子守り詩
歩き始めてごらん、君の思うままに
歩き続けてごらん、命あるかぎり
僕たちは、穏やかな時代に生まれ
同じような夢を与えられて過ごした
宝物はすでに掘り尽くされ
見つけだすのは、誰かが捨てたガラクタばかり
現実があまりに夢のようで
だから僕らの夢は、いつも道端に転がっていた
拾い上げるのが恥ずかしいから
足蹴にして、捨て台詞をはいた
「夢なんかいらない、いまが楽しければいいんだ」
歩き始めてごらん、君の思うままに
歩き続けてごらん、命あるかぎり
こどもの振りができるほど大人ではなくて
だから、僕らは大人の振りをした
「カイシャ」の代わりに仲間を集め
「サカリバ」で酔っ払う代わりにクスリを買った
化粧は少女を子どもっぽくみせたけれど
だまされたオヤジを殴る僕の背中は、とても卑怯だから
その唇が唾を吐いた
「あんたも、同じだよ」
歩き始めてごらん、君の思うままに
歩き続けてごらん、命あるかぎり
用意されたのは窮屈な指定席で
立ち上がろうとしただけで怒鳴られた
「いやなら、飛び降りてしまえ」
「捨てられないのなら、お前が飛び降りろ」
だから、大人になることは
持ってゆけない夢を、ひとつずつ捨ててゆくことだった
「僕らも歪んでいるけど、シャカイのほうが・・・」
そう叫んでも、誰も振り向かなかった
あたりまえ過ぎて、笑ってもくれなかった
歩き始めてごらん、君の思うままに
歩き続けてごらん、命あるかぎり
得たものと失くしたものを比べることが
幸せのバロメーターになったとき
妥協が卑怯ではなくなって
安っぽい夢を拾えるようになったとき
空をみることを忘れ、下を向いて歩くようになったとき
僕らは、きっと大人になったのだろう
「わかっている、本当は、もう、どうでもいいんだ」
そう思いながら、呟いている
いや、どうでもいいから、呟くことができる
それが悲しくて、また呟き続ける
歩き始めてごらん、君の思うままに
歩き続けてごらん、命あるかぎり