赤ずきんside 予告編
私の中にある最後の〝家族との思い出〟は森だった。
お母さんは冷酷で冷たかった。
お父さんは仕事で家にあまり居なかった。
物心ついた時には、もう2人を家族とは思ってなかった。
私にとっての唯一の〝家族〟は山に住むおばあちゃんだけだった。
おばあちゃんの家に遊びに行くと、おばあちゃんは私をいつも優しく迎え入れてくれた。
いつしか私は、この山の頂上にある〝本当の家族の家〟に住むようになっていた。
───キャァァァァァァァァア!!!───
今でも目を閉じれば、まるで昨日の事のように鮮明に思い出すことが出来る。
突如森中に響き渡った劈くような叫び声
見慣れた道を走り抜け、家に着いた時に漂った異臭
扉を開けた時────目の前に広がる
鮮やかな紅、朱、赤……
どーしてっ……
泣き叫ぶ幼き頃の私
私に気づき、急いで家から飛び出した〝黒い影〟
ガルルゥ…………
気づけば心地よい夜風に吹かれ感傷に浸っていた。
山の麓にある廃屋のベランダの縁に座り月を眺めていると、数匹の狼の群れが近付いてきた。
普通の人間ならきっと恐ろしくて逃げ出すだろう。だけど私はそのままその群れを黙って睨み付けた。
「…………計画を、ついに実行する時が来たわ」
狼達の目が鋭くなった。
私は立ち上がり狼達を見下ろした。
「これは復讐よ。絶対に失敗してはいけない……皆、今まで協力してくれてありがとう」
1匹1匹の瞳を見回しお礼を言った。
「……おばあちゃんが殺された日、帰る場所が無かった私を拾ってくれて……本当にありがとう。こんな私の我が儘を、最後まで聞いてくれてありがとう」
そう。もう準備は出来た。
憎き狼人間を殺す復讐劇────