降りて行きました。


ピッチャーから注がれた冷たい水に、ニールの喉は気持ちよく潤います。が、それとは裏腹に、流し台の前に立ち夕飯の用意をしているママの頭は、かっかと熱くなっておりました。


今日はいつもより早く出かけた関係上、その分、帰宅も早まるはずのパパが、未だに帰って来ないのです。


どうせまた、あの”ガラクタ屋”に、立ち寄ってるのね。仕事が終わったんなら、早く帰って私を手伝ってほしいのに!


ママは心の中で、半分諦めながらも毒づきます。


ニールはママの顔が少し引きつっているなとは思いつつ、触らぬ神に祟りなしとばかりに、大人しくグラスを持って自分の部屋へと引き返しました。


グラスを机の上に置いたニールは、ベッドの上で横になります。そしてママの機嫌が悪そうなのは、パパの帰りが遅いためではないかと思いつきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ニールの魔法の件があるので 読んでいて、ほっとする空気の中に、 安心したいのに、ちょっとだけハラハラ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ