勇者との邂逅
Aランクになってから一週間経ったある日。
ギルドはざわざわと騒がしくなっていた。
のんびりテーブルで昼食を食べながら話に耳を傾ける。
「勇者が召喚されたらしいぞ」
「勇者ねぇ」
「しかもこの国では三人だったらしい」
「は? 伝承通りなら一人の筈だろ?」
「ああ、お偉いさん方も驚いていたらしいぜ」
「ほう」
「その内このギルドに来るんじゃねーか?」
「うわ。長期依頼にでも行くかな」
「俺も付いてくわ」
ついに勇者が召喚されたらしい。
となると他の三国でも召喚されたのか。
そう考えていると、ギルドの扉が開かれる。
入って来たのは男一人に女二人。
男は黒髪で整った顔をしており女性にモテそうだ。
女二人の内一人は男と同じく黒髪で美人だ。
この二人が三人いる勇者の内、二人なのだろう。
もう一人いる女性は金髪の綺麗な髪をしており、服装も冒険者ギルドには似合わないドレス姿だ。
うん、あれは王女さんだな。
母親によく似てる。
「ここがギルドです。あちらのカウンターで登録が出来ますよ」
ニコニコと勇者二人に教える王女さん。
その笑顔は心から笑っているようには見えない。
あれだ。営業スマイル。
表面上でしか笑顔を見せてない。
「ありがとうリリーナ!」
「いえいえ」
そんな営業スマイルに気が付いていない爽やか系男子の彼はニコッと笑ってお礼を言う。
それを見たもう一人の勇者である彼女は王女さんを睨む。
なんか面白いメンツだな。
王女さんを置いて二人はカウンターへ登録するために向かう。
一人になった王女さんは今まで張り付けていた笑顔を解き、ふぅ…っと息を吐いた。
「王女と言う立場も大変そうですね」
「大変そうじゃない。大変なんだよ」
「経験者は語る。ですね」
「ああ」
王女って我が儘出来るイメージだけど、そうじゃない。
親が親だから言う事は絶対みたいな所あるし、ほとんど自由なんてないんだよね。
彼女も王にギルドへお連れするように言われたんだろうね。
だから一息吐いたのだろうよ。
そんな彼女に近寄る酔っぱらいの三人。
「よう嬢ちゃん。アンタみたいなお貴族様が来るところじゃねーぞー。ケケッ」
「ヒヒッ、俺達と遊ばねー?」
「可愛いねぇ」
そんな事を言う三人に対し、彼女は困った表情になる。
勇者たちはそれに気が付いていない。
ん? いや、女の方は気が付いてるな。でも助ける気はないらしい。
仕方なく俺は立ち上がり、助けることに。
【自分から面倒ごとに突っ込むんですね】
本来勇者の仕事なんだがなぁ。
【マスターは元勇者ですから】
ニッコリやめろ。
王女さんに向けて伸ばされた手を掴んで止める。
「相手を考えて行動しろよ」
「あぁッ?」
ドスを利かせてくる酔っ払い。
掴んだ腕に対し握る力を強くしていく。
「いでででででっ!」
最初酔いで痛みを感じなかったらしいが、更に強くすると彼は顔を歪めて声を発する。
痛みで酔いが醒めたのか、彼を俺の顔を見ると自身の顔を青くする。
「あ、アルヴァ……!?」
「酔いは醒めたか?」
「あ、ああ」
「なら彼女の顔を見て見ろ」
「……王女様……」
王女さんの顔を見て更に顔を青くする酔っ払い。
「粗相をする前に止めてやった事に感謝してくれよな」
「す、すみませんでしたっ!!」
酔っ払いは勢いよく王女さんに頭を下げると、仲間である二人を引きずりながら慌てて出て行った。
「…ありがとうございます。助かりました」
ホッと息を吐きニコッと笑顔を向けてくる王女さん。
気が抜けたのかその笑顔を自然に見えた。
「いえいえ。でも、気を付けてくださいね? 冒険者ギルドは安全な所ではないので」
「ええ、身に染みて感じました」
苦笑いする王女さん。
「リリーナに何をしてるんだ!」
そこへ遅れて登場勇者様。
彼は俺の肩を掴んで無理矢理彼の方へ向かされた。
後ろからは王女さんのため息が聞こえる。
苦労してますね。
思わず心の中で苦笑い。
「何もしてませんけど?」
「嘘だっ!」
なんだコイツ。
「失礼しますね」
彼の手を払い除け、サーシャが待っているテーブルへと戻った。
「大丈夫リリーナ!? 何もされてない?」
後ろから王女さんを心配する声が聞こえる。
「はあ……。大丈夫ですよ」
見ると、小さくため息を吐いた後、ニッコリ笑顔を張り付けた王女さんが返答するところだった。
「なるほど、思い込みの激しいウザい子なのね」
「これは…目を付けられましたね。睨んでますよ?」
そう言うサーシャ。
もう一度彼らの方を見ると、勇者君がこちらを睨んでいた。
ちょっとイラッとしたので殺気を飛ばし返しといた。
すると、彼は身震いして顔を青くして、王女さん達を連れて出ていった。
うむ! すっきりだ!
お読みいただきありがとうございます。
この勇者は嫌いです(*´ω`*)




