「16話-希求-(終編)<後・中>」
5月2日。
裾野さんが菅野さんに会う前のお話。
※約7,800字です。
※本作騅編34話の裏話になります。
分割投稿していた3つ分のお話をまとめております。
2018年5月2日 17時30分頃
しげちゃんのスタジオ
あことし
意味深な事を言っていた5月5日の3日前。
なぜか、すそのんのんは俺達をしげちゃんのスタジオに呼び出した。
何か作戦会議でもするのか、と皆で考えていた頃、すそのんのんがスタジオに入って来た。
「突然呼び出して悪かった。単刀直入に言うが、これから菅野と会う」
そしてちゃんと知らない筈の菅野くんの名前を、ハッキリ口に出したんだ。
俺は菅野くんの事を思い出した事よりも、2人っきりで会うのかどうかが知りたかった。
だって、危ない状態の菅野くんだよ?
すそのんのんの事を……考えたくないけど、殺しちゃったり、閉じ込めたりしちゃったらって考えちゃうから。
何も言えなくなってる俺達を見たすそのんのんは、肩を落として、
「心配をかけてすまない。記憶はこの通り戻っているが、何人か会場には呼んでいる」
って、申し訳なさそうに呟いて、
「最後に伝える事になって申し訳ない。だがもう――待たせ過ぎたんだ」
と、泣きそうな顔をしながらも笑みを見せたすそのんのんに、皆でハッとした顔をしたんだ。
もしかして、すそのんのんは菅野くんに傷つけられる結果になっても受け入れようとしてるんじゃない?
多分、これは皆と同じ考えだと思う!
「今日の夜7時、俺と菅野が初めて会った場所で会う」
すそのんのんは俺達の返事も聞かず、そのまま扉を開けようとした。
だけどその前に呼び止めたしげちゃんは、
「貴方はいつも勝手なんですよ。論理的な人間かと思えば、予測不可能な行動を起こす。貴方は。貴方は菅野に手を掛けられるかもしれないんですよ!?」
すそのんのんを振り返らせ、両肩を掴んで激しく揺すった。
しげちゃんが感情的になるのは、仲間が一大事って時だけ。
それかよっぽど自分にとって嫌だと思った時。
「今日ってたしか――そうよ!! 人身売買禁止法が裏の世界でも成立して、人間オークションが禁止行為になったのよね!」
ゆーひょんは嬉しそうにスマフォを皆に見せると、
「だから会いたくなったの?」
すそのんのんを心配そうに見下した。
すそのんのんはその言葉に、目を伏せて何度も深呼吸をした。
本当は不安だったのかな?
「迎え入れてくれるかは正直分からない。だから"最期に"4人に会っておきたかった」
すそのんのんは目を逸らして呟くと、戸惑うしげちゃんを抱きしめた。
「すそのんのん……俺、頑張るよ!!」
無責任って思われても仕方ない。
だけど、こう言わなきゃすそのんのんは前へ進めない。
そんな気がして放った俺の一言は、しげちゃんから離れたすそのんのんの表情を少しだけ柔らかくした。
「ありがとう」
すそのんのんは、俺なんかよりも責任感が強くって完璧主義。
菅野くんがおかしくなっちゃったのも、全部自分のせいだって考えてる。
菅野くんが自立しなかったのは、菅野くん自身のせいかもしれないのに。
すそのんのんの意図を汲めなかったからかもしれないのに……!!
いつまでもすそのんのんに依存していたからかもしれないのに!!!!
「マイスウィートハニー。明日、残心をテーマにした衣装を着て。明日には出来上がるから」
佐藤は手鏡を尻ポケットにしまうと、真っすぐにすそのんのんを見て語気を強めて言った。
「……そうだな」
すそのんのんは、やっぱり自信無いみたいで弱々しく答えた。
するとしげちゃんが拳を強く握りしめて、
「私達は貴方を送り出そうと決めたんです! そんな態度を取るなら、リーダーとして許可は出せませんよ!!」
って、喉がはち切れそうなくらいの声量で叫んだ。
すそのんのんは、しげちゃんの一喝で背筋をピンとすると、
「逆の立場になって考えればすぐ分かる事なのに、本当にすまなかった。そして、ありがとう」
満面の笑みを見せてスタジオを去った。
「すそのんのんなら大丈夫だよね」
俺が精いっぱいの笑顔を見せて皆を見渡すと、
「19時だと言っていましたから、あと1時間はあります。先に会場に行って下見でもします?」
しげちゃんは車の鍵を尻ポケットから出して言った。
やっぱ1番心配なのは、しげちゃんなんだよね!
「いいわね~! じゃ、茂の車で出陣よ!!」
ゆーひょんがスタジオの扉を開け放って叫ぶと、しげちゃんは車の鍵が無い事に気付いて追いかけて行った。
2018年5月2日 18時頃
人間オークション跡地
あことし
しげちゃんの車とゆーひょんの車に乗り込んだ俺達は、人間オークション跡地の駐車場で合流した。
ちなみに俺とゆーひょんがゆーひょんの車で来たんだ。
すそのんのん、菅野くんも乗るってなったら、1台じゃ不安だったし。
とりあえず、どこからどうやって菅野くんが来るか考えないと。
「開場は18時なので、徐々に人が集まってくると思われます。なるべく離れないように」
しげちゃんは受付で資料を受け取って来たみたいで、両手いっぱいに抱えて来た。
「ありがと。今日は記念すべき日なのに、警戒しなくちゃいけないなんてね」
ゆーひょんは資料を全員に回しながら、心配そうに溜息を吐いた。
「うん。でも菅野くんは、ずっと"過去"に縛られてたんだよね? 会場に来たら、解放されるなんて……ない、かな?」
俺がぽつりぽつりと言うと、しげちゃんは前髪をかきあげて首を横に振り、
「目にも入らないでしょう。分からなくなってるんですよ?」
って、呆れながら言うと、佐藤も力強く頷く。
やっぱり菅野くんはもう戻れないのかな。
俺はいつか戻れる、ここに来たら少しでも戻れるって思うのにな。
だけど戻ったら、色々後悔しちゃって苦しむかもしれない。
それは自分が招いたことなんだから、拒否しても仕方ないよね?
すそのんのんに八つ当たりしても、何も解決しないんだよね?
でも……やっぱり……すそのんのんは、菅野くんがどんな判断をしてもきっと受け入れちゃう。
俺はそれが怖いんだよ。
皆もきっと、自分を犠牲にしちゃいそうなのが怖いんだよ。
だから今度は俺が、Coloursですそのんのんを護らなきゃ!!
「今度は俺が守るんだ」
俺が胸に手を当てて呟くと、ゆーひょんは聞こえなかったのか首を傾げている。
ゆーひょんには話した方が良いかな。
でもこれは赤穂家から解放してくれたお礼でもある。
――音は無いけど、勘が誰か来ると言っている。
そこで勘の言う通り振り返ると、
「蒼谷さん達!!」
と、淳ちゃんの光みたいな声が聞こえてきた。
「4人は一緒か」
龍也さんが俺達を見回して言うと、俺達は目を見合わせて頷いた。
ということは、菅野くんとすそのんのんが心配で来てくれたのかな?
だとしたら黒河や藍竜さん達も一緒じゃないのかな?
「藍竜と暁は藍竜組で待つと言っていたよ」
湊さんがキョロキョロする俺を見て言うと、ゆーひょんは申し訳無さそうに後ろ頭を掻いた。
これ、絶対心読まれちゃったよね。
「あと、黒河は情報屋の恋さんと来てるよ」
湊さんは微笑みながら言うと、受付に並ぶ男女を手のひらで差した。
「うわ。会わないようにしなきゃ」
俺が思わず心の声をそのまま口にすると、湊さんは苦笑いを浮かべた。
「そろそろ移動する?」
佐藤が資料を読み終えてギターケースに突っ込みながら言うと、皆で会場の中心へと移動を始めた。
スマフォで時間を確認すると、18時20分と表示されている。
あと40分で運命が決まるんだ。
「まだ暗いですね」
しげちゃんが俺の隣を歩きながら言う。
その声がほんの少しだけ不安そうに震えていて、俺は無意識にしげちゃんの手を取った。
あと40分もすれば、紙灯篭が空に向かって飛ぶ。
その時はきっと明るいんだろうから――
「――大丈夫。俺の勘は当たるんだよ?」
俺はこの時の発言を今でもすっごく後悔してる。
だって本当はそんなことなかったんだもん。
勘は危険信号を出していたのに、しげちゃんを安心させたくて嘘を吐いちゃったんだ。
「そうですね。野暮な事を言いましたね」
しげちゃんは俺の手を優しく払うと、深呼吸をして空に向かって言葉を浮かせた。
すると段々人が集まってきたのか、人間オークションの被害者や被害者家族がそれぞれの境遇について話す声が聞こえ始めた。
「娘が……遺体になった写真だけが送られてきました……」
「ここで息子が売られて、痣だらけになって汚いからと返されて――」
「私の家族も、未だに戻ってこないんですよ」
「私なんて家族が目の前で斬られて、オークションを滅茶苦茶にされて――」
「あの時でしたか! 壁が壊されて、警察も乗り込んできましたよね」
「混乱に乗じて逃げ切れたのでよかったですが、あの時の子どもはどうなったんでしょうね」
色んな声が聞こえてくる。
どの声も痛くて苦しくて、頭を抱えたくなる。
今日で禁止になったって家族は戻ってこないんだよね。
もっと早かったら、もっと沢山の人が助かったのに。
「法律はいつだって遅い」
佐藤が手鏡を見ながら前髪を整えて言うと、淳ちゃんは辛そうに俯いた。
それから一歩踏み出した淳ちゃんは、ゆっくり息を吸うと何か歌いだした。
側に居る俺達にも聞こえない程の小さな声だったけど、耳を傾けていると少しずつ何かが癒えてくるような気がした。
その歌は1人、また1人と話すのをやめる人達の心に響き始めていく。
そして波紋みたいにどんどん広がっていって、皆が皆祈るポーズをして聴き入っている。
「心の癒しになりたいって歌ってる。あの子、自分の想いやエネルギーを歌に乗せているんだわ」
ゆーひょんは両手を広げて歌う淳ちゃんの姿を見ると、目を見張って感心しながら言った。
俺はその姿に魅入ってしまいそうだった。
だって……この歌なら菅野くんもすそのんのんも救えるんじゃないかって、心から思ったから。
タイトルも分からない歌だけど、仮に癒しの歌としたっておかしくない。
何よりも会場の端に居る人達まで癒され、祈っている事が証拠だから。
癒しの歌が会場中を響かせている時、俺はふとこんな事を呟いていたんだ。
「菅野くん、辛かったよね」
と。
するとしげちゃんは深い溜息を吐いて、
「裾野と出会えなければ、あのまま太田兄弟に連れ去られ、更に悪質な人間に売られていたでしょうから」
と、眉を下げて言った。
淳ちゃんもそうだけど、すそのんのんも沢山の人を救ってきてると思う。
完璧主義な所は俺と似てるけど、完璧じゃなきゃ嫌な部分が全然違う。
俺なんて落とし前ちゃんとつけなきゃ嫌とか、そういう完璧主義なのに。
すそのんのんは全体的に完璧じゃなきゃ落ち着かないって感じだし。
それなのに自分の完璧よりも皆がどうかを優先するし、皆の為に自分を犠牲にしちゃう。
今回だってそうなんだ。
「そう考えると怖っ」
ゆーひょんは両腕を擦ると溜息を漏らし、
「だからといって、聖に依存していい訳にはならないわよね」
と、皆から目を逸らして呟いた。
「……」
そうだよね、とかそうだね、とかすぐに返さなきゃ。
だけどなぜか声を掛けられないまま、黙っちゃったんだ。
すると佐藤が手鏡をギターケースにしまって、
「菅野は、マイスウィートハニーを好きになった」
なんてとんでもない事を言い出すから、皆は目が点になった。
だってだって……菅野くんは、すそのんのんからの恋愛感情を嫌がってたんじゃないの?
だから告白も断ったって聞いたよ。
「え? 本当に? 菅野くんは女の人しか好きにならないんじゃないの?」
俺が不思議そうに佐藤を見上げて言うと、佐藤は首を傾げて、
「抱かれたいかは知らない。でも居なくなったから、心が動いた。だから変な行動してるんでしょ?」
って、逆に不思議そうに言われちゃった。
「人の行動や思考には必ず理由がありますからね。もし佐藤の仮説通りなら、相当な皮肉ですがね」
しげちゃんは不安そうな俺を心配そうに見ながら言った。
よく理解できない、頭の良くない俺に分かるように言ったんだろう。
でも今はその優しさも含めて辛い。
「どうしてよ!! 自立する為に――」
ゆーひょんは言葉にできない俺の代わりに感情をぶつけてくれた。
だけど、淳ちゃんが目に入ったのか慌てて言葉を切った。
ゆーひょんは皆に優しいし、周りをよく見てくれている。
だからこそ俺を優先させたけど、淳ちゃんの気持ちも考えたら言えなくなっちゃうよね。
「ごめんなさい。1番訊きたいのは淳よね」
ゆーひょんは俺と淳ちゃんを交互に見ると、ゆっくり頭を下げた。
それに対して、淳ちゃんは少し悲しそうに微笑んで首を左右に振った。
俺もゆーひょんの肩に手を置いて、気にしないで、と声を掛けた。
「菅野の龍に対する愛は、恋愛ではなく家族愛だ」
キッパリ言ってくれた龍也さんの言葉は、何となく沈んだ空気を変えてくれた。
「勿論、淳や龍、それに菅野も、心のどこかでは家族愛って分かってるだろう」
龍也さんは続けてそう言うと、湊さんが何かに突き動かされたかのように一歩前へ出て、
「だけど、大切な人がいなくなれば、正常な愛が歪んだ愛に変貌してしまう」
と、菅野くんが乗り移ったみたいな感じで言うから、俺は違和感を覚えたんだ。
もしかして、人生の先輩だから同じ事を経験してるんじゃないかな。
だからちょっとでも、いやすっごく? 菅野くんの気持ちが分かるんじゃないかな。
やがて淳ちゃんはふわっと溶けるように歌を終わらせると、アナウンサーの方をチラッと見た。
「今日で人間オークションもとい人身売買禁止法が、裏社会でも成立致しました。警察の黙認も禁止、取り締まりも強化。ですが今までに売られた方々の行方は知れないまま……皆さん、無事を祈って紙灯篭を空へ飛ばしましょう。我々の想いが届くように」
その合図をきっかけに始まったアナウンスの後にパッと紙灯篭に灯りが点いて、波が引いていくように地面いっぱいに広がった光の海。
え……もう19時なんだ。
それから皆で手のひらサイズの紙灯篭を拾い上げて、空に向かって飛ばしていく。
俺達も近くにあったものを拾って、それぞれの想いを乗せてふわっと手を離した。
すると紙灯篭は、ふわふわと風船みたいに舞い上がった。
そのまま見えなくなるところまで見送っていると、
「君も彼らの無事を祈って、飛ばしてみないか」
ちょうど場が静まっていたせいか、安心できる声が耳にスッと入ってきた。
これはこの場に居る俺達なら絶対間違えない。
すそのんのんの声だ。
俺達が声のする方に目線を向けると、そこにはすそのんのんと菅野くんが向き合っていた。
その後は何か言葉を交わして、菅野くんも紙灯篭を飛ばしている。
もう少し近づこうかな、と思って歩きだすと、皆もバレない範囲で付いて来てくれた。
だってすそのんのんに何かしようとしたら、すぐ止められるようにしたいもん!!
この間にも2人は抱き合って何か話して、すぐ離れている。
一体何を話しているの?
そうして俺達が2人の会話を聞ける距離まで近づいた時には、菅野くんが何かを渡していた。
「これ、誕プレ。ちょっと早いけど、どんな俺でも渡せ言うたのはそっちやから」
って、包みを差し出す菅野くんの頬を軽く撫でたすそのんのんは、断り入れてからその場で開けている。
「ネクタイ、欲しかったんだ」
すそのんのんは、命の危機を感じ取ってへにゃりと笑った。
「つけよか」
菅野くんは、のっぺりとした笑顔でネクタイを付け替え始めた。
それをすそのんのんは嫌な顔1つしないで待っている。
だけどすそのんのんのスーツにはとても合わない、ロブロイっぽい色のネクタイ。
ゆーひょんなら酒言葉はね~なんて教えてくれそうだけど、今は聞きたくない。
なんだろう、この胸騒ぎ。
嫌な予感、アラートを鳴らし続ける勘。
「待って。俺の勘だけど、菅野君もしかして――」
俺が、気絶させようとしてるんじゃないの? と、言いかけた時、事件は起きた。
「おかえり、相棒」
菅野くんが見せた笑顔に、颯雅さんと龍也さんが駆け寄ろうとした。
だけどその前にすそのんのんは、ゆっくりと目を閉じてネクタイに手を遣りながら倒れ込んだ。
「――っ!!」
俺は口元を覆って、何も言葉に出来なかった。
それどころか、すそのんのんを助ける為に駆け寄ろうともしなかった。
その様子は、周りから見たらどんな風に映るんだろう?
安心しきって寝たように見える? 菅野くんが犯人に復讐したように見える?
そんなのどうでもいい!!
菅野くんは倒れ込んだすそのんのんを受け止めもせず、呆然と立ちつくしてるんだよ?
それにずっと笑顔を浮かべていて、正直殺し屋人生の中で1番怖いと思ったよ。
周りも菅野くんがおかしい事に気付き始めたのか、少しずつ会場から離れていく。
やがて菅野くんの笑顔が落ち着いた頃には、俺達以外誰も居なくなっていた。
俺は静まり返った会場を見渡し、吸う速度より遅く息を吐いた。
さっきまで淳ちゃんの歌声で満たされていたのに、ここってこんなに広かったっけ?
ここってこんなに寂しかったっけ?
「裾野」
菅野くんは周りを見てから座り込むと、すそのんのんを抱きしめて髪を撫で始めた。
愛おしそうにゆっくりと。
佐藤はそれを見た瞬間菅野くんにグンと近寄って、胸倉を掴み立ち上がらせ、
「そんな愛は続かない」
呆れ半分に言う言葉に、菅野くんは溜息を吐いた。
そして口元を覆う俺と目が合うと、"BLACK"で戦った時とは違う恨みの籠った目をギリッと潜めた。
それから俺の喉元向けて迷わず突いたのだ。
宿敵を見つけた虎に睨まれた俺は、脚も頭も凍り付いてしまった。
俺、もしかしてこのまま食べられちゃうのかな?
「あことし!!」
でもゆーひょんが思い切り頭を押してくれたから、槍はゆーひょんの洋服の袖を掠ったくらいで済んだ。
「ごめん」
俺が頭を押さえながら言うと、ゆーひょんは2,3回頷いて後ろに隠れるようにジェスチャーをした。
「はぁ……ほんま邪魔多いわ」
菅野くんは首をぐるりと回すと、爪先でトントンと地面を鳴らした。
まさか、この人数相手に1人で戦う気なの?
嘘でしょ? 颯雅さん、龍也さん、湊さん、淳ちゃんは心が読めるし、行動も読まれるから戦いにくいのに?
俺達だって全員元片桐組エースだし、今は藍竜組の役員や隊員になってるのに?
ていうか皆すそのんのんにとっても大事な人で、菅野くんにとっても淳ちゃんは大事な人なのに!?
どうしてここまですそのんのんに拘るの!?
「竜斗!!!!」
淳ちゃんは槍を地面に突き刺し、誰から殺そうか考えているであろう菅野くんの元に駆け寄った。
「……」
菅野くんは淳ちゃんを無表情で見下すと、
「今?」
って、2トーンくらい低い声で、じわじわと威圧を掛けながら言葉を呟いたのだった。
ここまでの読了、ありがとうございます。
作者の趙雲です。
次回投稿日は、11月7日(土) or 11月8日(日)です。
それでは良い1週間を!
作者 趙雲




