同じ人を好きになってしまった双子の恋
「いい? 抜け駆けはなしだからね?」
双子の姉・小夜に言われて、妹の真夜は「わかってるよ」と頷いた。
二人は同じ高校であり、同じ陸上部である。
そして陸上部の仲間・黒岩大樹に恋をしていた。
きっかけは、姉の小夜が練習中に足をひねって転んだ時だ。
大樹はいち早く小夜のもとへと駆けつけ、痛めた足に冷却スプレーをかけ、テーピングで手際よく固定し、そのままお姫様抱っこで保健室へと連れて行ってくれたのだ。
小夜にとってはそれがまるでピンチの時に現れた王子様のようであり、真夜にとっては姉を救けに現れた英雄のように見えた。
「なんてカッコイイんだろう」
二人は同時に同じ相手を好きになってしまったのである。
とはいえ、二人は仲が悪くなるわけでもなく、お互いにライバルと認め合い「告白する時は一緒にしよう」と誓い合った。
そんなある日のこと。
二人で並んで登校している間に割って入るように当の本人・大樹が姿を現した。
「よ! お二人さん」
「うぴゃああああ!!!!!」
「ちょ、大樹くんッ!?!?」
突然の乱入に混乱する小夜と真夜。
いきなり目の前に好きな人が現れてぎゃーぎゃーとわめき散らす。
「急に現れるな、このバカ!」
「間に入るな、このバカ!」
「ショック死させる気か、このバカ!」
奇声をあげる二人の間で大樹は耳をおさえた。
正直、彼にとってここまで驚かれるとは思っていなかったのである。
「あー、うるさい」
「うるさいとは何よ、このバカ!」
「急に現れるからいけないのよ、このバカ!」
「ていうか、間に入るな、このバカ!」
「空気読め、このバカ!」
見事な双子連携プレーにプッと噴き出す大樹。
「いやー、やっぱり双子だな。いいコンビだ」
「「どこに感心してんのよ!」」
「ところでさ、小夜。足は大丈夫か?」
大樹は真夜に向かって尋ねる。
「私、真夜」
「あ、わりい」
慌てて小夜に向き直って同じことを尋ねた。
「足、大丈夫か?」
「う、うん……。ありがとね」
「無茶すんなよなー。この前だって、走り幅跳びで変な着地してたし」
「それ、真夜」
「あ、わりい」
慌てて真夜に向き直って同じことを言う大樹。
「走り幅跳びの助走のタイミングがあまりよくなかったと思うんだよな。真夜は長距離得意だから、足の動きが……」
「それ、小夜」
「あ、わりい」
仲良くじゃれ合っていると、さらにもう一人の男子が声をかけてきた。
「なんだなんだ、大樹。朝っぱらから両手に花とはうらやましいね」
それは大樹の親友・かけるだった。
かけるはニヤニヤしながら小夜と真夜を交互に見ている。
何かを察しているかのような目に、小夜も真夜もギクリと肩を震わせた。
「花というより、うるさい犬っころだけどな」
「ななな、なんですって!?」
殺気を帯びる二人に、かけるは「くくく」と笑いながら大樹に問いかけた。
「それよりも大樹。お前としては小夜と真夜、どっちが好みよ?」
突然のフリに固まる小夜と真夜。
予想もしていなかった問いかけに、大樹も目を丸くする。
「は? なんだよそれ」
「単なる好奇心だよ。見た目も行動も思考パターンも一緒の双子。どっちが好みか聞きたくてな」
とたんにカアッと顔が赤くなる小夜と真夜。
聞いてみたい、けど聞きたくもない。
相反する感情がぶつかり合う。
そんな中、大樹はあっけらかんとした表情で真夜に顔を向けて言った。
「顔は……小夜だな」
「私、真夜」
「ひたむきに走り幅跳びで跳んでる姿が眩しいのは真夜かな」
「それ、小夜」
あれ? という顔をする大樹に、小夜も真夜もかけるも「はあ」とため息をついた。
「……この鈍感男」
二人の恋心が大樹に伝わるのはいつの日か──。
お読みいただきありがとうございました。
実はこちらの作品、夢で見た内容でした(若干脚色してありますが)
夢ってたまに目が覚めた瞬間「これ書いてみたい!」ってなる時ありますよね。
そして文字で起こすと「ちょっと違う……」ってなって。
今回は夢の内容に限りなく近くて満足です(*´▽`*)自己満足の世界~☆
改めて、最後までお付き合いありがとうございました!