Cランク VS Fランク
訓練場に移動した俺達は、お互い向き合う形で対峙する。
酒場にたむろっていた奴らは面白そうだ。とか言って観客として付いて来た。
サーシャは決闘には参加しないため、戦闘に巻き込まれないように後ろへ下がっている。
「おい、あのFランク武器持ってないぞ?」
「だな。素手か?」
「いや、魔法使いかもしれん」
「魔法使いでも発動媒体である杖位はもってるだろ。それも持ってないってことは素手だ」
「あの大斧使いのデリィズ相手に素手か。これは勝負は決まってるようなもんだな」
「ああ、あんな華奢な身体から出る攻撃なんかじゃデリィズには勝てないだろうよ」
なんか外野がうるさいな。
武器買ってくるの忘れただけなのに。
「これよりCランクのデリィズとFランクのアルヴァの決闘を始める。今回は実力を示すための決闘のため、相手の命を絶つことは禁じます。いいですね?」
「おう!」
「ああ」
審判であるエルフの女性の言葉に頷く。
本来の決闘ならばどちらかの命が絶えるまで戦うのだが、今回は実力を示すための決闘。
実際の決闘だったらお互い欲しい物を要求し、勝ったら相手からそれを奪う事が出来るのだが、今回は言わば模擬決闘とも言える物なので何かを掛けることも禁止されている。
これだったら決闘形式じゃなくても良い気がするが細かいことは置いておこう。
さて、ルールの確認と行こう。
相手の命を奪う行為は禁止。
武器、魔法は好きに使って良い。
この二つを守り、神聖なる決闘の名の下、お互い正々堂々全力を尽くして戦う事。
こんな感じ。
エルフの女性が言った事をそのまま引用しました。
「では、始めっ!」
開始の合図を聞き、俺は動かず相手を見据える。
相手であるデリィズとやらは己の武器である大斧を担ぎ、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「どうした? かかってこないのか?」
笑みを浮かべたままそう言い放つデリィズとやら。
「どうぞお先に」
ニコッと笑いながら言う。
「譲ったこと、後悔するなよ? ウォオオオオオオオオオオッ!!」
デリィズは雄叫びを上げながら突進してくる。
一応Cランクなだけあって、そこそこ速い。
そのため空いていた距離はすぐに縮まり、デリィズは斧を振り下ろしてきた。
俺は避けることはせずに、訓練場の地面を使い魔法を行使して壁を作って防御する。
「なっ!?」
壁の向こう側からデリィズが漏らしたであろう驚きの混じった声が聞こえる。
驚いたのはデリィズだけではなかったようで、俺の行動に外野がざわざわ騒ぎだしていた。
耳を澄まして聞いてみると、どうやら魔法名を言わずに発動させたことに対して驚いていたようだ。
この世界ではイメージが出来れば発動させることが出来るのだから、魔法名無しでも簡単なはずなんだけどなぁ。
と、そんな事を考えていると、デリィズが壁を飛び越え上から攻撃してきた。
それをバックステップで躱す。
「まさか魔法使いだったとはな。だが、魔法使いは近接攻撃に対して弱いっていうのは常識だぜ?」
「まあ、確かにな」
魔法使いは近接特化の相手に対し不利なのは確かだ。
詠唱がないが魔法名が言えないほどの猛攻を繰り出せば、体力の無い魔法使いはすぐにへばり倒すことが可能だ。
まあ、それも基本的な魔法使いならの話。
「でも、知ってるか? 凄腕の魔法使い達の戦い方を」
「圧倒的威力の魔法で相手を蹂躙するんだろ? だが、近寄られたら自分にも被害が出るからそれが出来ねえんだよッ!!」
コイツめっちゃ体力あるな。
こうしている間も大斧を振り回しまくってる。
「それも正しいけど違う。凄腕の魔法使い達はな、皆同様に物理攻撃で相手をねじ伏せるようになるんだ」
「はぁ? 何言ってやがるッ!!」
俺の話にデリィズは呆れた様な目で俺を見る。
話が聞こえていた外野も同様だ。
俺は証明するために避けるのをやめ、振り下ろされた斧を片手で受け止める。
「なッ!?」
その光景に驚くデリィズ。
俺は斧を掴んでいる指先に力を入れて斧を砕く。
「「「「ハァッ!?」」」」
更に驚くデリィズと外野。
目が飛び出るんじゃないかって位目を見開いている。
「な?」
「「「「「いやいやいや!! な? じゃねーよ!!!」」」」」
おお、息ぴったりだな。
因みにこの話のソースは俺。
俺自身もそうだが、今まで会って来た凄腕の魔法使いや魔術師たちは、皆一様に物理攻撃が得意だったんだよ。もちろん魔法を使ったら使ったで蹂躙しまくってたけどさ。
でも、魔法使いや魔術師の後に(物理)が付いている様な奴らだったのは確かだ。
もしかしたら、魔を極めた人たちは皆脳筋なのかもしれない。
「で? まだやる?」
未だ開いた口が塞がらないデリィズに言う。
「……降参だ」
彼はハッとしたあと降参してくれた。
「勝者アルヴァ!」
「「「「「お、おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」
完成の上がる訓練場内。
正直うるさいです。はい。
「アルヴァ君、私の部屋に来てちょうだい」
「あ、はい」
呆然と立ち尽くすデリィズを放置して、未だにうるさい訓練場を後にした。
サーシャは決闘が始まる前は、外野の言葉にムスッとしていたが、今はニコニコと笑顔を浮かべ俺の横を歩いている。
なんで笑顔なのか聞くと、俺の実力が認められたことが嬉しいらしい。
でも、物理魔法使い達の話は「偏見です」の一言でねじ伏せられてしまった。
俺の知り合い達がおかしいのだろうか?
魔法使い(物理)ことアルヴァ君です。
魔法戦士みたいなもんですけどね。




