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死人(sibito)  作者: 山田健一郎
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サバイバル

(この場所だ!俺が探していた浜辺だ!)

俺はひどく興奮していた。が、金城さんには悟られ無いように平静を装った。


金城さんは近くの水場として使える沢とテントを張るのに最適の場所を教えてくれた。そしてこう言った。


「夜遅くには出歩かないで林の中のテントで過ごしなさい。特に夜の海は危険じゃ、決して近づかないようにな。」

「この島には毒蛇のハブが4種類いる。ハブは夜に活発に動く。台湾ハブは木の枝の上におる。海蛇も夜に陸に上がってきよる。ハブ以外にも毒は無いでかい蛇がおるがの。あと昼間でも海の中にはでかいウツボやヒョウモンタコ、マンジュウカニがいるから気をつけな。ウツボに噛まれたら指が無くなる、ヒョウモンタコに噛まれたら死ぬ、マンジュウカニ食べたら死ぬ。フェフェフェ」

「あと満潮時にリーフエッジからたまに鮫が入って来る事があるから気をつけな。フェフェフェ」


俺はやる気が無くなってきた。

相変わらず黒犬のクロ金城さんの隣に座って俺を見つめている。

近寄って頭を撫でようとしたら逃げられた。

しっぽをふるでも無く吠えるでも無くまったく感情が感じられない。


「この島で1番恐ろしいのは毒蛇でも鮫でもないのじゃ。1番怖いのは悪霊じゃよ。」

そう言って金城さんは顔を歪めて笑った。


「悪霊ですか!」

俺はつい大きな声を出してしまった。

「この島は戦前炭坑があっての、いろんな場所から騙されて連れて来られて強制労働させられるタコ部屋があったのじゃ。あまりの辛さに逃げる奴がでる。

だが直ぐに捕まって連れ戻され見せしめのためリンチして殺す。そんな事がよくあったらしい。」

「それとな・・・この島に死にに来る人間がたまにいる。そいつらはな、大体悪霊になるさ。」

「まぁ、頑張りなさい。」

そう言うと金城さんは来た道を引き返して行った。


俺は林の奥にテントを張り始めた。

テントを張り終えた俺は沢に水を汲みに行った。

キャンプ地から10分ほど歩いたところだ。

金城さんが言っていた悪霊の事は気にかかったが、とりあえず忘れる事にした。

20リットル程水を汲みテントに戻って来て、釣竿を持って海岸に行った。

その日は20cmくらいの青い熱帯魚の様な魚が釣れただけだった。

キャンプ地に戻り魚を焼いて食べた。味付けは塩だけだ。あまり美味くなかった。

夜もふけてきたので寝ようと思ったがテントの中があまりに暑い。

暑くて眠れないので地面にシートを敷き、エアーマットの上にシュラフを置きその上で寝た。

Tシャツと半ズボン裸足で寝た。

翌朝起きて驚いた。全身蚊に刺されていた。体中がかゆい。

手足が見るも無惨に腫れていた。

虫との戦いが始まった。


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