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20話目「小刀」

 その後、マィンツの稽古を何回か見せられてから、私も見よう見まねで舞わさせられた。


 もちろん最初は全然わからない。


 でも、マィンツの指導のおかげで、だんだんと舞えるようになった。


 もちろんマィンツのように跳べれる訳では無いし、歌に至っては鼻歌レベルなのだが…。



「歌は今晩一晩かけてじっくり教えますね。」



 と、マィンツがニコやかに宣言する。


 幼女に対して、叔母様、結構鬼じゃね?




 あと、私が持っていた鐘の担当を決めるため、何人かの女の子たちが曲に合わせて鐘を打たされた。


 その結果シャナという女の子が選ばれる。


 ここで選ばれた娘は祝子(ヌルン)候補となるらしい。


 あとは親の承認次第だとか。


 まあ、祝子(ヌルン)ともなれば、末端とは言え、立場的には(ウフヌ)に連なるわけで、拒否する親はまずいない…だろう。


 それにしても、曲に合わせて鐘を打つタイミングが良いかどうかだけで、祝子(ヌルン)になれるとは、何とも微妙。


 本人の信心さはどうでもいいのだろうか?


 う〜ん。


 祭祀の一環としての楽曲なワケだから、音感が重要って言えば、重要なのだろうが。




 家に戻ると、さっそくハーティに木綴(キトジ)をせがんで見た。



「そんなもん、何に使うんだ?」



 と、ハーティ。


 神様のお告げを書き留めたいのだと言うような事を適当に述べたら、珍妙な顔をしつつ、一つ持ってきてくれた。


 だが、



「これ、もう何か書かれているよ。」



 開いてみれば、文字がびっしり。



「書かれている部分を削って使うのですよ。」



 と、ウィーギィ爺が教えてくれた。


 そのための小刀も、筆や墨と一緒に渡されていた。


 何でナイフ?と思ったのだけれど、そういう理由か。


 さすがに新品はくれないらしい。



「新品の木綴(キトジ)は、もう作られてないのでしょうなぁ」



 と、ウィーギィ(ジージ)



「え?どう言う事?」


「今は紙がありますから。ウーチュでもティオクでもイェームトでも木綴(キトジ)は使いません。」


「紙?紙があるの?」


「おや?クィンツ様は紙をご存知で?」



 はい、ご存知です…とは、言いずらい。



「う、うん。…その。」


「神様に伺ったのですな。」



 口ごもっていると、勝手に察してくれた。



「そう、そう。」



 とりあえず、何でも神様のせいにしてしまえ。



 それにしても…そうか。紙があるのか。


 でも、紙があるから新しい木綴(キトジ)を作らないっていうのは、紙がある地域の話しだろう?


 この村で紙なんか見た事ない。


 つまり、紙なんて無いんだから、新しい木綴(キトジ)を作らなくなる必要はないんじゃないか?


 それとも、木綴(キトジ)すら、作る技能がなっていう事だろうか?


 昔々手に入れた木綴(キトジ)を、削っては使い、削っては使いと、使い回ししているだけなのだろうか?


 だとしたら、この技術力の差は、どうやって詰めたらいいんだろう?


 なんだか目眩(めまい)がしちゃう話しだ。


 いや、木簡なんて、木を削ればいいだけの話しなんだから、技術というより、必要性を感じてないという事かもしれない。


 そのあたりから改善していけば…。


 最低でも、私が必要性を感じているのだから。



「クィンツ様、こちらが出来ておりますぞ」



 と、ウィーギィ爺が、何やら(うやうや)しく差し出す。


 おお、箸だ。


 紛れもなく箸だ。


 って感動する程の事もないのだけれど。



「ありがとうウィーギィ(ジージ)



 普段は「(ジージ)」だけ、だけれど、こういう時は名前をつけて呼ぶ。


 はて?ウィーギィ(ジージ)のフルネームはなんだろう?



「どういたしまして、クィンツ様」



 ウィーギィ(ジージ)は目を細めた。


 うん?


 そうだ。ウィーギィ(ジージ)を使おう。



「ねぇ(ジージ)


「なんでございますか?」


木綴(キトジ)、削っておいてくれない?」



 私はハーティからもらった木綴(キトジ)一式をウィーギィ(ジージ)に渡した。



「お安い御用で。」



 いや、本当に頼みたいのはそれじゃないんだけれどね。


 今はとりあえず、それでいい。




 その日の夕食は、マィンツ同様箸で頂く。



「クィンツは、箸の使い方をどこで覚えたのですか?」



 とマィンツが呆気に捉れたように尋ねた。



「叔母様のを見てです。」



 と、しらばっくれる。



「あら。舞や歌はなかなか覚えないのに、箸は早いのですね。」



 うぐ。


 やばい。やぶ蛇であった。


 おかげで、その夜の歌の稽古は厳しいものになってしまった。

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