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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者の嫁の座を狙っていたら、聖女に物理的に燃やされました。

作者: 中条モンジ

 人間の承認欲求は実に見苦しい。それは、自分でも自覚しているつもりだった。

 金が欲しい。地位も名誉も欲しい。安定した生活が欲しい。人より優位に立ちたい。


 自慢の夫が欲しい。


 その女は目下にいる人間に向けて、魔法で作り出した二つの火の球を落とす。


「私の邪魔をするあなたは、目障りでしかないので、私のためにここで死んでください。」


 その女は低い声でそう呟きながら、ゲスい顔で見下ろし、髪をかきあげる。そして、その人間が燃えゆくさまをしばらく眺めていた。


     *     *     *


 ある王国では勇者が魔王を討伐したことによって、平和がもたらされ、国中が歓喜に沸いていた。人々は勇者パーティー一行(いっこう)を讃えた。

 魔王討伐後、勇者を始めとする功労者には、国から多額の褒賞金が渡される。魔王を討伐した勇者が一番褒賞金の額が高く、その額は一生遊んで暮らせるほどである。

 そして、その平和になった後、引退した勇者を狙って起こる戦争がある。

 それが通称『勇者の嫁の座争奪戦』である。勇者の褒賞金を狙い、地位や名誉、安定した悠々自適な生活を求めて女たちが争い合うのである。


 魔王討伐後数日後のある夜、魔王討伐の功労者や国の要人を集めて、祝勝会が行われていた。きらびやかな衣装に身を包んだ人々が勇者を囲う。

(ずぅーっと、このときを待っていた!)

 勇者パーティーの一員だった女戦士は会場の端で、人々の輪の中心にいる勇者を見ながら、扇で口元を隠し、ニヤリと得意気に笑みを浮かべていた。

 人々は「勇者様、勇者様」で、他の勇者の仲間たちにはほとんど目もくれない。それは、勇者の仲間だった者からしたら、腹立たしい光景でもあったが、女戦士はもはやそんな些細なことは気にならない。

 何のために命の危険を侵して勇者パーティーの一員としてやって来たのか。それは全て勇者の嫁になるためである。そうじゃなければ、こんな割の合わない仕事なんてやらない。

 そのために旅の途中、勇者を落とすための様々な種を蒔いてきた。勇者の一番近くでずっと勇者に好かれるために必死だった。全てはある一つの目的を達成するためだ。


 それは、勇者と結婚し、なに不自由ない悠々自適な生活を送るということ。


 先日、勇者と秘密裏に婚約することに成功した。


 なぜ秘密裏かと言うと、周りに話すと国中の噂になるし、勇者の嫁の座を狙っている女たちは数知れないからだ。

 だから、勇者には口止めした。実際に婚約するのは民衆の勇者熱が冷めてからだ。


「あら、こんばんは。女戦士様。」

 挨拶をしてきたのは白いドレスに身を包んだ聖女だった。ニッコリと薄っぺらい笑みを浮かべる。

「どうもです。」

 女戦士は短く挨拶し、ペコリと頭を軽く下げる。聖女は薄っぺらい笑みを浮かべたままだった。

「私、あなたと違って人気者でして、人を撒いてくるのに苦労しましたわ。」

 聖女は申し訳なさそうな顔で長い金色の髪の毛先をいじる。

「それはご苦労様です。」

 女戦士はいちいち反応してられないので、不自然に作った笑顔で、端的に返答する。

 聖女もまた、勇者パーティーほどではないが、魔王討伐の功労者であった。勇者に加護を与え、瘴気に汚染された地域を浄化して回った。

 聖女は勇者の次に人気がある。誰にでも優しく、献身的な姿からついた二つ名は『白聖女』。

「私、聞いちゃったの、勇者から。あなた、民衆には内緒で婚約したんですって? 私、知らなかったぁ。教えてくれれば、よかったのに。」

 聖女は、女戦士の耳元でそう囁き、綺麗な顔でニッコリと不気味な笑顔を浮かべる。

(あの、勇者、聖女にたぶらかされたのか何だか知らんが、誰にも言うなと言ったのに話したな・・・)

 女戦士は危うく怒りを顔に表しそうになってしまったが、扇で表情を隠した。

「お耳が早いようで。あれほど言うなと口止めしたのに私の婚約者も困っちゃう。」

 女戦士は頬に手を当てて、バカっぽく首をかしげる。

「あなた、内緒の婚約者なんて意外とロマンチストなのね。そんなあなたに私が特別に婚約のお祝いしてあげるわ。」

 聖女はバッグの中から紙切れを一枚取り出すと、女戦士に手渡した。

「いい? 明日、一人で来てね。じゃないと、秘密のパーティーが秘密じゃなくなるから。私と二人であなたの婚約の前祝いしましょう。」

 女戦士は聖女から渡された紙を開くと、略地図が記されていて、目的地にバツ印がついていた。つまり、そこに来いということである。

(あーなるほど。そういうことね・・・)

 女戦士は冷や汗を額に浮かべながら、ふぅっと息をついて、聖女を見る。

「もし私が行かないと言ったら、どうしますか?」

 聖女はふふっと笑ってから、真顔で女戦士の質問に答えた。

「あなたには行かないっていう選択肢があるの? そんなの冗談よね。でも、もし、来なかったら私があなたを迎えにいくだけよ。」 

 聖女は女戦士の肩をポンポンと叩くと、人集りの中へと消えていった。

 

     *     *     *


 女戦士は約束通り、地図に指定された場所まで一人でやってきた。指定された場所は木々に囲まれた、静かで人気のないところだった。こんなところでパーティーなんて絶対嘘であることには当然気づいていた。

 女戦士は目を閉じて、人の気配を感じとる。どうやら招待者である本人のみで、伏兵はいないようだった。

「来てくれたのね。嬉しい! 内心どこかで来てくれないんじゃないかって心配してたの。」

 上の方から声が聞こえた。声のした方を見上げると、木の上に聖女が立っていて、女戦士の方を見て微笑んでいた。

「パーティーやるんだから、そんな戦闘服じゃなくて、ドレスでも来てこればよかったのにー。」

 聖女は半音トーンを上げる。女戦士も丸腰で来るほどバカではない。腰には剣を携えている。

「そういうあなたも戦闘服なのはなぜですか?」

 聖女は白いロープをまとい、片手には杖を手にしていた。

「あはははははっ!」

 聖女は女戦士の反応を見て、いきなり腹を抱えて笑い始めた。女戦士は急に何事かと面食らった。

 聖女は笑いがおさまると急に真顔になり、長い髪をかきあげる。

「なぜって、そんなの決まっているじゃない!」

 聖女低い声を荒げる。髪をかきあげたことによって、聖女のゲス顔がよく見える。

「お前を殺すためだよ」

 聖女はお前の首を斬るぞと言わんばかりに自分の首を指し、スッと横に移動させる。

(こいつ本気じゃん。)

 女戦士はゾッとして、顔がひきつる。聖女は女戦士を見て得意気ににやついてから、杖を高く掲げた。

呪縛(ルインスペル)

 闇のオーラをまとった頑丈な鎖が女戦士の体を縛りつける。身動きが取れない。

「私聖女だから、光属性の魔法しか使えないイメージあるかもしれないけど、実は闇属性の呪いの魔法とかめっちゃ得意なの!」

 この鎖は生気を奪い取るのか、女戦士は徐々に力が抜けて立てなくなり、地面に倒れる。呼吸が乱れる。そして、死にもの狂いで上にいる、聖女を睨みながらで見上げる。聖女はその様子を見て、うっとりしていた。

「いいね、いいねぇー。その顔。私はずーっとお前のその苦しむ顔が見たかったの!」

 聖女は女戦士を見下ろして、嬉しそうに悪魔のような微笑みを浮かべる。

「だって、お前、邪魔なんだよ。

 せっかく私がなーんにもしてないのに、勇者の嫁の座狙ってた姫を脅して、嫁の座から引きずり下ろしたのに、お前が勝手に婚約しているとか。もう、殺す以外の選択肢はないよね。」

「このっ・・・! クソ聖女ーーー!!!」

 女戦士は力を振り絞り、怒りのままに腹の底から叫ぶ。聖女は魔法で大きな火の球を一つ作る。そして、その火の球を女戦士めがけて、投げた。

「私は、誰よりも勇者を愛しているの。

 だから、私のために死んでね。バイバイ、お邪魔な戦士さん。」

 火の球は女戦士の体に触れ、発火する。そして、女戦士の身も精神も全てを燃え尽くしていく。女戦士は叫び、炎の中でもがき苦しむ。

「ひゃははははは!!! いいね、いいねぇー。もがき苦しむ様、よく似合っている! あははははっ!!」

 聖女は大声で腹を抱えて勝ち誇ったように大笑いする。そして、両手を広げ、空を仰いで、風を感じる。

 聖女は全てが心地よかった。勇者の嫁という立場を手にいれるために、一番邪魔な存在を消せたことが嬉しくてしかたがなかった。

 聖女は優越感に浸りながら、女戦士が燃えゆく様を見て、今までに感じたことのないくらいの至福時間だと感じられた。

「もう終わりかー、つまんな。まあ、いいや、証拠隠蔽しますか!」

 興ざめした聖女は真っ黒に燃え尽きた、女戦士を確認してから、木の上から風をきり、軽やかに飛び降りる。

 そして、魔法で、地面に穴を掘ると、女戦士の遺体を蹴飛ばし、穴の中に放り込み、再び何もなかったかのように土を被せる。

 聖女は殺人現場をきれいに片づけ、全ての証拠を隠蔽した。そして、遺体を埋めた場所の前で、しゃがんだ。

「私に殺されて悔しい? でも、安心して。私が代わりに勇者のお嫁さんになってあげるから。」

 聖女は満面の笑みを浮かべてそう言いながら、土をなでる。そして、立ち上がり、何事もなかったかのように、現場から背を向け、立ち去る。

「正直、ここまでうまくいくとは思わなかったわ。マジでチョロすぎだろ! あははっ!」

 聖女はひとりごとを言い、クスクスと嘲笑う。全てが思い通りに事が運んで、気分は絶頂に達していた。神は自分に味方しているかとすら思ったほどに。

 だから、聖女はこれで全て終わりだと思っていた。だから、この先の展開なんて予想だにしなかったのだ。


「チョロすぎって何が? 『白聖女』さん。いや、中身真っ黒の『黒聖女』さん?」


 後ろから近づいて来る存在に聖女は全く気づいていなかった。突然後ろから聞こえた声に驚き、足を止める。嫌な冷や汗が額を流れる。ただならぬ負の予感を感じざるをえなかった。

 聖女が自分の首もとを見ると、そこには(やいば)があった。

 ゆっくり後方へ視線を向けると、そこには死んだはずの女戦士がいた。女戦士は物音一つ立てず、気配も消した上で、聖女の背後に立っていたのだ。

「え・・・?」

 聖女は背筋が硬直した。冷や汗と震えが止まらなかった。今がどういう状況なのか思考が全く追いついていなかった。

「あんたのシナリオ通りに一回死んでみたけど、さすがに痛かったなぁ。生きてるのに燃やすとかまさに『黒聖女』。世の中の人も見る目ないなぁー。」

 女戦士は聖女の顔を真顔で覗きこんだ。そのいつもとは違う、殺気立ったポーカーフェイスの恐ろしさに聖女はビクリと肩を揺らす。

「あっ! 何で生きてるのかって顔してるねぇ。」

 緊迫した表情を浮かべる聖女の一方、女戦士は聖女の反応を見て楽しんでいた。

「私、旅の途中で不死鳥と契約して、『不死鳥の守護』っていう、物理的に殺されて死んでも、生き返るっていう加護を手にいれたの! だから、物理的な攻撃じゃ死なないよ。」

「わっ・・・私、あんたのこと調べ尽くしたけど、そんなの、知らないんだけど!!」

 聖女は何とか言葉を紡ぎだし、激昂する。涼しい顔して、女戦士は頷く。

「うんうん、知らないよね。仕方ないよ。だって、これ、誰も知らないことだもん! 勇者も仲間たちもみーんな知らない。」

 女戦士は目を大きく見開く。聖女は女戦士の眼力の強さに一瞬怯みそうになる。

「だから、『黒聖女』さん、あなたは私の秘密を知った唯一の人だ。」

 女戦士はニヤリとしながら、聖女の耳元でそう言った。聖女は横目で女戦士をきつく睨みつける。

「調子に乗りやがって! お前をぶっ殺す!!」

「物騒なこと言うねー。『黒聖女』さん。

怖い怖い。」

 聖女は怒声を上げると、握っていた杖で地面を力強く二回突く。

「呪術式魔法陣展開」

 聖女が地面を突くと、杖を中心に広範囲に渡って、紫色の魔法陣が展開される。それと同時に、女戦士はその魔法陣を避けるために、木の上へと飛び上がった。

籠の中の鳥(キャプティブアヴィス)

 聖女がそう詠唱すると、魔法陣から、複数の黒い触手が現れ、女戦士を捕まえようと、襲いかかる。

「この『籠の中の鳥(キャプティブアヴィス)』から決して逃げることはできない。さあ、これでお前も終わりだ! 死ねぇぇーーー!!!」

 聖女は今度こそ勝利を確信して、叫んだ。女戦士はゲスすぎる聖女には一切動じていなかった。ただ、薄く不敵な笑みを浮かべ、その場から一瞬消える。黒い触手も女戦士を追って、移動する。

「私親切にさっき、物理的な攻撃じゃ死なないって言ったのになぁ。(元暗殺者)()ろうなんて、お馬鹿な『黒聖女』さん。」

 女戦士は瞬時に聖女の背後に回り込み、上から飛び下りる。女戦士が背後に回り込まれたことを気づいた聖女は振り返り、迎撃体勢に入る前に、剣で上半身を斜めに深く斬りつけられた。

 真っ赤な鮮血が辺りに飛び散り、斬られたところから、血が止まることを知らずに、次から次へと流れ出る。白いロープはじわじわと血の色に染まっていく。聖女は荒い息をしながら、その場で倒れた。

 すると、聖女が放った『籠の中の鳥(キャプティブアヴィス)』で出現していた、黒い触手が消えた。

「普通に術式展開している本体倒せば、勝ちでしょ? 普通に考えたらわかるよ。

 だから、殺るならさぁ、殺られる覚悟がないとダメだよ? あ、これ、暗殺者の鉄則ね。」

 女戦士は死にかけの聖女を煽ると、聖女の血がついた剣を斜めに振った。剣についていた血が辺りに飛び散る。

 女戦士は聖女の持っていた杖を遠くに投げ捨て、女戦士は聖女の額の上に足を乗せてから顔を覗きこんだ。

「今ここに、回復薬(エリクシール)があります。これをあなたに使えば、命は助かります。さぁ、どうする『黒聖女』?」

 女戦士は低い声で聖女を問いただす。そして、聖女の顔の前で、回復薬(エリクシール)の入った瓶を揺らす。聖女は虚ろな目で回復薬(エリクシール)を見ていた。

「・・・さい・・・。」

 聖女は小声で呟くように言葉を発する。その声は今にも消え入りそうで、よく耳を澄ませなければ聞こえない。

「なーにー? 全然、聞こえなーい!」

 女戦士はさらに強く聖女の額を踏みつけると、耳を立て、煽る。

「・・・ごめんなさい。」

「聞こえなーい!! もっと大きい声で言ってくんない?」

「ごめんな・・・さい。・・・ゆるしてください。」

 死にかけの聖女は唇を噛みしめ、力の限り大きな声を出した。屈辱的なことをさせられていることは聖女もわかっていた。だが、聖女にはこの先生き残るためには、謝る以外の選択肢はなかったのだ。

 女戦士は真顔で聖女の顔を上から覗きこむ。

「はぁ? どの面下げて言ってんの? 自分が殺そうとした人間に慈悲を乞うとか惨めだと思わないわけ?

 あんたのお高いプライドはどうした?」

 女戦士はふっと笑うと、聖女の目の前で、回復薬(エリクシール)を飲み干す。そして、回復薬の入っていた瓶を投げ捨てる。

「許すわけないだろ?」

 女戦士は聖女との顔の距離をさらに近づけて、強い眼力と太い声で聖女を威圧する。

 聖女は歯をギシギシさせ、睨みつける。

「お前・・・(聖女)が死んだらどうなるのか・・・わかっ・・・てんのか・・・!」

 聖女は言葉を放つと血を吐いた。

「確かに聖女は国民のアイドル的存在だったからなぁ。

 でも、国を浄化した『白聖女』がこんな中身真っ黒な『黒聖女』だったら、みんなきっと幻滅するよね。

 だったら、国民がまだあなたのことを『白聖女』だと思っているうちに私が責任持って殺してあげるから。」

 女戦士は唾をごくりと呑み、舌を出し、剣をぺろりと舐める。そして、剣を聖女の腹に突き刺す。聖女は、唸り再び血を吐き、最期の言葉を発する。

「・・・死んだとしてもお前を・・・必ず呪い殺す・・・」

 聖女は喘ぎ、女戦士を指さした。女戦士は「おー、こわいこわい」とヘラヘラと薄ら笑いしながら、セリフを棒読みする。そして、聖女の腹に刺した剣を取り除き、魔法で炎の球を二つ作り、聖女の体の上に落とす。


「私の邪魔をするあなたは、目障りでしかないので、私のためにここで死んでください。」


 女戦士は低い声でそう呟きながら、ゲスい顔で見下ろし、髪をかきあげた。そして、聖女が燃えゆく様を見ていた。

 燃やされた聖女は最初こそ悲痛な叫びを上げ、炎の中でもがいていたが、そのうちその場は嵐が通りすぎたかのように静かになった。

 ただ、パチパチと火が聖女を燃やす音だけが聞こえる。

「あーあ。折角勇者の仲間やるために、暗殺者から足洗ったのに、久しぶりに人殺しちゃったよ。」

 女戦士は聖女の燃えゆくさまを芸術品を見るかのような好奇な視線を向け、笑みを浮かべる。悪いことをしたなんて、一ミリも思っていない。

「仕方ないよね。だって、向こうが先に殺ってきたわけだし、邪魔だったんだもん!

 でも、久しぶりのこの感覚やっぱりいい~!! 癖になる! 人を殺したときのこの快感!!」

 感情が高ぶり女戦士は両手を大きく広げ、くるくると回り、大声で笑い始める。炎が女戦士の顔を明るく照らした。天にも昇る心地だった。

「アハハハハ!!! ザマァみろ! クソ聖女! アハハハハ!!!」

 その笑い声は辺りの森一帯に響き渡る。鳥は女戦士の笑い声に驚いたのか、羽音を立て、一斉に飛び立った。


 女戦士は燃え尽きた聖女をさっき聖女が開けた穴の中に放り込んだ。そして、土をかぶせ、辺り一帯をきれいに掃除し、殺人の証拠を隠蔽する。

 女戦士は元暗殺者なので、この手の死体処理と現場の後片づけには慣れているので、時間がかかることなく終了した。

「残念だったね、『黒聖女』さん。私の勝ちだよ。

 でも、安心してね。私があなたの代わりに勇者と結婚して、幸せになってあげるから。」

 女戦士は聖女を埋めたところに向かって、今までで一番の笑顔で、自慢気に言う。

 それから、女戦士は立ち上がり、何事もなかったかのような平然な顔でそそくさと現場から立ち去っていた。


(鈍感な勇者は私が元暗殺者で、聖女を殺したことなんてきっと勘づきもせずに、私と一生を共にするんだろうなぁ。)

 女戦士は晴れ渡った空を見上げる。傾き始めた陽の光が眩しくて目にしみる。そして、勇者のことを脳内に思い浮かべる。


「大丈夫、安心して。私はあなたのこと(勇者の金と名誉)を世界で一番愛しているから。」


 その後、聖女は失踪したとされ、死体が世間の目に触れることは二度となかった。


女戦士にとってはハッピーエンド??


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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