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死人(sibito)  作者: 山田健一郎
8/10

死霊

クロの様子は尋常では無かった。

牙を向き、敵意を剥き出しにして俺の頭上に向かって激しく吠え続けている。

(とにかくこの場所から逃げなくては!!)

俺は急いで沢からキャンプ地に戻った。

(何だ!一体何なんだ!気のせいでも幻聴でもない。何かがいた!!)

俺は震えていた。ザックの中から金城さんにもらった酒を出し浴びるように飲んで、いつの間にか眠り込んでしまっていた。

地面の上にブルーシートを敷いてあり、普段はそこでいろいろな道具の手入れをしたり、食事をしていた。寝るときは基本テントの中で寝る。

だがその時は酔っ払ってシートの上で寝てしまったようだ。

海岸から陸地に向かって歩いていくと森の入口があり、その中のちょっと開けた場所にテントを張り、テントの回りにブルーシートを敷き詰め、頭上にもシートを張り屋根がわりにしていた。

俺はテントの脇のシートの上で寝てたはずだった・・・・・


ふと目覚めると俺は海岸に寝そべっていた。

そこはナイヌの浜の南から来る海風と東からふいて来る風が交差する場所であった。月明かりで結構明るいが夜中だろう。波の音と風の音だけが聞こえる。


起き上がろうとしたが身体が動かない。

金縛りになった。


その時不意に頭の中がクリアになったような気がした。

俺はなんで西表島に来ているんだ?

なんでサバイバル生活してるんだ?

まるで催眠術でもかけられていた様な気がした。

その時誰かが海岸沿いを歩いてきた。

辛うじて頭だけは動かせたのでそちらを見ると金城さんだった。隣にクロもいる。

金城さんはニコニコしながら近づいて来る。

クロはいつものように無表情だ。

段々と近づいて来る金城さんの顔を見て俺はこわばった。

目が笑って無い。何か怖い物を感じる。俺は金城さんに話しかけようとしたが声が出せなかった。

金城さんは両手で50センチ位の木彫りの仏像を持って近づいて来る。

何かその仏像がビクンビクンと動いている。

それは仏像では無かった。

だんだんと金城さんが近づくにつれ、その異様な姿がはっきりと見えてきた。

頭部が二つに分かれて、いや二つの頭部が融合した奇形児のような者。

目が三つ、でも目玉が無い。真っ黒な穴が三つ・・・黒い穴が動いている。

鼻は無い口も真っ黒な穴が空いていて中で何かが動いている。

細い首の下には右手が2本、左手は肘からちぎれている。

下半身が無い。右手は両方とも指が3本づつしか無かった。

その指はもぞもぞと動いている・・・

俺は恐怖で気が狂いそうだった。


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