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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢とヒロインの間違い探し

悪役令嬢とヒロインの間違い探し【王子版】

作者: Papillon

この作品は、【悪役令嬢とヒロインの間違い探し】の番外編のようなものです。

実際に、【悪役令嬢とヒロインの間違い探し】から読んでいただけると、より理解が深まるかと思います。


俺は幼い頃からローズ・リリアンのことを追いかけていた。


『こんにちは。ローズ・リリアンともうします。』


まだ幼いながらに俺に挨拶する姿はとても可愛らしく、記憶に強く残った。


俺は第二王子。だから、兄であるライヤとはいつも比較対象だった。比較対象というのはとても荷が重く、いつも自分を偽り、完璧を装わなければならない。

そんな日々が辛くて、苦しくてしょうがなかった。


しかし、俺は、ある日開かれた茶会で一人の女の子に出会う。

俺に娘を婚約者にどうかと勧めてくる人達から逃げている最中だった。


『あなたは、第二王子さまのハヴィーさまですね。こんにちは。ローズ・リリアンともうします。』


小さな子に話しかけられる。

しまった、見つかった!

俺は、誤魔化そうと嘘を考えている時に、彼女が俺の手を引いた。


『むこうに、バラというきれいな花がたくさんさいていました!でんかも、みにいきましょう!』


その目はキラキラと輝いていて、綺麗な赤茶色の髪がふわふわと揺れていた。


『そのバラは、そんなにも綺麗なの?』


つい、質問をしてしまう。


『もちろんです!にげるのには、ちょうどいい場所なんですよ?』


逃げていたことを、自分と同じ、六歳の女の子に見破られてしまった。そんなことを思って苦笑いしながら、彼女の手を取る。


『じゃあ、俺も連れていって。』


『はい!』


そのバラは結局バラで、城内に咲いているバラの方が美しい。けれど、彼女がそのバラを背景に、俺と話し、俺のことを知ろうとしてくれる姿は、どんなものよりも美しかった。


自分自身を見てくれる、そんな人、ローズを自分の婚約者に選ぶのは当然ともいえる。


───12年後


俺は、学園に転入してきたシュシュ嬢という令嬢に会った。彼女は熱心に私に話しかけようとしてくる。

彼女の容姿は可愛らしい方だと思うからモテるだろう。けれど、俺の目には入ってこない。俺には、ローズ・リリアンという美しく、聡明な婚約者がいるのだから。


彼女は当然、色んな男の目に留まる。

あわよくば、と、要らぬ欲を掻き立てる奴もいるだろう。俺は、ローズを誰の目にも触れさせたくない。俺だけを見てほしい。


そんな欲は叶わないけれど。


そして、俺はシュシュ嬢という、面白い玩具(おもちゃ)を見つけた。どうやら、彼女は俺に好意を持っているらしい。

けれど、俺のことをなど見ていないだろう。


だって、


「こんにちは。えっと、ライヤ・カッセン殿下ですね!あの、私、道に迷ってしまって。私を案内してもらえますか?あ、無理でしたら良いので…」


この人、俺の名前を間違えた!

馬鹿にする笑いをこらえながら、俺は優しい万人受けする笑みを浮かべると、彼女はますます頬を紅潮させて俺を見た。


そして、よく俺のところに来るようになった。


「ローズ様が、私を池に落として…」


ローズが池にシュシュ嬢を落とす?


俺は、絶対にあり得ないという確信があった。もちろん、ローズがシュシュ嬢を落としたとしても、ローズが嫉妬してくれているんだと分かり、それはそれでうれしいんだけど。


その後も、ローズが、ローズが、と、あらぬ噂を立てるシュシュ嬢に飽き飽きしていた頃だった。


俺は、月に一度のリリアン家の訪問で、ローズがとんでもない誤解をしているということを。そしてローズは、婚約を解消する気でいると。


「ハヴィー殿下の心がシュシュ様に動いていることも知っています。あ、もちろん、誰にも言っていないので気にせず…。」


「っ!ちょっと、待って。それ、いつ誰に聞いたの?」


「言う必要はありませんので。」


いやいや、気にせずって、俺のローズへの好意は全く伝わって居ないってことだよね?


「いや、俺が知りたいというか…。」


俺の話など気にもせず話は進む。


「殿下。婚約解消をなさいますか?あ、それとも彼女を正妻にし、私を側妃に迎え、私が政治を行いますか?」


「!?!?」


もはや、言葉が出ない。

いや、色々と刺さることが多過ぎて、言葉が何も口から出ないという、不思議な状態に陥る。


そのまま、一応彼女の誤解を解くと、今度は彼女が泣き出した。

今度は、何を思ってるんだ!?


俺は、神経を集中させながら、彼女の正面に座っていたところから、彼女の隣へと移動して彼女の涙を拭う。可愛いなぁ。こんなにも目を潤ませて。


そして、次の瞬間、俺の頬には柔らかいものが触れた。それは、彼女の唇だと理解するのに頭は暫く時間を要した。


そして、それを理解した瞬間、俺は彼女を抱き締め、彼女の頬と唇にキスをし、最終的に押し倒すというとても危険な綱渡りを始めていた。


「ハ、ハヴィー殿下?」


その声でふと、我に返る。

あぁ、ローズが俺だけのものになれば、俺はなんだってやれる気がしてきた。


それができる方法……結婚か。


俺は、結婚について考えながら彼女の家を出た。

まずは、リリアン家から、結婚の許可をもらおう。部屋も用意しておこう。すぐに一緒に住めるように…後は。


俺の様子を見た国王と王妃は、「怖いものを見た」と言ったり、「ローズちゃん、頑張ってね…」と哀れむようなことを言ったりしていたが、気にしない。

ローズが手に入るのならば、俺はなんだってする。ローズのために俺が国王になってもいい。隣国を征服したっていい。それをいうなら、すべての国を敵に回す大悪党になったっていい。


そんなことを、思いながら卒業パーティーの日に至るまで準備を続けた。


───卒業パーティー当日


俺は、まず、3日後のローズとの結婚式計画を発表した。

ローズは親からも聞いてなかった見たいで、目を丸くさせたまま固まっていた。


そこで、反論しに出てきたシュシュ嬢の間違いと今までやってきた罪を明かし、シュシュ嬢を退場させた。


全ては、俺の思い通り。


その日俺は、ローズから初めて名前を呼ばれた。そのときの幸福感は生きてきた今までの中で一番高まっていた。


ローズ。俺は、ローズをもう一生離してあげられない。俺は、いつからか、狂ってしまったみたいだ。


ローズに狂っている自分すらも嬉しく思えてしまうほど、ローズを愛してしまったんだ。

俺を見てくれる、一人の少女。

今までも、これからも一生一緒に過ごしていくパートナー。


俺は幸せだよ、ローズ。

ローズがいてくれて、俺は初めて苦しみから解放された気がするんだ。

この幸せを、ローズに与えられるように、これからも俺は努力する。今回の件で思ったのは、ローズと今まで以上にしっかりと向き合いたいということ。


だから、俺の手を離さないでね。



俺は後に、妻の勘違いに一瞬で気付く愛妻家として有名になり、妻の信者とも言われるほど彼女への愛が溢れ出すことになる。

もし、話の流れが分かりにくいようでしたら、【悪役令嬢とヒロインの間違い探し】のほうを読んで見てください。



読んで下さり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そのような経緯で光速のご懐妊ですか。 うん、ピンクの攻撃が予想外に間抜けであった事は置いといても、ある意味恐ろしい男であることは間違いないね。 まぁ、そういう男の方が、ピンクに踊らされて…
[一言] 勘違いしようが無いぐらいローズ好きですね(笑)
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