五 はつつき
「しゃい。」
「糠漬けと、茗荷の千切り。」
「それと、キリンの大瓶、グラスは二つで。」
「お前は何か、いるか?」
「さかなと、豆腐、、、。」
「あと、干鱈と奴二つ。」
どうみても小学生の夕飯じゃないな。
ザルに山盛りの取り放題キャベツをウスターソースにつけて食べる。
ソースはガラス瓶に犬の絵のラベル、どこへいくのかぶるどっく。
「こんばんは、とよさん。会いたかった、ケイコが教えてくれたから、お店抜けて来ちゃった。あ、グラス頂戴。」
青いドレスに人民服みたいな工員用のジャンバーを羽織ったひとだった。
「太郎君ね、ケイコの母です、よろしくね。」
「こんばんは。」
「お父さんに似て鼻筋が通っていてハンサムねー。」
指先で鼻筋を触った、化粧の匂いがした。
「おばさんも美人だね。」
「あらやだ、おばさんだってさ。私も、とよさんの子供が欲しいなー。」
おばさんは酌をしながら片手をあの人の足に置いている。
「ずっと、預かってもらっていたけど、一緒に住むことにした。」
「住むなんて、すぐいなくなるくせに、、、どこにいたのよ。」
「どさまわりさ。」
「あとで、お店に寄ってね。」
そう囁くと、おばさんがあの人の耳たぶに噛みついていたのでびっくりした。
「じゃ、戻るからね、待っているから。」
「ああ。」