戦の臭い
勇者カイトを父に任せて二週間が経った。
その日は街中がざわざわと騒がしくなっていた。
理由は山向こうにあるクルーシム帝国が戦争を仕掛けてくるかもしれないと公表されたため。
まだ可能性があるだけなのに公表していいものなのか?
変に混乱を生むだけだろうに。
ちょいと情報を集めてみた所、戦争の情報元はクルーシム帝国に送り込まれた密偵からの連絡らしい。
まあそうだろうな。
何やら帝国内で徴兵を始め、冒険者にも話を持ちかけているらしい。
戦争の理由として思いつくのが、俺達王国側が海に面している部分だろうか?
山向こうであるクルーシム帝国では基本調味料である塩の値段が高いだろうしな。
それしか思いつかないわ。
まあいいや。
そのうち日時とかも流れてくるだろ。
◇◆◇◆◇◆◇
次の日、俺達は依頼で王国、帝国間の山へ来ていた。
依頼内容はクイーンスパイダーの討伐。
この山の中腹付近にある洞窟にクイーンスパイダーの巣が発見され、俺達が調査及び討伐を行う事になったのだ。
報酬も結構な額なので喜んで受けさせてもらった。
ノワールには先に斥候として洞窟へ行ってもらっている。
俺達が洞窟の前まで来ると、ノワールが丁度出てくるところだった。
「どうだった?」
『確かに巣はあったが何かに襲われた後だった』
「へぇ…」
『焼かれた痕跡があった。襲ったのは恐らく人間だろう』
「……帝国側の冒険者か?」
「その可能性が高いでしょうね」
『ああ。この洞窟は向こう側にも通じている。恐らく帝国の人間が先に倒したのだろう』
「そうか。ありがとう」
『肉』
「ほれ」
向こう側に通じていて、クイーンの退治を行ったって事は戦争の時にここを使ってきそうだな。
そう考えていると、肉を貪っていたノワールが耳をピクピクさせ洞窟の方へ顔を向けた。
「どうした?」
『人間が来る。人数は4、5人だ』
「わかった。隠れるぞ」
俺達は木へ登り身を隠す。
もちろん食いかけの肉の処理も忘れない。
身を隠した所で丁度よくノワールの言う人間4、5人が出て来た。
そいつらは全員軽装備で、見た目の職業からして盗賊だろうか?
だが、装備はそこらの盗賊が着ている様なあり合わせの物ではなく、セット装備だ。
「帝国人か」
「はい」
そいつらは辺りを見回した後、王都がある方へと走り出した。
「サーシャマークしといてくれ」
「わかりました」
スキルとしてのサーシャの機能の一つマーキング。
敵や味方、何かしらに付けることによっていつでもいる場所を把握出来る機能だ。
「依頼は失敗だ。一旦戻ろう」
「ええ」
『食事の邪魔をしやがって』
王都へ帰り、ギルドへ失敗の報告をした後フィサリスさんに帝国人の事を伝えた。
「こちらへ斥候を送って来たのね」
「ええ」
「わかったわ。情報をありがとう。アルヴァ君達はそいつらの居場所ってわかる?」
「ええ、ノワールに頼んで見張って貰ってます」
正確にはノワールの仲間達だがな。
肉を報酬に頼んだら喜んで引き受けてくれた。
さすがノワールの仲間達。食いしん坊だ。
「なら、貴方達にはその人たちの監視をして貰いたいのだけど、いいかしら?」
「報酬次第ですね」
「良い額出すわよ」
「喜んで」
「お願いね」
「ええ」
これでクイーン討伐の報酬分は取り戻せるだろう。
お金大事。
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