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四 国分寺銀座
よみがえるまちの記憶、第4話は国分寺銀座です。
傾いた街灯には「国分寺銀座」と書かれていた。
モノクロームなたそがれに滲じんで灯る白い光。
名ばかりの百貨店の向かいあたりに小さな女の子が立っていた。
学年はひとつ上くらいだったが見覚えはなかった。
キャバレーのネオンサインのブルーが人待ち顔の大きな瞳に映っていた。白いつば広の帽子と頬も照らされて紫陽花が咲いているようだった。
「ケイちゃん、どうした、お母さんを待っているのか?」とあのひとが声をかけると婦人用の傘を差し出してこくりとうなずいた。
「おう、偉いなぁ、じゃあな。」
ケイちゃんの顔の向きが少しずれたら目の横に緑色したあざが浮かび上がった。
彼女も自分と同じ境遇なのだと思うと少し息苦しくなった。
「あの子のお母さんは、お天道様を信じちゃいないんだ。」とあのひとがいった。
じゃぁ、夜に働いているひとの味方はお月様か。
ふと、販売機があって、雨避けのカバーには「夜でも起きています、たばこ自動販売機」と書かれていた。
夜でも起きているのは本当に大変だ。