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Lip's Red - 姫様と緋色の守護者  作者: kouzi3
第3章 鍵と混沌と無の因子
25/39

(24) 変態

・・・



 「なんとマモル君は、変態しました!」




 「何いきなり人聞きの悪いこといってんだよ?このクソ親父!」


 親父の突然の宣言に、5秒ほど俺を含む全員が沈黙し…そして…俺を除く全員が俺を見つめる。可能なら、俺も俺を見つめているところだ。ちくちく刺さる視線に耐えきれなくなり、俺は親父にくってかかった。


 「確かに…人間のくせに布団に恋愛感情を抱いたり、女性の匂いに異常な関心を寄せる匂いフェチではあるようですが…」


 えっと…姫様まで、なんということを…というか、なぜ俺の布団ちゃんへの思慕の情までご存知で?…あぁ…ひょっとして、俺、心の中で思っていただけのつもりが…口に出してしゃべってたのか?


 「違うぞ?…俺が言ってんのは性的な偏向性を世俗的に表現した『変態』という名詞ではないからな?…変態的なコトをした…っていう表現は…父親としての情けでしなかった…わけじゃないぞ?」


 姫様から思わぬ指摘を受けて口をパクパクさせている俺を見て、親父があきれた顔で言葉を補った。


 それでもなお、額に「ハテナ」と表示されたような俺の表情に、やれやれ…といったあきれ顔で、親父は、さらに説明を続ける。

 

 「俺が言ったのは『変態した』っていう動詞だったろうがよ?…あくまでも生物学的な見地からの発言だぞ。…例えば、動物だったら幼生から成体になる過程で大きく形態を変える…そうだなオタマジャクシと蛙だとか…芋虫→蛹→蝶みたいなやつな。それから植物の場合だと、根っこだとか葉っぱだとかが、その種が持つ本来の形から変形して、著しく異なる形態になったりとか…そういうのを『変態』っていうんだよ。


 親父の分かりやすそうで、その実、意味のよく分からない説明に、ナヴィン爺さんだけが、「うんうん、なるほど!」と頷いている。…ホントに分かったのかよ?


 「まぁ…いきなり、日常会話では絶対にあり得ないコトを言われたら理解できなくてもしゃぁないか。…っていうか、学術的にだって、ある人間に対して『変態したな君?』なんて会話はあり得ないよな。悪いわりぃ」


 …そう思うんだったら、最初っから変な表現使うなよ!絶対、わざと誤解するのを狙っていっただろう、このクソ親父。

 俺の視線による無言の抗議を意に介せずに、親父は3台の顕微鏡のそれぞれに手際よくプレパラートをセットし、てきぱきと全てのピントを調整しおえた。


 「ま。口だけで説明したって、俺にも説明しきれないコトがある。これを見せてやろう。…左からマモルの血液、俺の血液、老先生の血液だ」

 「へぇ…ナヴィン爺さんにも血が流れてるんだ!」

 「と、当然じゃろう!?人を何だと思っておるのじゃ?」

 「いや。あ、兄貴が…異世界人だってコトを心から認めるなら、異世界人は、こっちの人間とは体の造りからして別モンだって考える方が自然だし…真剣に考えてる真摯な態度だって…言うもんだから…その」


 俺のしどろもどろの言い訳を聞いて、親父が嬉しそうな顔をする。


 「ほう。あの明が、そういうことをお前にいったのか?…そりゃ、面白いねぇ。ま、確かに異世界っていう以上は、この世界とは違うことわりで成り立ってるってのが前提だよな。何にも違わないなら、異世界じゃなくて、きっと未開の土地かどっかの知られざる人々だわな」

 「えっと、じゃぁ姫様たちは異世界人じゃなくて、それってこと?」

 「あははは。お前、あっちの世界には、宇宙ってもんが存在しないって聞いたんじゃなかったのか?…それが嘘だって言うならアン・ノウンってことで笑い話で終了だが…そういう世界があるってのを信じるなら、宇宙に向かうと別の場所の湖に出るとかいう不思議世界を、異世界と言わずして何という?」

 「えーと…。でも、姫様たちと俺たちって、遺伝子レベルまで比べても、基本全く一緒なんでしょ?」

 「明の発想は、全くもって当然な思考だけれど、異世界人が俺たちと絶対に違う体の造りじゃないといけない…って決めつけるのだって、非科学的思考だと俺は思うぞ?…明だって、そう言ってなかったか?…俺たちと同じ体の造りだと無条件に信じるのは根拠がないって」

 「あーーーー。つまり…」

 「そう。要するに、異世界ってコトを認めた時点で、ある事柄について調べもせずに、こうだと決めつけることは無意味だって言ってるんだ。なら、どうすれば良いか?…だから、こうすれば良いのさ」


 そう言って、親父は俺の頭を両手で掴んで顕微鏡を除かせる。


 「科学的思考をするなら、予想をするなとは言わないが…結論を出すためには必ず、その事象を正しく観測し理解することだ。要は、調べてみれば良いってことだ。…見て見ろ」

 「…なんか、ウニョウニョしたのが動いてる」

 「だろ?…それが、お前の血液だ。よく見て覚えておけ。そうしたら、その隣の俺の血液を見て見ろ。…どうだ?」

 「同じ?…じゃないか…ウニョウニョ動くのが、あんまり居ない」

 「同じように、その隣。老先生の血を見て見ろ。…念を押しておくが、遺伝子レベルで違いがほとんど無いってことは、要は、その遺伝子の働きの結果であるところの体の造りも、基本的に違いが無いってことになるハズだ…ってことは想像がつくだろう?」

 「うん。…あ、ナヴィン爺さんのも、俺のと同じぐらいウニョウニョが居るね」


 俺は顕微鏡から目を離して考える。待てよ?…遺伝子レベルで違いがほとんど無い→体の造りも基本的に違いがないハズ→俺とナヴィン爺さんの血には違いがない→ところが親父の血液にはウニョウニョが少ない。


 「あ!…もしかして!」

 「…分かってくれたか。マモル」

 「お、親父は、遺伝子レベルから違いのある異世界人だったんだ!」


 「・・・・・」


 姫様とラサ、それにクアの3人が「なるほど…」と納得しそうになるぐらいには、俺のたどり着いた結論は間違ってないと思うんだけど…親父とナヴィン爺さんの二人は見事な雛壇ひなだん芸人バリのズッコケを見せた。


 「なぜ…そうなる。…うぅ…そうか、マモルのような結論も、この血液の比較と遺伝子の説明からだけだと、導きうるのか…」


 親父は困ったように頭をバリバリと左手でかきむしる。ナヴィン爺さんが親父に助け船を出した。


 「マモル殿。この観察装置が3台しかないので、そのような結論になるのも仕方ないんじゃが…。おそらく、こちらの世界の人間の血液は、伝次郎殿の血液と同じように見えるのが普通だという前提があったとしたら…どうじゃろう?そう考えたら、伝次郎殿の言いたいことも分かるのではないじゃろうか?」

 「そ、そうだ。老先生のおっしゃるとおり、疑うんなら、お前の指定するこっちの世界の人間…その誰の血液でも同じように見せてやるけど…俺の血は、至って普通。こっちの人間のスタンダードと言って間違いない」

 「えっと…じゃぁ…つまり…」


 親父はこちらの人間→ナヴィン爺さんは異世界の人間→俺の血液は親父よりナヴィン爺さんに近い…つまり


 「…え…ぇぇぇぇぇぇええええええええ?!」

 「ということで、『文字通り親子の縁が切れました』と言ったのさ」

 「そ…そ…そんな。俺がナヴィン爺さんの息子だったなんて!」



 「「…違ぁ~~~~う!」」



 元親父とナヴィン父さんの二人が見事なシンクロ叫びを披露する。

 親父は、俺の胸ぐらを掴んで俺の顔に自分の顔を超近づけて力強く大声で俺に言う。


 「お・ま・え・は…俺の・冒頭に・お・ま・え・が『変態した』んだ…っていう・俺の説明を・聞いていなかったのか?えぇ・おぃ!?」

 「く…苦しい…くるちぃ…く…」


 助けて…ま、マジで首がしまってるから…ギブ…ギブ…ギブアップ!


 姫様の目線による指示を受けて、ラサさんが親父を羽交い締めにし、クアが親父の手首のあたりのツボ?的なものを押して、親父を無力化する。おちる寸前で俺は危うく解放された。ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返して、徐々に息を取り戻す。…っていうか、クアってそういう技も使えるんだね。びっくり。


 「面倒臭ぇから、もう、ハッキリ言うぞ。マモル。お前は、こっちの人間から、異世界人と同じ体に『変態した』。要するに、お前の血液中にあるウニョウニョは、異世界人にだけ発現しているハズの…こっちの世界の人間にはない因子(ファラクル)の…その正体であるところの体内組織だってことだ!」


 聞こえない、聞こえない…きこえない


 「血液だけじゃねぇぞ。面倒臭ぇから出さないけどよ…お前の血液以外の体液中にも、ちゃっかりしっかり因子組織はウジャウジャ蠢いてるってコトだ」


 ナニを親父どのは言ってるのでしょうか?俺には全く心当たりがありませんのでございますけれども…はい。

 それでも、俺は、恐るおそる聴いてみた。


 「親父…じゃぁ、小さい頃、よく、叱る時に言っていた『お前は橋の下の川岸から拾ってきた』ってのは…本当だったの?…俺、幼くして…異世界からこっちに飛ばされた、捨て子だったの?」

 「だ・か・ら!…お前は『変態した』…って部分から何故、目を背けるんだ!?このやろう!」


 親父が、再び俺の首根っこにチョーク攻撃を仕掛けようとする。




 「…だって。親父が…親子の縁が切れました…なんて…い…い…言うか…ら…」




 自分でも何がどう悲しいのか分からないけど…声が震えるのを止められない。


 「僕…と、父さんの…お、親父の…俺、おれ…こ、こ、子どもだよね?ね?」



 親父は、チョーク攻撃に入る直前の手つきのまま、気まずそうな顔で固まった。

 姫様も、ラサさんも、いつもふざけた感じのクアも…何も言わない。

 ただ、皆、俺たち親子…元親子?…のやり取りを黙って見ている。

 ああ…なんだろう俺。この年齢になって、こんなことで、こんなに動揺するなんて自分でも思っても見なかった…。


 「伝次郎殿。こちらの世界でも優秀な研究者であられるのだとは思うのじゃが…伝次郎殿が言う生物学的な『変態』というと、今、マモル殿の体に起きたことは、ワシは違うのでは無いかと思うのじゃが…?…どちらかというと、『感染し…発病した』…という表現に近いのではないかと思うのじゃよ。ワシは」


 ナヴィン爺さんが、俺の動揺ぶりを気の毒に思ってくれたのか、よく分からないけれど、助け船?的な発言をしてくれたみたいだ。意味は今度も良くわからないんだけど。


 「…ちっ。悪かった。ちょっと、格好つけてセリフを決めてみたかっただけだよ。親子の縁なんてものは、肉体的なモンだけじゃない。仮に、お前が捨て子だろうと、この年齢まで育てたのは間違いなく俺だからな。心の繋がりってやつが目に見えるんなら…お前と俺とは、まぁ…親子で間違いないんだろうさ」

 「…やっぱり捨て子だったの?」

 「だぁ・かぁ・らぁ…。『仮に』って付けただろうが。お前は間違いなく俺の子だよ。誰の子でも無い。間違いなく俺の子だ。俺、一人の子だ!」


 「・・・」


 「何だよ?まだ、なんか不満があるのか?」


 「・・・いや・・・親父一人の子って・・・俺、親父から生まれてきたの?そう言えば、母親は?」

 「そいつは、以前にも言ったが、しち面倒臭ぇから聴くな。俺にだって、触れられたくない過去がある」

 「親父だけの過去じゃないじゃん。俺の過去でもあるじゃん」

 「説明が複雑になるし、この検査室を使用できる時間にも制限があるから…勘弁してくれねぇかな?…今まで知らなくたって、明と男3人世帯で巧くやって来られたんだからよ。そこは、いいだろう?…それよりお前の体の話だ。お姫様たちが異世界に帰れるか否かって話の大事なポイントだからな?…お前、どっちの話を優先する?」


 俺は、読み取れないほど表情を消した姫様たちの顔を見た。そうか。そうだよな。全く異世界と関係のない、うちの家庭の複雑な事情を聴かせるためにここに連れてきたんじゃないよな。うん。わかった。俺は、親父に頷いた。


 「よし。イイ子だ。説明を続けよう。確かに、老先生の表現でも説明が付かないことはない。この顕微鏡で見た結果だけで判断するならな」

 「どういうこと?」

 「人間の体は…明は嫌がる表現になるが…遺伝子情報に従って細胞が様々な機能や形状に分化し、より大きな組織体としての個体を形成している。これは、分かるな?」

 「う…ん。何か聴いたことはある」

 「素直で助かる。…で、まぁ異論はあるヤツもいるかもしれないが、例えば、赤血球やら白血球、血小板…そういった、人間誰にでもあるような血液細胞も、まぁ遺伝子の設計図によって人それぞれに違いがある。それから、リンパ腺とか胸腺とかの免疫機能にかかわるところじゃあ、リンパ球とかT細胞とかもな。OK?」

 「OK」

 「よし。血液って言うと、一般人でも思い浮かぶもんとしてABO型の分類が有名だが…まぁ、それ以外にも色々血液型ってのはあって、厳密に言えば、一卵双生児でも無い限り一人ひとり違いがあったりな、こっちの人間だからといって全員全く同じ細胞を持っているっていうワケでも無いんだが…抗原の組み合わせやらなんたかんたらでな…そういう難しい話は、まぁ医者先生に任しといて…話を戻すと、基本的に血液って言えば、赤血球、白血球、血小板…そういう血液細胞が血漿の中で、それぞれの役割を持って機能しているっていうコトについては、誰しも共通してるって理解で間違いない。リンパ系についても、同じような理解をしてれていい。OK?」

 「OKだよ」

 「よし。じゃぁ説明を加速させるぞ。ところがだ。老先生の血液を始め、俺たち暴れん坊異世界人対策チームがご協力を願った…ぶっちゃけ無理矢理採取した異世界人の血液には、どう見ても、こっちの世界の人間には無い、赤血球でも白血球でも…それから血小板でもない、そういう細胞…細胞っぽいもの…が他にも何種類か含まれてるんだ。この種類や数は、異世界人でも1パターンというワケじゃなく、色々な種類があり、1つだけ余分なヤツから複数の余分なもんが含まれているヤツから、まぁ色々いるんだ」


 ナヴィン爺さんが、もの凄い食いつきようで、親父の話に聴き入っている。「なるほど、そうじゃったのか」とかなんとか、小声でブツブツ言いながら。


 「じゃぁ、赤血球、白血球、血小板以外の細胞が血液中に含まれてたら、即、そいつは異世界人か?…っていうと、それは、そんな単純な話じゃない」

 「ち、違うの?」

 「そ、違うの…例えばな、さっき老先生が言ったような、『感染し…発病した』状態とかな」

 「細菌に?とか?」

 「それだけじゃないが…そういう場合もあるかな。菌血症とか敗血症ってヤツだな。それから、ウィルスに感染したり色々な原因で血液が癌化して、本来とは違ったかたちになったり、その上、異常に増殖して悪さをしたりな。血液の癌とかいう状態だな。もっと単純な話、血液は体内の老廃物を腎臓を通して体外へ排出するっていう役割があるから、そういった老廃物が流れてるのは当然だし、注射器やら点滴やらで意図的に血管に異物を流し込むことでも、別モンが含まれた状態にはなるからな」

 「う。うん。わ、分かるよ」

 「もし、お前が敗血症やら血液癌だったら、今頃、そんな元気で間抜けな馬鹿アホづらを晒してはいられないから、そういう話じゃないってのは分かるよな?」

 「…なんとなく、とてもけなされた気がするけど…分かるよ」


 ナヴィン爺さんが親子のじゃれ合いに気をつかったのか、とても小さな声で「ワシが言ったのはそういうことではないんじゃが…」とつぶやいている。

 ちゃんと親父は、その声を聞き取っており…


 「まぁ、老先生が言ったのは、そういう病気っていう感じの意味じゃなく、まぁ、偶然なのか必然なのか、異世界人の持つのと同じ成分を増殖させる、基本無毒性のウィルスに感染して、お前の血液や体液中で、異世界人と同様の特徴を持った成分が見られるようになったのではないか?…っていうコトなんだけどな…」

 「うむ。そうじゃ。そのとおりじゃ」

 「だとするとですね、老先生。どうやってマモルにだけ感染したんでしょうかね?」

 「どうやって?」

 「飛沫核感染…いわゆる空気感染なら…世界中に広まりそうなもんで、こっちの世界の人間と、老先生たちの異世界人を見分ける指標にはなり得ないように思うんですよ。もっと直接的なハクションの飛沫感染だって…それから…食中毒なんかの介達感染や経口感染だとかもそうだけど…そういうのだとすると…マモルより、長期間、異世界からの乱暴者対策で、いろいろ口に出せないような行為を繰り返した俺や、俺のチームメンバーとかに、血液体液の異世界人化が起きてないってのが、説明が付かない」


 「ふむ」…とは、ナヴィン爺さん。


 そこで、しばらく大人しく黙っていたクアが口を挟む。


 「では、守護者様が入院中に輸血を受けた際に…というのはどうでしょう?」

 「ほう。眠そうな顔してると思ったが、ちゃんと話を聞いていたな。お嬢さん。マモルは、あんたたちの内の誰かから、血を貰ったのかい?」


 その問いには、姫様がおずおずと手を挙げる。「わ。私が…た、助けて貰ったから」と小さい声で答える。


 「ふむ。絶対にそれじゃ無い…とは言わないが…血液も色々といじらせてもらってるから、マモルだけが特別に血液感染するっていうことは、説明が難しいなぁ…。以前の調査では、輸血された血に含まれた異世界印の成分は…老廃物として認識されるらしくて輸血後1週間もしないうちにオシッコに混じって出ちゃってたっていう記録が残ってるしな…。他には、遺伝子治療なんかにも応用されてるベクター感染か?可能性としては、面白いんだが…やっぱりマモルだけってのがなぁ…」

 「し、知らなかったけど、感染経路って、種類が思いのほか多いんだね…」


 俺が、すらすらと難しいコトを解説していく親父に感心して感想を漏らすと、ニヤッと笑った親父が…俺と姫様…それから少し考えてからクアの方を見まわし頷いた。

 姫様から輸血を受けてたってのも初耳だけど…今は親父におこられそうだから聴かないことにしようっと…あと、クアが『オシッコ』って言葉を聞いた時に、俺の顔を見てニヤッとしたのも…何を思いだしてのことか…姫様には思い出して欲しくないから…黙っていよう。


 「まだあるぞ。お前が、お姫さんとそっちのお嬢さんのどっち狙いか知らねぇが…肌と肌…粘膜と粘膜を接触させるようなキモチイイことをしようとすりゃぁ…接触感染っていうかたちで感染することもあらぁな」


 ばっ…馬鹿野郎。このくそ親父。何てことを言いやがるんだ、また突然。

 姫様は真っ赤になって下を向くし、クアは面白そうに唇を舐めてるし…ラサさんは、苦虫を噛み潰してるし。そんなことはお構いなしに、親父は続ける。


 「ま。だがよ。昨日も話したとおり、こっちの人間のほとんどは、遺伝子的には異世界人と同様、いろんな因子の遺伝情報を引き継いでるっていうことは証明済みの事実で…ということは、過去から現在まで、異世界とこっちの男女が、あんなコトやそんなコトを色々やって、子々孫々に遺伝情報を残すような夜の歴史を重ねてきたワケだから…接触感染は起こり放題だったはずで、やっぱり多くの人間が感染してなきゃおかしいだろう?ってことになる。まぁ、つまりは母子感染ってのも、同じように可能性が少ない」

 「母子感染が無いなら、子々孫々への影響が遺伝情報だけというのも説明がつくのでは?」

 「いやぁ。子どもに接触しない親なんていねぇだろう?…まぁ最近じゃ、虫歯予防とかに神経質で、口移しで子どもにものを食べさせるとかを避ける親もいるらしいがよ。…でも、全員がそんなんじゃないしな。ある程度は、親子間の清らかなる接触感染だってあるだろうよ」


 そこで、親父は一旦、かなりの長さの間をとった。もったいぶるように。





 「…っていうことでよ。俺は『変態した』って表現を敢えて選んだのさ」




 それから、急に真顔になってこう質問を付け加えた。


 「あんたたち、俺の可愛いマモルに…マモルだけに…何か特別なことをしなかったか?…した心当たりがあるなら…どんなコトだったか教えてくれ」


・・・



 それ。俺も興味ある。


 俺と…親父は、異世界が出身地という姫様たちを、黙って見つめた。


・・・

※数少ない、私の作品の投稿を待って下さっている皆さんへ

 実は、一昨日から約1ヵ月間にわたって、日中の仕事の他に、夜も遅い時間まで別の仕事をしないといけない状況に置かれておりまして…ここまで、ほぼ毎日1話の投稿を頑張ってきましたが、それが、数日おきとか週1回とかになってしまいそうな状況になっています。できるだけ努力しますが…どうか見捨てないで、見守って下さると嬉しいです。頑張って描きますので。

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