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16話目「決意」

 昼寝が過ぎたのだろうか?


 夜も更けたというのに、まだ眠くない。



 私は、ゴザから立ち上がって窓の外にある月を眺める。



 海はジャングルで見えないけれど、波の音も聞こえる。



 床の隣りでは、叔母さんであるマィンツが寝息を立てている。


 眠っても綺麗な人だ。


 私の中のオッサンがムラムラするが、童女の私にはどうする事も出来ない。



 その、さらに向こう側にはマィンツと一緒に来た、ハヌという少女が横になっている。


 私の家屋は臨時の女性用客間らしい。


 なんとも珍妙な気分だ。




 月を見ながら、私は、昼間、チュチュ(ネーネ)が言っていた事を考えていた。



『フーズ様も、ハーティ様も、もはや大英雄(ホンクァウラ)の貫禄で御座います。この域にたどり至れる方は、神となられた方々だけです。将来、女神のごとく美しくなられるであろう、クィンツ様のお相手としては、このお二人ぐらいしか思い当たりません。』



 うん。


 嫌だな。



 別にこの二人に限らず、男との結婚なんて嫌だ。


 男とあんな事、こんな事になるなんて、想像するだけでも、鳥肌が立つ。


 私は男のなのだ!



 では、どうしたら良いのだろうか?


 私の主体性…つまりは、私のワガママを、まかり通すには…だ。



 …誰も、私に何かを強要出来ない立場…に、なるしかない。



 それって、つまりは…一番偉くなるしかない。って事か?


 別な意味では、一番強くなるしかないって事でもあるのか?



 強く…っていうと、物理的な強さという意味では、たとえば世界中の人が襲って来ても蹴散らす、スーパーマンの様な強さって事なのだろうが、恐らくそんなのは無理だ。


 憧れるけれど。



 …いや、無理と頭から決めつけていいのか?


 祈女(ユータ)っていうモノの力がどういうものかわからないから、もしかしてすげ〜魔法使いのような力を持っていたら、その方面の才能を伸ばせば、可能かもしれない。



 …まぁ、無理だろうという前提で考えるのは大事だね、



 …偉くなるって方向性なら、政治的な立場だから、アリなんじゃないだろうか?



 この世界の、この村は、ほぼほぼ原始時代に毛が生えたようなものだ。


 そのトップは…親父のハーティで間違いないだろう。


 そして、ハーティは村内においては、最大の自由を享受しているように見える。


 誰かの命令で何かをやっているようには思えない。


 塩を配ると決めたのも、彼自身の判断だ。



 だが、ライバルは居るらしい。



 ナータ・フーズと言ったっけ?


 一応伯父さんになるらしいが…。



『フーズ様も、ハーティ様も、もはや大英雄(ホンクァウラ)の貫禄で御座います。…クィンツ様のお相手としては、このお二人ぐらいしか思い当たりません。』



 チュチュ(ネーネ)の言葉がリフレインする。



 ふむ。



 要するに、この二人より圧倒的に上の立場になれば、私の自由は束縛されないって事か。



 …だがそれは、この島…いや、イヤィマの島々に限る。


 この島々以外に、世界は広がっているからだ。




『ヴィンからの船の荷の一つが塩でした。ウーチュでは塩を購入する家がありましたから』



 と、ウィーギィ爺は言っていた。



 つまり、ヴィンとウーチュは交易している。


 交易出来る船を持っていると言う事だ。




『イェームトやウーチュ、ムィンの船は、この島が目的地じゃなくて、ただ補給のために立ち寄るんです。その時、水とか食料を提供して、代わりに幾らかの商品を受け取るんです。』



 と、セイトウくんが教えてくれた。



 つまり、この島は交易対象になり得るような価値はないって事だ。




 塩作りする時、ハーティは鉄鍋を出してくれた。


 あれは、この島で作られたモノではないだろう。


 鉄器は作っているけれど、鍋をつくほど豊富に鉄があるように思えない。


 せいぜい農具の先に取り付ける分ぐらいだ。


 その鉄そのものも…



『鉄は、イェームトやムィンの商人から買っているんですよ』



 と、セイトウくんは言っていたな。



 その上、今日の鏡…南来(パテラー)の鏡と言っていたか。



 …うむ。



 あきらかに、この島なんかより遥かに技術、文明が優れた社会があるのだ。


 むしろここは、島ということで、世界から隔絶されて、遅れているんじゃないだろうか?



 と、なると…。



 私は元の世界での記憶を巡らす。



 圧倒的に強い国があれば、弱い国は蹂躙・侵略されるのだ。


 それが、私の居た世界での歴史だ。


 この世界は、そんな事はない。なんてどうして言えるだろうか?


 確かにこのウォファム村は平和のようだ。


 だが、それが、世界すべてに適用されているなんて言えない。


 いや、ほぼほぼ無いだろう。


 そもそも生物界は生存競争の世界なんだし、それはこの島でも変わらない。



 島民らは、穀物を食べるし、肉だって、魚だって食べている。


 つまり食物連鎖があるという事。


 食物連鎖があるなら、生存のための争いはある。


 生物間に生存のための争いがあるなら、人間同士だって、必ず争っているという事だ。


 ならば、略奪や侵略は、普通にあるだろう。



 海を越えて交流出来るだけの船を持ち、輸出出来るだけの鉄を持ち、圧倒的技術で鏡を作れる。


 そんな社会vs塩もロクにつくれない。味噌もやっとこ手に入るレベルの社会。



 衝突した時、どっちが勝利するなんて火を見るように明らかだ。



 今は、交易対象になり得るような価値も無い…せいぜい補給地としての価値しか無いと思われていても、たとえば、島民を奴隷にして売買しようという連中がやって来ないとは限らない。



 そんな時、私が目をつけたられたどうだ?


 いや、目につけられるだろう。


 私はメチャクチャ可愛いのだ。



 元の世界の歴史では、征服者が被征服者の姫を無理やり妻にするなんて、当たり前だ。


 むしろ、島民らによって、征服者に捧げられてしまうかもしれない。


 妻ならまだ良い方で性奴隷にされてしまう可能性だってあるぞ!



 いやいやいや、冗談ではない。



 考えろ。考えろ。



 つまる所、私の自由と安全と貞操を守るためには…一番、偉くなるしかない。


 一番というのは、この島で…というレベルじゃない。


 極端な話し、この世界で!と言う事だ。



 そして、幸いの事に、私の今置かれている立場は、決して低いものではない。



 昼間の光景を思い出す。


 私に膝まづき、土下座する村人たち…。



 数は2〜300人ぐらいしか居なかったが…。


 それでも、私は、並の家の並の子供…というワケではない。


 むしろ、村ではトップの立ち位置だろう。


 まぁ、父親の威光の下に…だけれども。



 だが、あんな風に私に膝まづき、土下座するような人々で世界が満たされるならば…それが良いのだ。


 私の自由や、安全や、貞操!は保証される。という事なのだ。



 しかし、そんな事は可能か?


 う〜ん。


 難しいかもしれない。


 難しいかもしれないが…。



 だが!



 やらねば…()られる!



 ()られるなんて、絶対、何があっても、死んでも、嫌だぁああああああ!



 やるしかない。


 やるしかないのだ。



 幸い、私はまだ4歳だ。


 今から死ぬ気になって頑張れば、何とかなるんじゃないのか?



 私は、窓から見える月に向かって、激しく強く、決意したのであった。

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