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準備

 サーシャの肉体が定着したので、俺達は宿屋を探すことにした。

 お金の方は父から貰っているので、三泊くらいは余裕で持つだろう。

 だが三泊しか持たないので稼がないとな。


「マスター。この宿屋が良いと思います」

「ここ?」

「はい」


 サーシャの先導の元、やって来たのは一軒の宿屋。


「黄昏の稲穂亭か。じゃあ、ここにするか」

「わかりました」

「ノワールはちょっと外で待っててくれ」

「ウォン」


 ノワールの返事を聞き、俺達は黄昏の稲穂亭の扉を開き中へと入る。

 一階は食事処なのかテーブルが並べられていた。


「いらっしゃいませ。泊まりですか?」


 カウンターまで行くと、そこにいた若い女性が話しかけてきた。


「泊まりです」

「何泊ですか?」

「三泊でお願いします」

「三泊ですね? お食事は別で、お一人様9000ゴルドになりますが大丈夫でしょうか?」


 ゴルドとはこちらでのお金の単位である。

 価値は1ゴルドが1円と同価値だ。

 なので一泊3000円である。

 安いな。


「食事を入れるといくらになります?」

「うちでは朝食と夕食の二食で600ゴルドでご提供させていただいております」


 三泊食事込みで1万2600ゴルドか。

 日本からしたら破格だな。

 まあ、安さ的には他の異世界も同じだった。

 日本に近い、または日本より進んでる文明の世界は宿代も高かったけどね。

 ここみたいにファンタジー色の強い世界だと大抵この位の値段だった…かな?

 かなり昔の事だから記憶が曖昧だ。


「すみません、もう一つ。従魔もいるんですけど、大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。獣舎は三泊で1000ゴルド、従魔のお食事代は従魔の食欲によって変わってきますがよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「わかりました。ではお二人様と一匹三泊食事付きで1万5600ゴルドになります」

「はい」


 俺は予め出しておいた金袋から、金貨一枚、銀貨五枚、銅貨六枚を取り出して渡す。


「丁度ですね。お部屋はどうしますか?」

「どうする?」


 サーシャに聞く。


「同室で大丈夫ですよ」

「わかった。同室でお願いします」

「同室ですね。こちらが部屋の鍵です。従魔はどちらにいますか?」

「外にいます」


 鍵を受け取りノワールの場所を伝える。


「わかりました。一緒に来てもらえると助かります」

「わかりました」

「ありがとうございます」


 従業員の女性について行き、ノワールの元へ。

 ノワールは出入り口横で寛いでおり、通行人を眺めていたが、俺達が出てくると立ち上がり、尻尾を振りながら近寄って来た。

 こいつ可愛いな。


「ダークウォルフですか? 私初めて見ました!」

「珍しいんですか?」

「ええ、この辺では森の奥の方に行かないと会えないんですよ。しかも一匹でBランク、群れるとSランクにも匹敵するって聞いてます。よくテイム出来ましたね」

「コイツはぐれ狼だったらしくて、妙に懐っこかったので試しにテイムしたんです」


 ホントは無理矢理主従関係結ばれたんだけどな。

【彼曰く肉のお礼だそうですよ】

 マジかよ。って言うか肉体を持ってもその会話方法出来るんだな。

【私はマスターのスキルですから楽勝です】

 そうか。


「可愛いなー」


 従業員の女性は屈んでノワールの頭を撫でている。


「そろそろ獣舎に連れて行ってもらえると……」

「あ、すみません! こちらです」


 慌てて立ち上がった女性は恥ずかしかったのか、少し顔を赤らめつつ俺達を獣舎のある宿の裏へ連れて行ってくれた。

 裏は割と広いスペースがあり、獣舎もそれなりに大きいい。

 獣舎の中は馬しかおらず、他の魔物は一匹もいなかった。

 こうやって見ると、魔物をテイムしている人は割と少ないのかもしれない。


「あなたの寝床はここよ」

「ウォン」

「人の言葉がわかるの?」


 女性はノワールが肯定したように吠えたのに驚いたのか、ノワールの聞く。


「ウォン」


 ノワールはその問いに一鳴きして答える。


「賢いのね。この子の名前を教えていただいても?」

「ノワールです」

「ノワールちゃんか。しばらくよろしくね?」

「ウォン」


 ノワールは女性に撫でられ、嬉しそうに尻尾を振り一鳴きした。


「では、俺達は部屋に行きますね」

「はい、わかりました」

「良い子にしてろよ? ノワール」

「ウォン!」


 言われなくとも! と言った感じで吠えるノワール。

 その一吠えを聞いて安心したので部屋へ向かった。



 部屋は二人泊まるには丁度いい広さで、ベッドは二つ、机が一つだけあった。


「今日からしばらくこの部屋に寝泊まりするわけだが、ホントに俺と同室でよかったのか?」

「よかったも何も、マスターと同室以外ありえませんよ」

「そ、そうか。ならいいだが……」


 これで嫌々ながらもとか言われたらどうしよう。と思ったが、杞憂に終わってよかった。

 俺はベッドに座り、サーシャにもう一つのベッドに座るようにすすめる。


「午後からだが、サーシャのギルド登録を済ませた後、早速依頼を受けてみようと思う。異論は?」

「ありません。ただ、服がこれしか無いので少し買っておきたいです」

「そうか。そう言えばその服しかなかったな。ふむ、まずは服を買いに行こうか。その格好で依頼に行くのは危ないしな」


 ワンピースだけじゃ防御力的に不安しかない。


「肉体的防御力ならマスター並みにありますけど……」

「その上から防具は付けたくないだろう?」

「そうですね。ではお言葉に甘えさせていただきます」

「よし。じゃあ、買いに行くか」

「はい!」


 その後、街へ出てサーシャの為に動きやすい服と私服を買い、防具屋で、身軽な装備を一式買い揃えた。

 買い揃った所で丁度昼を過ぎたので、さっそくギルドへ行き、依頼を受けることにした。

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