六 やなぎ寿司の折り
しばらくするとやくざ風のおじさんが入ってきた。
「ぼく、おとなしいな。お父さんと一緒でいいね。お母さんは?」
「ごらんの通り、子連れ狼です。」
「えぇ・・・、どうしたの?」
「しんじゃったんだよ、なあ。」
適当なこというな。
「ちょっと待ってろな。」
やくざのおじさんが格子戸をがらっと開けて出ていった。
どうしたのかな。
「で、さっきの話の続きだが、最初が肝心なんだ。」
「さいしょ。」
「そう、先ずその村で二番目に大きな家を見つけて売り込むのさ。」
「それからどうするの。」
「一番大きな家に行って、あの家が買ったといえばいい。」
「それで売れるの。」
「そういうものなんだ、あとは順番に回れば村中に売れる。どこの村も一緒だった。あ、お愛想。」
「まいどー。」
ガラッ。
格子戸が開くと上気したおじさんが戻ってきた。やなぎ寿司の折りをふたつさげて。
「坊、おじさんが寿司買って来たよう、今日はこれを喰って元気だしな。」
「おじさん、ありがとう。」
「これはすみません、お言葉に甘えます、それじゃどうも。」
ガラガラッ。
嘘つきは泥棒の始まりだけど、よく考えてみても誰も悪くないし自然で愉快な流れだと思った。