表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/44

7話 ぞっこんラブ

私はこの世界の神様に感謝しています!

目の前には身悶えする程美しい女性が微笑んでおります!

陶器の様に白く小さな顔には丸くて大きな目が二つも埋まっています!

綺麗に真っ直ぐ伸びた鼻梁、その下には小さいけれど品の良い唇が添えられています!

プラチナブロンドのサラサラストレートヘアーを耳に掛けながら、翡翠色の瞳で見つめられれば、誰でも直ぐにイチコロです!

「余り、緊張なさらないでね」

嗚呼!小鳥の囀る様な可愛らしい声は耳に心地良いです!


ミリーに初めて会った時もお人形だと思っていたが、王妃様はそれ以上に美しすぎてこの世の物とは思えなかった。


初めはがちがちに緊張した私の為に、王妃様は美味しいお菓子やお茶と、楽しいお話で持て成してくれた。

揚々緊張も解れた頃に、待女服の話が持ち出され、私が説明し易いようにドレスの話へと移って行った。

持参して来たミリーのドレスと下着を手に、簡単なリメイク方法を話す頃には、王妃様お抱えのお針子さん達がテーブルの周りを取り囲んでいたのだった。


「そうよね。公務以外の普段の仕事や部屋で寛ぐ時なら、動きやすいドレスの方が良いに決まっているわ。何故今までこのように優れた物が考えられなかったのかしら」

「私も初めはコルセットが無い事に心許なく思っていたのですが、この下着とドレスを着用する様になってから、余り疲れを感じなくなりました」

「まあ、疲れを感じ無いのですか?私は執務が終われば食事よりも先にコルセットを外します。そうしなければ食事が喉を通らないのです」

「まあ、王妃様!それでは余りにお可哀想です。是非これを着用して見て下さいませ」

「ええ是非に!嗚呼!楽しみですわ!」


王妃様とミリーの会話を横で聞きながら、何だか大層な事になってしまったなと感じる自分を他所に、隣に座るルルは私達は凄い事をしたのですね、と顔を赤くして興奮していた。

(日本の常識、異世界の非常識、か)

今まで忙しさに忙殺されて、思い出さずにいた日本の生活が ふ と思い出された。

(ねーちゃんも自分で直して着てたっけ。胸デカイからな。何で?何で私は・・・)



しかし記憶の淵に落ちかけた時、ゴツゴツと重い足音が聞こえて来た。

「王妃殿、如何なされた」

少しかすれ気味の低い声。

「デュアリス、もうそんな時間ですか」

王妃様は眉を潜め残念そうにソファーからゆっくりと立ち上がった。




うっひょー!(目、目の前に、本物の騎士が居るー!)

待女服と同じ濃紺の立ち襟のシャツ、同じ色のズボン、足首より少し高めのエンジニアブーツにズボンの裾が無造作に突っ込まれている。

太ももが隠れる長さの上着は黒で、背中には同色の糸で十字架に何かの植物が絡まる刺繍が刺してある。

そして、左足の外側には銀色に光る太くて長い剣がぶら下がっていた。


(背、高いなぁ  肩幅も結構有るんだ  うっわ!何その反則的な足の長さっ)

騎士様が後ろを向いているのを良い事に、観察し放題である。



「すみません。公務で外出致します。また、是非にお会いしましょう」

私達に軽く頭を下げる王妃様は本当に残念そうだ。

私達もソファーから立ち上がり、深く礼をする。

「こちらこそ、大変楽しい席をご用意して頂き嬉しく思います。王妃様もご健勝で」

ミリーが感謝の言葉を述べると、ありがとうと言って部屋を出て行った。


騎士様はその会話を後ろから黙って見ていたが、王妃様が立ち去ると直ぐに数歩近くに寄って口を開いた。

「王太子妃殿、申し訳なかったな」

「いいえ。私も時間を忘れておりました」

「急に呼ばれたのだろう」

「何時もの事ですから」

そう言って、二人は苦笑いをしていた。


「では、また」

そう言って騎士様はミリーの前を通り過ぎ、ルルの前を通り過ぎ、そのまま私の前も通り過ぎると思って居たのだが、何故だか目の前に立って居る。

「元気になったな」

「?」

騎士様は少しだけ笑うと、その大きな手で二回、私の頭を叩いてそのまま部屋から出て行ったのである。


(・・・・・)←思考能力遮断中

珈琲ブラウン色の髪は肩に少し届く程度で軽くウエーブが掛っている。

イギリス系の彫の深い顔、きりりとした眉毛の下には何と!真っ青な瞳が輝いております!

高い鼻は鷲鼻で、大きな口の下は、な、何と大好きなケツ顎です!

厳つい系・ザ・俺に話し掛けるなよ & 黙って俺に付いて来い 系です!


(モロ好みど真ん中!MAXですっ!)←思考能力活性化中


「異世界バンザイ!頑張れ自分!」

王妃様の部屋からの帰り道、ミリーとルルの会話が全く耳に入らなかった自分はかなり浮かれていたと思う。大事な事を聞き逃していたのだから。


大事な事とは、あの騎士様デュアリスさんが指揮官様であると言う事だ。

怪我をした私をベッドまで運んだり、突然のテレポートで騎士隊のグラウンドで気絶した私をまたまたベッドまで運んで下さったと言う、あの指揮官様だったのである。

(だから元気になったな、なのね)

自分の頭に手をやり、数度撫でては頬を赤くしてみるが、残念な事にライバルはごまんと居るらしい。

その詳しい詳細を知ってもなお、指揮官様=中年の髭を生やしたおじ様を想像していた私は、その想像から脱出する事が中々出来なかったのである。



デュアリス・ワイルダー、12騎士隊を纏める総指揮官殿である。

若干58歳であるが、髪の色と瞳の色からも伺える程十分な魔力と十二分な頭脳を持って居るらしい。加えて訓練で培ったあの身体は鑑賞にも値すると言われている。(鑑賞したい!)

ワイルダー公爵家と言えば高貴な家柄で申し分なく、三代前の祖父は先代の王の宰相を務め、現当主は大法官、その第一子息は執務室の執務官、第二子息が総指揮官のデュアリス様、第一子女は現王妃のシルヴィアさんと、優れた家柄なのが十分に分かる。

シルヴィアさんは二番目のお子様で現在88歳だとか。



因みに、カークランド家も最近公爵に格上げになったばかりなのだとか。

それはミリーが王族に入った為で、王族の血縁の証と言う事で公爵になったそうだ。

今までは伯爵だったので結構のんびりと過ごしていたらしいが、公爵になった事で知名度が上がり、大層忙しくなったらしい。



さて話を戻して魔力の事だが、魔力が強い(大きい)程、長生きらしく現王は最近即位したばかりでまだ120歳位らしい。

先王は未だ健在で、200歳を期に引退して、先王妃(妻)と旅行に出たきり戻って来ていないと言う話である。

多分230歳位まで生きるのでは無いかと言われているらしい。


ミリーやルルの年齢を聞いた時は、日本って言うか地球年齢と同じだと思っていたのだが、オスカルやアルの年齢を聞いた時にはかなり驚いたのだ。よくよく聞いてみれば、魔力の強さによって寿命が長くなるのだとか。

(日本人の私は魔力が無いし、多分、日本人女性平均寿命の85歳位が妥当だろうな)



「次に会ったら、きちんとお礼を言わなきゃいけないわね」

「そうね。でも次って何時になるんだろうね?」

ルルと二人、少し遅くなった夕食を取りながら、食堂の隅でおしゃべりに花が咲いたのだった。ルルも王妃様に会ったのは初めてだったらしく、今もまだ興奮している。指揮官様には数度お会いしているらしく、やっぱりワイルダー家は美人揃いだねと、ガールズトークは止まる事を知らなかった。



自分の部屋に戻ったのは消灯時間も真近い10時頃。

それから急いでシャワーを浴びて(消灯時間までに使い終わる様に指示されている)、濡れた髪を乾かすのを後回しにしてバルコニーに出る。

城の中の明かりは「硝球」(ガラス)と呼ばれる手の平サイズの丸い透明な石から出来ている。

城の各部屋の天井にはその「硝球」が埋め込まれているのだ。

待女や厨房職、庭師や騎士の自室なら普通一個、客室や貴賓室、王族の私室は二個から三個、と言う風に部屋の広さや仕事の向きに合わせた数が埋め込まれているようだ。


この「硝球」は連座制が有るらしく、主電源に当たる神官室の「硝球」が点灯されると、全ての部屋の「硝球」が点灯されるのである。

一般庶民の私にしてみれば、使って無い部屋の明かりも点灯する事に酷くもったいないと言う気分になる。

しかし、元々使って無い部屋には埋め込まれていないし、電気で点灯している訳では無いので、もったいないも当てはまらない様である。


この消灯時間をバルコニーから眺めるのが最近の楽しみなのである。

電気をぽちっと消すように消えるのでは無く、蛍のお尻の光の様に淡く薄れて行く様は、何とも言えない神秘性が感じられる。


空に浮かぶお月様も、年中三日月で「神様の椅子」と言われている。

神様は三日月に腰掛けてそこから釣り糸を垂らして遊ぶという童話があると教えて貰った。此方の神様はとても身近なのだと思うと、凄く微笑ましいと思う。


その後にも明かりが必要な人は、自分の魔力で明かりを起こし、無い人は明かり取りの石を使って、仄かな光を灯すのだ。


そんな光景を眺めながら、唯一使う事の出来る魔法アプリ『風』を使って髪の毛を乾かしていた。当然ドライヤーなんて物が無いのだから、使える者は使わないと面倒なのである。肩より長くなった髪の毛はタオルドライだけでは生乾きで、そのまま眠ってしまうと翌朝凄い髪型になってしまうのだ。



呑気にバルコニーからの眺めに見とれていたが、その下の茂みの中から自分を見ている人物が居た事にこの時全く気が付いて居なかった。








うう、最近ケツ顎って表現を聞くことが少なくて、ちょっぴり残念な自分です。

お笑いさんに数人見かけますが、あれは残念な気がします。

求!ワイルド系ケツ顎!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ