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If The World  作者: リコ
1/7

Please don't ever forget me.

顔はいつも能面。


楽しい、悲しい、嬉しい、怒る、、、


ここには感情が無かった。





笑顔、涙、怒り……その全てを教えてくれたのは他でもない貴方でした。


初めて出逢った時がまるで昨日のように感じるの。


貴方と出逢って私の全てが変わりました。


とある事情によって竹から生まれ落ちた私。最初に見たものは私を見て腰を抜かした老人だった。

それから私は老人夫婦に育てられた。



月日が流れ、私は大人になった。

町へ行けば見た目しか見てくれない盲目な人達ばかりで、本当の自分を見てくれなくて悲しかった。



貴方と出逢って私の全てが変わりました。

だけどこの時はまだ出逢ってなかったね。


遂に盲目な人達が私の家にまでやってきた。

私はただ試したかった。恋を、愛を知りたかったから。


私は、盲目な人達に無理難題を押し付けた。

この地球に住まう全てのモノが見たこともない物を持ってきて欲しいと……



貴方と出逢って私の全ては変われました。


もっともっと早く出逢いたかったよ。





夜空を見上げれば大きな大きな月

遠く遠くから聞こえてくる声



あぁ……もう時間が無い








私は愛を知らなければならなかった。


愛されなければいけなかった。


だってその為に地球(ここ)に来たのだから。


月の皆は能面で感情も無くタダタダ無だった。


私は皆と少し変わっていたらしい。


(そこ)には無い愛を求め続けていた。


月から見下げる地球はとても魅力的だった。


愛で笑い、嬉しくなり、泣き、妬き、傷つき、幸せになり……


ずっとそんな人間に憧れていた。


だから私は《大罪》を犯した。


月で最も罪深い事をした。






私の元へ貴方はやってきた。


貴方も最初は私に沢山の愛を囁いてきた。

無理難題なモノを頼めば


“貴女は本当にソレを望んでいない”


と言われた。


この人だと、直感が思った。


それからその人とは文通をするようになった。文字一つ一つが愛おしくてたまらなかった。


なのに…………遅かった。愛を知るのが遅過ぎた。約束の刻は来てしまった。


月夜、迎えが来てしまった。

貴方は私を力強く抱きしめ泣いていましたね。


私を育ててくれた家族も立ち向かおうとしてくれて…………



『嬉しかった』



『行かないでくれ』



『楽しかった』



『待ってくれ』



『幸せだった』



『……ッ!!』



『さようなら』



私は貴方の腕を解き迎えの者達の元へ行く。

相変わらず皆、能面で不気味だった。


全てを忘れる羽衣と不死の薬を手渡され…………






私は12一重の中に隠してあった布切りバサミで自分の喉元を切りその場に倒れ込んだ。


意識がどんどん遠くなっていく。


目の前で切ったのに相変わらず彼らは能面だった。


フワりと身体が軽くなった。


貴方は優しい涙を流しながらまた抱きしめてくれた。



『ありがと……愛してた』



やっと手にした愛を手放すくらいならこうなる方がマシだった。貴方の腕で死ねるのならとてもとても幸せな事だった。貴方の目からは涙が止まることもなく流れ続けてた。


もしも2人が出逢う事が早かったのならばもっともっと早く愛に気づけていればずっとずっと此処にいられたのに。



『愛を知れば人は堕天する。月から島流しされたならさらに堕天すれば迎えは来ない。私は愛を知らずのままだったから迎えが来てしまった』


あの書物は嘘だったのかしら?アレを書いたのは誰だったの。所々の文字が涙で滲み最後に書いてあった名前は確か……



あれから月日は刻刻と流れて今日も貴方は私の前で涙を流す。


あの日のあの夜私を抱きしめ土に優しく優しく埋めてくれた。


そこから1本の竹が生えてきた。貴方は今日もソレを大切に育ててくれている──


2人の距離はもう埋まらないけれど


傍でいつでも見守ってるから


貴方は私を忘れないで─────


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