え?
俺の名はシュバル。召喚士だ。
俺は召喚したモンスターと様々なダンジョンをクリアして、多くの金銀財宝、そして、沢山のモンスターを仲間にしている。
これは俺の夢の話なのだが…。
ま、まあとにかく、まだ召喚士になったばかりの俺はあるパーティーの一員として、レベルアップに勤しんでいる。
そんな連日忙しい中、あるイベントダンジョンに入った時に起こった事がこの話の始まりである。
今の世界の状況から説明すると、
この世界には神様が2人いる。大女神と大魔王と言うんだが、2人共昔から気が合わないらしく、魔王が悪事を働き、女神が解決する。そんなのが何千年も続いていたらしい。
そのうちにモンスター側と人側との戦いへと変わり、関係の無い非武装組を守るため戦闘の舞台を変えるためダンジョンというシステムができあがっていった。
戦争は2人の仲直りで終戦を迎えたのだが、このダンジョンというシステムに目を付けた魔王軍はダンジョンを魔王軍によるアトラクションとして管理し、皆が勇者になれる世界へと変えていった。それに大女神が手を加え皆が魔法と剣と召喚獣を使うように変えた。こうしてダンジョンのシステムはサブカルチャーとして定着している。
この世界の規律として、職業は一人一つというルールがある。
そんなダンジョンの中でも俺は定期的に開かれるイベントダンジョンに来ていた。
このイベントダンジョンは今回初登場のもので、当然初見だ。
自分のレベルに合わせ初級のダンジョンに来たものの、流石にイベントなだけある。出てくるモンスター一匹一匹が侮れない程度に強い。
まあ、パーティーを組んで攻略している上、上位のプレーヤーが1人来ている事もあり誰一人倒れずにクリアできた。
実はこのダンジョンで貰える経験値は非常に少ない。
じゃあ、なんでこのダンジョンに来たかというと、報酬のある仕様の為だ。
このダンジョンは『職業応援ダンジョン』と銘打ち、各職業毎に一人一つ報酬が配られる。
その報酬というのが、レア度の低い物から秘伝級までと幅があり、どんな初心者でもレアな物を手に入れるチャンスなのだ。
初級から超級までの4段階用意されていて、難しくなる程レアな物が出る比率が上がっていく。
しかも、一人1回しか入れない上失敗してもコンテニューできないという、結局初心者に厳しいダンジョンだったりするんだが…。
召喚士である俺は召喚獣を抽選される。
なんだろうな~。使えるのだといいな~。
召喚獣の名前を表記する水晶を覗き込んでいるとルーレットが止まった。
おっと、結果が出たようだ。どれどれ~?
水晶に映し出されていた名前は…
『水王獣 ヲブラス レア度☆☆☆☆☆☆☆☆』
「……。」
「…………。」
「………………え?」
「えええぇぇぇぇぇぇ!!???」
え、何?何何何何!?
何この星の数!?え、ちょ、ええぇぇ!?絶対強い奴!これ絶対強い奴!
「どうしたシュバル。そんなに良いのでも出たか?」
リーダーであるコリスタが水晶を覗き込んで来た。
「なになに…。『ヲブラス』?ヲブラス!?ちょ、おま、なんつー当たり出してんだよ!?これ、超級でも当たる確率0.1%以下だぞ!?お前もう出て行けよ、おい!」
すると、俺の左肩に手がかかる。
「おお、シュバル。よかったなぁ。初心者パーティー卒業じゃん。じゃ、元気でな。」
「は!?ちょ、まてよ!なんd」
俺が言葉を言い終わる前に右肩に手がかかり
「ヲブラスかよ~(笑)よかったなぁ~。これでもう一人前のプレーヤーさんってわけだ。じゃあ、達者でな」
苦虫を噛み潰したような顔をしたメンバーに声をかけられる。
…こ、こいつら殴りてぇ。もうパーティー退会しろって言ってるもんじゃないか!
パーティー唯一の女子であり、俺の一目惚れの相手である白魔法使いのキィに目を向けるとすっごい顔して中指を俺に向けて立てていた。
こら!そう言うことするんじゃありません!
いうまでもなく、俺の初恋は呆気なく終わってしまった。
もう、このパーティー抜けよう…。
辞表をリーダーに出して(この時のリーダーのニヤニヤ顔には殴ろうか本気で悩んだ)俺はパーティーを抜けた。
いいし、別。俺にはヲブラスが居るし!
とりあえず当面のお金を稼ぐ為、ダンジョンに潜った俺であるが、ヲブラスを召喚するには俺の持つ魔力ギリギリ必要なためボス戦までとっておくことにした。
雑魚共は全力で逃げ、採取はしっかりと、何とかボスまで辿り着いて、俺はやっと期待のヲブラスを召喚しようとした。
いやー、ここまで大変だったなぁ。召喚士って基本攻撃力ゼロだからなぁ。囲まれたときはどうしようかと思ったぜ。まあ、そんな苦労もここまでだけど。
俺はボス戦への扉を開き、ボスと対峙した。ボスはすぐには攻撃を仕掛けては来ない為、落ち着いて詠唱を進める。
ボスの威嚇モーションが終わると同時俺の詠唱は終わった。
ボスは口に炎を溜め、俺を倒そうとする。だが、
「残念だったな。俺にはこいつが居る。さあ、いでよ!『ヲブラス』!」
詠唱を完了し、自分の目の前にでてきたのは…
【只今選択されたモンスターはお昼寝中で仕事をしたくないため召喚されません】という表記だった。
「…………え?」
俺は驚きを隠せないまま、ボスの豪炎に呑みこまれた。