表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

29話目「2年経過」

 その後、私は、暇さえあれば、色んな御嶽(オン)を巡った。



 御嶽(オン)に祀られる神様と言っても、みんながみんなイリキヤアマリ程力ががあるわけでもなく、また、イリキヤアマリ程、人格的自意識を持っているワケじゃなかった。


 というか、イリキヤアマリが珍しい方なのだ。


 ほとんどが、せいぜいペットの犬猫並みの自意識しか無いようで、訪れるだけで嬉しそうに尻尾をふって吼えたてる感じだ。


 まぁ、最初に訪れたウシャギ御嶽(オン)は、それなりの人格的自意識を持った女神様ではあったが。


 そういう人格的自意識がある神様は、しっかり囚えさせて頂いた。


 そうでない神様は、大して力が揚がる訳でも無いので、一般的な対応となった。


 あ、あと、明らかに男の神様というのもパスした。


 たとえ、精神的なものであれ、男を囚えて取り込むというのは、納得がいかないからだ。



 そんなワケで、6歳になった頃には、私の祈女(ユータ)としての能力はかなり高くなっていた。


 まぁ、そもそも私は神女(カンヌ)なんだけれどね。


 だが、いろんな神様の力を得たので、神女(カンヌ)としても、レベルで言えば、2ぐらいになったと思う。



 え?


 あまり上がってないようだって?



 ふむ。



 まぁ、仮に祈女(ユータ)だとしたら、レベル200だと言えば分かってもらえるだろうか?



 その上、普通の祈女(ユータ)は最大レベル10ぐらいまでしか成長しないと言えば、理解して頂けるだろうか?


 神女(カンヌ)というだけで、祈女(ユータ)と比較すれば、あり得ないレベルなのだ。



 なお、神女(カンヌ)レベル2のうち、半分は、イリキヤアマリの能力だといえば、イリキヤアマリ自身が単独で結構高レベルである事も分かって頂けるかと思う。


 私は他にも何人か神様を囚らえているが、それら全部と、御嶽(オン)巡りの結果が、レベル2のうちの残り半分を占める割合となる。



 ちなみに祈女(ユータ)で言えばレベル200視点の私から見ると、マィンツのレベルは40ぐらいだ。


 まぁ、マィンツは祝女(ヌル)だけれど。



 何度も言っているが、祈女(ユータ)祝女(ヌル)もやっている事に違いはない。


 活動する場が、民間か官業かぐらいの違いだ。


 だから、祝女(ヌル)のレベルも祈女(ユータ)のレベルも大差はない。


 むしろ、才能より、(ブリャ)(ウフヌ)の身内だからという意味で選ばれる祝女(ヌル)は、祈女(ユータ)よりレベルが劣る場合が多い。


 その中でレベル40というマィンツは、他の追随を許さない優秀さだ。


 もっとも、このレベル40というのは、私の主観計測なんだけれどね。



 祭祀を司る件に関しても、マィンツの指示に従い、ナータ家主催の祭祀を手伝った事ですっかりマスターした。


 (ブリャ)(ウフヌ)主催の祭祀というのは、単に神様に祈祷を捧げるというより、集まった村人をどう気持ち良くさせるかという点において祈女(ユータ)の祭祀とは異なる。


 それさえ理解すれば神女(カンヌ)である私には難しい事ではなかった。


 私の場合、例の花火や光のシャワーという派手な演出が使えるだけ、村人らのツカミは充分なのだ。


 その上、私は祝女(ヌル)でもないから、祈祷の言葉も覚える必要はなかった。


 神女(カンヌ)は、思うように語る言葉がそのまま祈祷の言葉以上の意味になるからだ。



 なので、マィンツがハーティ主催の祭祀に駆り出される事はなくなった。


 ハーティ主催の祭祀は、私が(つかさど)る様になったからだ。


 マィンツを借りていた時は、ナータ家にレンタル料(金ではなく物品)を払っていたハーティとしては、かなりウホウホな状況になったと言える。


 もっと言えば、私は祝女(ヌル)ではなく、伝説でしか語られない神女(カンヌ)なのだから、鼻も高々だ。


 それまでマィンツを借りる度にホゾを噛んでいた分、鬱憤を晴らした気持ちだっただろう。


 とは言え、マィンツには相当お世話になっていたから、表立っては素っ気ない態度で通している。



 所で、ハーティ主催の祭祀といえば、例の、イリキヤアマリ御嶽(オン)の祭祀があるのだが、あの、舞ながら、裸になって踊り狂うというのも、年に2度もやるので、さすがに恥ずかしげもなく出来るようになった。


 人間なんでも慣れれば出来る!


 まぁ、祭祀に参加するのは、女だけという事もあるのだけれど。


 ちなみに、村人らに多幸感を与えるという意味では、イリキヤアマの祭祀が最も強烈で効率的だと知った。


 そして、やった事はないけれど、私は神女(カンヌ)なので、実はいつでもどこでもイリキヤアマリの祭祀が行えた。



 という事で、私は6歳の頃は、ほとんど独り立ちした神女(カンヌ)だった。


 私専属の祝子(ヌルン)も3人に増えていた。


 12歳になったシャナと、今11歳のセト。それから10歳のウシュムだ。



 シャナは通いではなく、私の寝所で一緒に寝泊まりするようになり、二人目を出産したチュチュ(ネーネ)のサポート役ともなっていた。


 セトとウシュムは今のところ通いだ。


 私の今の寝所では、そんなに寝泊まり出来ないからだ。


 なので、新しい寝所を作るかどうかについて、検討されるようになっていた。


 実はこれに関連して、そもそも屋敷群自体を引っ越しするかどうかも含めて、ハーティは迷っているようで、答えはすぐ出そうにない。



 ちなみに、セトは私が5歳の時、例のイリキヤアマリの祭りの準備に、村の女子たちが集まっている中から、シャナと二人で選んだ娘だが、ウシュムは、ハーティの主子(ウフヌン)であるアバの娘だった。


 政治的都合が優先された事例だ。



 チュチュ(ネーネ)の子供も上は2歳になり、すっかり動き回るようになった。


 名前はチュミだ。


 女の子なので、将来的には私の祝子(ヌルン)になるのは決定していた。


 これも政治的都合というヤツだ。


 まぁ、そもそも祝女(ヌル)という存在そのものが政治的都合の産物なのだから、当たり前である。



 最近生まれたばかりの子は男の子でウミュルだ。


 こちらはハーティの主子(ウフヌン)になるのだろう。



 こうやってみると、ハーティの家、つまりアーク家に住んだり通う人口は増えていた。


 人口増は、私にとっては大事な問題なので喜ばしい事だった。


 アーク家だけでなく、村全体の人口増も大事なのだが。



 私は、神女(カンヌ)として、能力アップに成功したとはいえ、まだ6歳なので、この頃は出来ない事が沢山あった。


 神女(カンヌ)としては、祈女(ユータ)よろしく、村の病気治癒祈祷に出かければ、大概の病気は治癒に至った。


 なんせ神女(カンヌ)レベル2なのだから、当然である。


 しかし、病気は癒せても食料問題を解決するには至らない。


 どこかの神の息子よろしく、パンや魚を増やすなんて能力まではさすがに無かったからだ。



 とはいえ、今はまだウォファム村の食料自給率は200%以上をキープしていた。


 でなければ、祭祀の時に村人が捧げる物はほとんど無くなる。



 私が問題視しているのは、今の話しではなく、将来的な事だ。


 現在の食料生産量では、食料自給率はどんどん下がる。


 それはつまる所、祭祀の供物が減る事であり、アーク家の収入が減る事を意味していた。



 もちろん、人口が増えれば、新しい耕作地が開墾されるワケだが、それがそうそう順調に進むとも限らない。


 そもそも新しい耕作地を開墾するという手法だけでなく、収穫量を高めるという方向性だってある。


 そのあたり、新しい知恵、技術の発展が必要だが、そういう発想や考え方を今の村人らに理解させるのが難しかった。


 何故なら、具体的なサンプルが無いからだ。



 たとえば、私は、前の世界での知識から、米の収穫量は、江戸時代から現代にかけて10倍以上も上がった事は知っていても、それがどうやってなのか?までは知らない。


 もちろん近代になってからの機械化の影響もあるだろうが、それ以外の長い知恵の積み重ねもあるだろう。


 簡単な事例で、脱穀だってもっと効率的に出来るはずだ。


 今は一本一本手で引き剥がしている。



 だが、農業従事者でないのだから、それらの知識は皆無だ。


 実際に作業をする、村人ら自身が、創意工夫してもらうしかない。



 塩の時みたいに、実際に作って見せらたら話しは一気に進むのだろうけれど。



 塩といえば、塩は炉、つまり鍛冶場で副産物的に生産されるようになっていた。


 ハーティが手配したのだけれど、毎日、小壺半分ぐらいの塩が作られている。


 少ないが毎日の作業となれば、村の需要を賄う事はギリギリ出来た。



 しかし、マィンツが持ってきた味噌の自家製造にはまだ至っていない。



 大豆は生産しているのだが、レシピを知らないのだ。


 この点に関しては、ナータ家の方が進歩的で、どうやら味噌製造に到れたらしい。


 そこには、マィンツが何度も口にしていたソゥラヴィという人物が関わっているようだ。



 …ソゥラヴィこと、ナーク・ソゥラヴィ。


 ビヤク島の豊海親(トゥユミヤ)だという。


 豊海親(トゥユミヤ)というのは、エーシャギーク島でいう所の本主(ディウフヌ)に当たる。


 つまり、ビヤク島では最も権力者という事になる。


 ちなみに、エーシャギーク島では、今のところ、本主(ディウフヌ)は不在だ。


 ハーティと、マィンツの兄である、ナータ・フーズが、その称号を争っている所である。



 あ、ハーティもマィンツの義兄だった。



 ハーティは結構頑張っているようだけれど、フーズは既にエーシャギーク島の南西部にあるトゥノスル村、ウォクア村、エーシャギーク村、ウラクア村の四つの村を完全に支配下に置いている。


 私がナータ家主催で手伝ったのは、この四つの村の祭祀だ。



 その上で、フーズにはビヤク島のソゥラヴィが後ろ盾についている。


 おそらく、味噌の自家製造成功もソゥラヴィの援助があったに違いない。



 こちらが塩なら向こうは味噌だという事らしい。


 仲々ライバル意識が激しい所だ。



 こっちだって、レシピさえ手に入れば、味噌ぐらい作れるっていうの。


 なんなら醤油だって作ってやるさ。


 まだ全然わからないけれど。



 私としては、ハーティが偉くなってくれないと困る。


 ハーティの権力が高まれば、その娘である私の権力も自然に高まるからだ。



 もっとも、ある程度高まったら、私はハーティより実力を示して、ハーティよりはるかに高い権力者にならなければならない。


 でなければ、かなりの高確率でハーティの嫁にされそうだ。



 それは全く、私の本意ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ