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冬の童話祭2025

うしがえるのソーセージ

作者: 六福亭

 その妖精は、とほうにくれてわんわん泣いていました。


 ここは沼池。妖精は、初めて飛べるようになった日の朝、つい遠くまで羽を伸ばしすぎて、迷子になってしまったのです。


 その沼に、妖精の知り合いは1匹もいません。水の中の魚は、妖精がのぞき込むとすいっと逃げていってしまいますし、かもの親子は、知らん顔で沼をぐるぐる回っています。


さびしくて、おまけにおなかもすいてきて、妖精はますます大きな声で泣きました。


 すっかり涙もかれたころ、妖精は赤くはれた目で、あたりを見回しました。するとどうでしょう、沼に生えているたくさんの長い草に、おいしそうなこげ茶色のソーセージが何本もささっているではありませんか。


 妖精は、わあっと喜びの声をあげて、ソーセージのところへ飛んでいきました。そして、口をあんぐりと開けて、ソーセージにかぶりつこうとしました。


バン!


 妖精の目の前で、ソーセージが爆発しました。妖精はとてもびっくりして、ひっくり返ってしまいます。

「あはははは……」

 沼のあちこちから、不気味な笑い声が響き渡ります。妖精はとうとう気を失ってしまいました。


 気がついたとき、妖精は草でできた舟に乗って、ぷかぷかと水の上に浮かんでいました。

「起きたかね、お嬢さんや」

 しわがれた声でぬっと水面に出てきたのは、大きなかえるでした。

「ここに来るのは、はじめてとみえる」

 かえるは、妖精が目を丸くしているのを見て、そう言いました。

「じきにお迎えがくるだろうから、それまでここで遊んでいくといい」

 そうかえるに言われて、妖精は目をぱちくりさせました。

 かもの子どもたちが泳いできて、クワクワとあいさつしてくれました。親がもは、妖精を背中にのせて、沼を一周してくれました。かえるたちが合唱を披露して、妖精を楽しませてくれました……。


 夜になって、妖精が眠くなったころ、かえるは沼にあったソーセージの1つをつつき、その中からはじけた綿を使ってふわふわのベッドをこしらえてくれました。


 翌朝、妖精のお父さんが、妖精を探して沼にやってきました。

「おや、こんなところにいたのか」

 ガマの穂にくるまれてすやすや眠っている妖精をそっと抱き上げ、お父さんはお家に帰っていきました。



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― 新着の感想 ―
作品の世界観が好きです! その沼はどういう場所なのか、気になります!
フランクフルトが食べたくなりました╰(*´︶`*)╯♡
2025/01/17 08:49 退会済み
管理
インパクトのある題名で、不気味なお話のなかな?と拝読したら、なんと可愛らしい。 前半のの冷たさと不気味さと後半のあたたかさが良い対比ですね。 でも最後までなんとなく不穏で安心できなかったのも、このお話…
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