あなたの「――」繋がってますか? ――ダッシュ「―」と長音符「ー」は別の文字です――
何を当たり前の事を、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが。
教わったことがなければ、ご存じなくても無理のないことだと思います。
感想欄に寄せられた情報や指摘をもとに、大幅に改稿しています。
emダッシュよりホリゾンタルバーがお薦めという書き方をしていましたが、皆さんの情報を勘案した結果、「どちらでも良い」に改めましたので、ご了承下さい。
こんばんは。突然ですが、以下の5つの文例を読んでみて下さい。
①
「あ、あのさ……」
「――ごめん」
勇気を振り絞って切り出す僕を遮って、彼女は謝罪の言葉を口にした。
②
「あ、あのさ……」
「——ごめん」
勇気を振り絞って切り出す僕を遮って、彼女は謝罪の言葉を口にした。
③
「あ、あのさ……」
「ーーごめん」
勇気を振り絞って切り出す僕を遮って、彼女は謝罪の言葉を口にした。
④
「あ、あのさ……」
「--ごめん」
勇気を振り絞って切り出す僕を遮って、彼女は謝罪の言葉を口にした。
⑤
「あ、あのさ……」
「一一ごめん」
勇気を振り絞って切り出す僕を遮って、彼女は謝罪の言葉を口にした。
どれが正しいか、分かるでしょうか。
一目で分かる、という方と、分からない、という方がいらっしゃると思います。
でも、それはあなたのせいではありません。使っている環境のせいです。OSとかブラウザってやつらが悪いです。なので、今「?」を浮かべてるかたも、他の人からはそう見えるのか、と思って頂けたら幸いです。
さて、実はここ数日、いくつか読んだ小説の中で「――」の書き方がおかしかったものが複数作ありました。もちろん記号の使い方は内容には影響しませんし、実際どちらも内容はとても良かったです。ですから、作者の方を悪く言うようなつもりはありません。ただ、内容が素晴らしいからこそ、細かい瑕疵がもったいなく感じることってありますよね。
というわけで、感想欄で念のため指摘をしたのですが、もしかしてこの間違い、意外とあることなのでは、と思い、もっと多くの方に見てもらえるようエッセイにしてみようかな、と思い立ちました。
実際、どれくらい間違っているのかな、と思って、「読もう」の検索機能で調べてみました。本文の検索はできないので、6/30に最新部分が投稿された小説で、あらすじで「ーー」(間違い)を含むものを調べてみました(23時14分時点)。
その結果、検索結果が111件。一方、「――」(正しい)を含むものを同じ条件で調べると、287件。
そう考えると、なかなかの割合ですよね。
もちろん、正しく長音として「うわーーん!」のように使っている可能性もあるので、全てを間違いとは見なせませんが。
でもまあ、いずれにしても、改めて周知する意義もありそうだ、と思った次第です。
前置きはこれくらいにして、本題に入ります。
上記の例文、①と②が正しいです。意外に思った方もいらっしゃると思いますが、ひとまず置いておきましょう。
この記号は「ダッシュ」と言います。正しくは①は「ホリゾンタルバー」、②は「emダッシュ」という記号ですが、まあどっちでも良いです。この2つの違いについてはややこしいので、説明は補足に回します。
ちなみに、日本語の文ではダッシュは必ず偶数個で――というか、普通は2個セットで――用いられます。
記号の使い方に関しては、私もあまり自信がないので、ここでは描きません。ググって下さい。青い鴉先生の『誰でも分かる!小説の書き方入門』なんかを見ると、詳しく書いてあります。
さて、この記号、PCであれば普通に「ダッシュ」と打って変換すれば出てくるはずです。もしくは、長音符「ー」を変換しても出ます。
Macなら「Shift」+「Option」+「-」で出てきます。
スマホでも同様に長音符「ー」を変換すれば出るはずです。まあ、OSやキーボードにもよると思うので、「ダッシュ 打ち方 iPhone」とかでググればいろいろと出てきますよ。
あと、感想で指摘がありましたが、スマホからなら編集画面の記号挿入からも入力できます。
ちなみに私はスマホでは「――」を辞書登録して、「ダッシュ」で変換できるようにしてあります。
次に、間違いの文を見ていきましょう。
③の横棒は長音符「ー」です。「わーれーわーれーはー、うーちゅーうーじーんーだー」って言うときに使うやつです。④の記号は全角ハイフンマイナス「-」、⑤は漢字の「一」です。
これらは別の意味を持つ記号ですし、間が切れてしまって見た目も良くないので、ダッシュの代わりに使ってはいけません。
いろいろとややこしくなってしまいましたが、
・ダッシュとして用いて良いのは①の「―」または②の「—」
・きちんと繋がってみえる(ことが多い)のは、この2つだけ
・文中では基本的に2つ続きで「――」のようにして使う
・長音等で代用するのはダメ! 絶対!
ということを覚えておいて下さい。
なお、①でも②でも、見る人の環境によっては繋がらないこともありますが、それはもう諦めるしかありません。ただ、どうしても嫌であれば、補足2で触れる罫線素片「─」を使うのはアリだと思います。
本題が前置きより短く済んでしまうのもアレなので、おまけで三点リーダにも触れておきます。
①「お、お前は…」
②「お、お前は……」
③「お、お前は・・・」
④「お、お前は...」
⑤「お、お前は。。。」
これに関しては目くじらを立てることではないかなと思いつつ、やっぱり見かけると感想欄で指摘してしまいます。
正しいのは②です。「…」は三点リーダという一つの文字で、これも偶数個セットで使うことになっています。①は記号は正しいですが、個数が1個なのがまずいです。
ちなみに、なぜ偶数個なのかは私も知りません。強いて言えば「お約束だから」というのが私の答えです。このお約束を知った上で、①や③の方が優れていると作者が感じて使うのは、悪いことではないと思っています。
③はたまに見かけますね。「・」を3つ打ってしまうパターンです。三点リーダ・二点リーダはそれぞれ「…」「‥」で一つの文字なので、気をつけましょう。
④は「.」3つ、⑤は「。」3つですね。
ただ、重ねて言いますが、「どうするべき」というつもりはありません。文芸カテゴリならお約束は守る方が良いと思いますが、緩めの書き方の文なら敢えてお約束を崩しに行くことは否定しません。
とはいえ、ダッシュは見栄えが全然違うので、きちんと使うことをお薦めします。
補足
実はこのダッシュ問題、もっと深い闇があります。
上で触れたとおり、和文のダッシュに対応する記号は2種類あります。
一つは①のホリゾンタルバー「―」
もう一つは②のemダッシュ「—」
です。
Windowsでダッシュを入力しようとするとホリゾンタルバー、Macだとemダッシュが出てきますが、どちらでも間違いではありません。
ですが、冒頭の4択でも
両方繋がって見える方
①だけ繋がって見える方(恐らくWindowsの方はこうなるはず)
②だけ繋がって見える方(iPhone だとこうなんですかね……)
どちらも切れて見える方
といらっしゃると思います。
こればかりは、もうどうしようもありません。正しい記号を使って、それでも繋がってくれないのですから。①と②は、どちらを使っても問題ありません。繋がらない環境にいる人のことは諦めるか、開き直って邪道に手を染めましょう(補足2参照)。
補足2
もう一つ、感想欄で裏技を教えて頂いたのでご紹介します
先に例を示します。
「──ごめん」
どうでしょうか? これは繋がって見えているのではないでしょうか? これは「罫線素片」と呼ばれる文字で、本来は罫線を引くためのものであり、ダッシュとは別物です。
しかし、これが一番多くの環境で繋がった線を引けるのは間違いありません。本来ダッシュのために作られた記号を無視して別の記号を使う罪悪感はありますが、見た目だけで言えばこれがベストと言えます。
結論としては
①本来、ダッシュには全角ダッシュ(「―」や「—」)を使うべき
②ただし、見栄えのことを考えると、横罫線「─」を用いるのもアリ
③どちらにせよ、長音「ー」やハイフンマイナス「-」で代用するのはナシ
というところでしょうか。
……こんなことを言っていると、出版・印刷業界の人には怒られそうですけどね。