表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/102

ニールの目ざめ (20) 神々の恩賜 その3

神々の恩賜の授業が続きます。神々が開いた大会議の結論とは……。

「ですが何故、ヴォルノースの森が閉ざされてしまったのかについては、今、お話しできます」


メリドルの緩急をつけた情報提供の仕方に、子供たちの抗議はすぐにやみました。


「神々の争いはドンドン激しくなり、ついには地上の人たちにも、悪影響を及ぼし始めます。


考えても見て下さい。海を割ったり、山を吹き飛ばしたりできる神様たちが、本気でケンカをするのです。周りが無傷で済むはずがありません。世界は、大いに乱れました」


自分たちの暮らす世界に、かつてそんな災厄が降りかかっていた歴史を知り、子供たちは急に黙りこくってしまいました。


「神々は。悩みました。彼らとて、決して地上の者たちが嫌いなわけではなかったし、自分たちが迷惑をかけている事は重々承知していたからです。


かといって、自分たちのグループの主張を引っ込めるわけにもいきません」


「ちぇっ! 神様なんだから、もう少し広い心を持てないのかねぇ。


俺ならすぐに、ケンカをやめるけどな」


大人しくしていたドッジが、クチバシをはさみます。


「ウソばっか。あんた、絶対に自分の方からは謝らないでしょ!」


マリアが、異議を唱えました。教室のあちこちから”そうだ、そうだ”とヤジが飛びます。


「そ、そんな事ないぞ」


調子の良い事をつい口にしてしまったドッジは、思わぬ集中砲火にへどもどしました。


「ほらほら、静かにして。ドッジも、自分が悪いと思った時は、素直に謝ろうな」


大騒ぎになる前に、メリドルが事を収めます。ドッジも、とんだ藪蛇とばかりに、それ以上は何も言いませんでした。


メリドルは、更に話を進めます。


「そんな中、本当に世界が終ってしまうような事態が起こりました。もちろん、神々の争いが元になっての事です。そこで全ての神々が集まり、大会議が開かれたのでした」


”神々の大会議”。それはどんなものだったのだろうかと、子供たちは思い思いに想像力の翼を広げました。


「でも、やっぱり結論は出ませんでした。そこで神々は、思い切った手段を解決策として見出したのです。


誰も引く事が出来ないのであれば、”皆が引けばいい”という、究極の決断をしたのでした」


ここは、最初の山場です。語り手としても腕の見せ所でした。


「彼らが出した結論とは、神々が皆、別の世界へ移住するというものだったのです」


メリドルの言葉に、生徒たちがどよめきます。


「別の世界へ行くって、どういう事ですか? ヴォルノースから、いなくなっちゃうって事?」


生徒たちが、異口同音に言いました。それは、そうでしょう。神様が消え去っちゃうって、これはかなりインパクトのある成り行きですからね。


「えぇ。神々は大きく分けて、四つのグループで争っていました。その内、三つのグループが、それぞれこの世界とは全く繋がりのない、別の世界へ移住すると決めたのです」


メリドルは、最初のクライマックスを話し終えました。でも、子供たちは納得致しません。


「それじゃあ、意味がないんじゃありませんか?」


マリアが、即座に質問します。


「なぜ?」


メリドルが、間髪入れずに聞き返しました。


「だって、神様たちはヴォルノースの世界の事で争っていたのでしょう? 去ってしまったら、元も子もないんじゃ……」


なるほど、もっともな意見ですね。周りの皆も、呼応するように頷いています。


「土地などを巡っての争いだったら、そうかも知れませんが、別にそういうわけではありません。


さっきも言ったように、争いの原因については次の学年で学びます。まぁ、でも少しばらしてしまえば、それぞれの主義主張の争いってところでしょうか。


ですから、ザックリと言ってしまえば、


”もう、仲直りは出来ない。だから別れて暮らそう”


という結論に到ったのでした」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ