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ユーカリと殺し屋の万年筆  作者: 趙雲
龍勢淳編
78/130

「16話-希求-(前編)」

希望を求め、真相を語る人物とは――


※約2,000字です。

2018年5月17日 15時過ぎ

後鳥羽家 すそのんのんの部屋

赤穂俊也(あこう としや)



 すそのんのんに呼び出されてお部屋に向かってたんだけど、途中で淳ちゃんと菅野くんと……誰?

とにかく一緒に居た灰色っぽい髪色の人も突入する事になった。


 ノックしてから部屋に入ると、淳ちゃんの姿を見て驚いた透理さんと、いつもの微笑(ほほえみ)すそのんのんが居たんだ。

微笑すそのんのんは、いつもよりも穏やかで絶対怒らないから勝手に心の中だけで呼んでるんだ。


「皆、急に悪いな」

眉をふわっと下げて言うすそのんのんは、人望の塊って感じがする。

よく分からないんだけど、そんな気がするんだ。


「いいよいいよ。あのね――」

と、俺が言いかけたと同時に菅野くんが「あ」と、小さく声をあげて、

「鳩村はんとColoursの皆さんって初対面とちゃう?」

と、完璧にフォローしていたから、すそのんのんも頬を緩めていた。


「ありがとう」

って、俺達には見せないふんわり笑顔で言った後、微笑モードに戻して、

「鳩村は俺と同期で、データで知っていると思うが情報系の担当だ」

と、鳩村さんの隣に立って言った。


 すそのんのんと並ぶと病人みたいに細い体が目立つけど、意志は凄く強そうでメラメラしたオーラが何となく見えた。

それにしても、どうしてすそのんのんって色んな人とすぐ仲良くなれるのかな~?

分からないけど、完璧主義で紳士だから深くは付き合えなさそうな感じするから――


 そうこう考えている間に皆が鳩村さんに挨拶していたから、

「宜しくお願いします!」

俺が深々と頭を下げて言うと、鳩みたいに頷いてた。


 それから5分くらい、互いに近況報告とか鳩村さんと絡んでいたんだけど、

「それで、活動休止の理由は誰が話してくれるのさ? それと、何でメンバー以外も呼んだの?」

と、空気をバッサリ切ったのは透理さん。


 Coloursの大ファンなのは物凄く嬉しいけど、やっぱりすそのんのんと違う怖さがある。

だけどすそのんのんは、微笑モードのまま透理さんの方に向き直って、

「まず菅野と鳩村を呼んだ理由ですが、この2人は最近Coloursの曲やメディアに触れた事でバンドに興味を持ったとのことでしたので、参考になればと思いこの場に呼びました」

って、機械並にスラスラ言うから、勝手に感心してしまった。


「続いて淳を呼んだ理由ですが、彼女には今回の件でも助けられましたので礼は勿論ですが、記憶違いがあれば指摘してもらう為です」

すそのんのんが表情1つ変えないで言い切ると、透理さんは大きく頷いた。


「分かったよ。じゃあ、この件を話すのは?」

そしてメンバーを見回して訊く透理さんに、俺は半ば衝動的に手を挙げてしまっていた。


「頭良くないけど、言いたい事が分からなくならないように頑張るから、偶には俺に話させて!」

今にも汗かきそうなくらい心臓バックバクで喉はカラカラだし、挙げた腕も指の先も震えているけど、皆笑顔で頷いてくれた。


 だって俺が1番――ううん、もうそんな事言わない。

いっつも真面目に話をする時、言いたい事が分からなくなるのが嫌で逃げてきたから。


 頭が良いすそのんのんとしげちゃんに、ずっと劣等感バリバリだったのが少しでも良くなったから。

ドラムで皆の事支えられてるのに、大事な話の時に支えられないなんてもっと嫌だから。


 それをメンバーの皆は少なくとも分かっているから。


 俺でいいんだよね?


「勿論ですよ。もうあのような喧嘩はしたくありませんが」

しげちゃんが溜息混じりに言う。


「あことしが居なかったら、Coloursはあのまま解散だったわよ。1番の功労者なんだから、自信持って話しちゃって?」

相棒でもあるゆーひょんが眩しい笑顔で言ってくれる。


「他に誰が居る?」

いっつも手鏡見ながら一言の佐藤が、手鏡から目を離して柔和な表情で見下す。


「適任者だ。メンバーの中で1番メンバーの事もColoursの事も愛するあことしなら、絶対大丈夫だよ」

安心する声で、すそのんのんは頭に手を置いて言ってくれた。


「ほんま皆に愛されてるし、Coloursも仲ええやんな」

いっぱい助けてくれた淳ちゃんも、光り輝く笑顔で受け入れてくれた。


「うん! 最後までちゃんと聞いててね!」

俺はトートバッグから愛用のドラムスティックを取り出すと、天高く突き上げた。


 そうそう、淳ちゃんの言葉で思い出したけど、リゾゼラとは違って活動再開まで大分時間掛かったんだよね。

だってリゾゼラも仲良いって聞いたからさ~?

俺をエーススナイパーから降ろした、あの黒河が居るのに。


 よし、今はそれ関係無いよ! イケイケあことし!


 俺は勢いのままに頬をスティックで叩いて、

「これはColoursが活動休止をし、再開するまでのぶつかりと希望と……えっと――"始まり"の実話で……あ~る!!」

と、ヒリヒリする頬を撫でながら最後だけ再び意気込んで言うと、全員から笑いが起こってしまった。


 本当に最後まで話せるか心配だけど、バンド活動以外でも絶対支えるって決めたから頑張る。

そう気合を入れた俺は、活動休止から再開までの年表を頭に思い浮かべながら話を始めたのだった。

ここまでの読了、ありがとうございます。

作者の趙雲です。


とある事情によりスローペースで申し訳ございませんが、今後ともお付き合い頂けましたら幸いです。


次回投稿日は、4月11日(土) or 4月12日(日)です。

それでは良い1週間を!


作者 趙雲

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