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ニールの目ざめ (11) 再び公園で

シャーロット先生が病院へ運ばれた後、クラスの生徒たちは……。

「こら、ドッジ。自習と自由時間は違うからな。しっかり、勉強するんだぞ」


メリドルが釘をさすと、


「がってん承知の助ですよ、先生」


自由を謳歌する気満々だったドッジが、照れくさそうに頭をかきます。遅刻常習者の彼も、ニールと同じくメリドルとは仲良しになっていたのでした。緊迫した空気から解放された教室が、どっと沸き立ちます。


さて、その後どうなったかと言いますと、やはり余りに急な事態だった事もあって、先生たちの融通は殆ど効きませんでした。結果、ニールのクラスは午前中は全て自習となり、給食を食べた後、十二組だけは下校と相成ります。ドッジが給食のパンを頬張りながら「毎日こんな感じだったら、いいのになぁ」と、ご機嫌だったのは言うまでもありません。


「さってと、これからの素晴らしい時間をどう過ごそうか?」


本来ならば五時間目の授業時間、自分たちのクラスだけが悠々と校門をくぐる中、ドッジは意気揚々と歩きながらニールとマリアに話かけました。


「ちょっと、ドッジ。”これから”って、何よ。今日はまっすぐ帰って、お家の人へ事情を話すようにって言われたでしょう? 急いで刷ったプリントも、貰ったわよね」


すかさずマリアが、お説教を始めました。ただ、先ほどの出来事を根にもっての逆襲ではありません。二人の張り合いは、一度勝負がついたり流れたりすれば、その場限りの話で終わるのです。


「別に、いいじゃねぇか。このまますぐ帰って知らせても、少しくらい遊んだ後に知らせても、大して変わらないだろ?」


ドッジにしては、珍しく合理的な意見です。


「そんな事を言っていいのかな、ドッジ」


ニールが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべました。


「いいのかって、何が?」


友人の思いがけない一言に、ガキ大将が不穏な空気を感じ取ります。


「もう、忘れたのかい? 早く帰れる分、宿題が結構出たじゃないか」


ニールが、困った奴だとばかりに苦笑します。


「あ、そうだっけ! すっかり忘れてた」


ドッジの浮き浮きとした心に、ダンベル二つ分くらいの重りが一気にのしかかりました。


「忘れたじゃないでしょ? 帰る時も、教頭先生に念を押されたわよね、お名指しで」


マリアが、追撃します。


「あぁ、嫌なこと思い出せやがって。そういう細かい事を気にしてちゃあ、ヴォルノースっ子 失格だよな」


ドッジが良くわからない理屈をまくしたてながら、マリアに向かってアカンベェをしました。


「ヴォルノースっ子って、一括りにしないでちょうだいよ。あんたと私じゃ、もう別の生きものじゃないかってくらい違うんだから」


マリアが、持っていた体操着を入れる袋で、ガキ大将の背中を叩きます。


「わっ、痛ってえなぁ! 女がそういう暴力を振るうと、一生結婚出来ねぇぞ」


ドッジが、振り向きざまに悪態をつきました。


「なんですって? じゃぁ、男は暴力を振るっても結婚できるって言うの?」


一部の隙もない、しごく真っ当な主張です。でも、マリアの攻勢が本格的に始まろうとした時、


「ほらほら、もうやめなよ。暴力は男も女も、どっちも振るっちゃ駄目」


と、いつもの事とはいえ、ニールが二人の間に割って入りました。


学校前の公園へと差し掛かった三人は、辺りを見回します。何か、いつもとは様子が違うからでした。


「へぇ、この時間、公園には人が全然いないんだ」


ドッジが、意外そうに言います。


夏休みでもない平日のお昼過ぎ、彼らが公園を通る機会なんて滅多にありませんからね。ちょっと、新鮮な感覚です。


「じゃぁ、早く通り抜けようか」


ニールが、ドッジの背中をポンと叩きました。


「そうね。こんな誰もいない公園は、ドッジにとっては目の毒だわ。好き放題に遊べるわけだから」


ニールの言わんとするところを、マリアが代弁します。


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