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6話 着心地満点

一部改訂しました。

本当にすみません。(汗)



「マリアー!」

拭き掃除用のバケツの水を取り替えに行ったルルが、バケツも持たずに走って来た。

「ん? どうしたの、ルル」

「王妃様から午後のお茶のお誘いが来たっ!」

「へっ?何それ」

「コルセット無しのドレスの事が聞きたいからって、ミリーと私とマリアの三人が招待されたって!」

「・・・お腹痛くなってきた、かも」

緊張するとお腹が痛くなる人間です。



イシュダールに来て、早三ヶ月が過ぎた。

最初の一週間は異世界に渡った後遺症からか微熱が続き、寝たり起きたりの生活だった。

それでも毎日ミリアムさんが来てくれて、沢山のお話をしてくれた。

その時にミリアムさん付き待女のルルさんも紹介してもらい、すっかり仲良くなった。

私達三人は年が近く(ミリアム24歳、ルル23歳、私19歳)、毎日ガールズトークに花が咲いた。


翌二週間目は、私がミリアムさんの義理の妹になるという事で、ミリアムさんのご両親がわざわざ会いに来てくださった。私の容姿を見て驚くだろうと思っていたが、逆に私が驚く程の過度なスキンシップで翻弄されてしまった。(こういう所はアルに良く似ていると思ったわよ)ミリアムさんのご両親は私を気に入って下さった様で、こっちの世界で生活する為に必要な後見人となる事を申し出て下さった。

これは本当に嬉しい事で、実は王太子の宰相からも身元が定まらないと侍女として置かれないと言われており、私の身の置き方に頭を悩ませている所だったのである。

多分、ミリアムさんがその事でご両親に何かを言ったのでは無いかと思っているが、本人は笑って誤魔化している。


しかしミリアムさんのご両親はとても真剣に考えていて、本当は養女としたいと言っており、一年後には本当の娘になる事を考えて欲しいと言われたのである。

この国では直ぐに養子縁組をする事は出来ない。

それは政治的な策略に利用される事を失くすための措置で、最低でも一年間は後見人と言う立場に置かれる事となっているのだそうだ。


私からすれば後見人になってくれただけでもありがたく、娘なんて恐れ多い。

だって「王太子妃ミリアム様の妹」になる訳で・・・考えただけでも頭が痛くなりそうだ。

それでも一応考えて置く様にと約束させられたのだから、いずれは結論を出さなきゃいけない事の一つではある。

(まあ、急いで考えなくても良い事だし、ゆっくりでいいかな)


それから一週間後には、カークランド家のミリアムさん付き待女として正式にお城に上がる事になった。(ミリアム・カークランドが正式名称だったのを、この時に知りました)


此方の世界の一般常識を身に着ける為に待女として過ごす日々は驚きの連続だった。

だって、朝の起床は九時。九時半にミリアムさんを起こしに行って、それからお風呂。一時間近くもお風呂で寛いでから、ローブを羽織り、髪を乾かし、ほてりが引いてから着替えである。その着替えもコルセット、ワイヤー入りの下着、その上に数枚重ねる豪華なドレスである。

十二時近くになって、朝食と昼食兼用の食事が始まるのだ。

それも、オスカル王子も一緒にっ!

ミリアムさんは王太子妃だから当然の事なのだろうけど、毎日毎日朝からラブラブは勘弁して欲しい。


食事が終わるとミリアムさんは騎士の方に付き添われて執務室へと向かい、夕刻の食事の頃まで仕事をするのである。


私とルルはその間、掃除、洗濯、繕い物と走り回る。

日本に居た時は殆どが姉任せで何もして来なかったのだ。

当然の素人の自分を、ミリアムさんとルルさんが根気よく教えてくれたお蔭で何とか乗り切って来ている。(まだまだ現在進行形である)



待女の仕事も慣れて来た頃、何時まで経っても慣れない物があった。

それが待女服である。

濃紺のワンピースに飾り気は一つも無く、詰襟、ぴったりとした身幅、足首も見えない長い裾、どこぞの女教師ですかっ!

働く待女には余りに不自由な洋服だと思う。

伸縮性の無い生地だから腕まくりも出来ないし、裾が長いから急ぐ時も走る事が出来ないのだ。(裾踏んで何回転んだことかっ!)


そう思ったから、動きやすい様にリフォームしてみた。


裾を10センチ短く切る。

身幅の縫い代が結構多めに有るから、余裕を持たせて縫い直す。

それに合わせて袖ぐりも太くし、長袖だったのを七分袖にし、カフスを付ける。

一番窮屈だった襟を丸く切り抜き、裾を切った布で小さな襟を付ける。

それでも残った裾の切れ端で、ウエストを飾るリボンを結んで出来上がりである。

(これに白いペチコートと白いエプロンが有ったら最高だね~)


リフォームワンピは動きやすく、翌日にはルルも着ていた。

ルルは背が高く、胸だけデカイ。だから余計に今までの待女服は窮屈だったようだ。

金色の長い髪の毛を一纏めにし、水色の綺麗な瞳が印象的なにこやかな女性である。



一週間後には他の待女達からも依頼が舞い込んだが、如何せん手先が不器用なので、数名の待女の方に来て頂き、リフォーム講習を開催したのだった。(自分でリフォームした待女服も縫い目が粗過ぎたらしく、後日ルルが直してくれたのだ)

このリフォームワンピは瞬く間に城中に浸透し、怖~い待女長官にお小言を言われる前に定番化してしまったのだった。





「ねえ、ミリー、毎日こんなの着てて辛く無い?」


ミリアム(ミリー)が体調を崩し、やっと執務に戻る日、ミリーの着替えの手伝いをしていた私の左手にはコルセット、右手には別の物を手に聞いてみた。


「出来れば、マリアの待女服を着たいわ」


その言葉を聞いて私とルルは兼ねてからの計画通り、自分達で縫い上げた下着とドレスをミリーに着せる事に成功した。


今までのコルセットはウエストのクビレを強調し、胸の脇まで覆ったボーン(細い板)で胸のお肉を脇に流れて来ない様に作られている。だから当然デコルテ部分には盛り上がった形の胸が出来上がるのである。

そしてそれを強調する胸の開いたドレスが主流でもある。


私が右手に持って居たのはコルセットを使わずに形の良い胸を作る為のブラジャーである。

それもワイヤー無しだ。(病気療養後は体に優しい物が良いと思うんだ)

コルセットを使用しない場合、胸は引力で下がるし動けば揺れるのが原則だ。

私がこの世界に来た時に着用していたブラジャーを参考に試行錯誤し、実際普段も着用している。(胸が小さくてもあのホールド感が安心なのである)

今ではルルも愛用者の一人である。


ブラを隠す為に胸元は余り広げず、大きな襟をポイントにして中央には赤いリボンを結んで置く。ウエストを絞ったデザインにし、コルセットをしていないのが分からない様に高い位置からたっぷりのキャザーを寄せたスカートが下がる。そのスカートもくるぶし丈にし、中にもたっぷりのギャザーを寄せたワイヤー無しのペチコートを合わせる。

黄色地に若草の模様がとっても可愛いドレスである。(もちろんリフォーム作品だよ)

しかも!足元は編上げの茶色のショートブーツを合わせましたっ!


「可愛い過ぎて鼻血が出そーーー!」

ルルと二人、大絶賛だった。

「な、なんだか、心許ないわ・・・」

恥ずかしそうに騎士の方と執務に向かわれたミリーは、絶賛可愛かった。


翌日の朝食昼食兼用の時間に、同席されたオスカル王子からお褒めの言葉を頂いた。

「抱きしめた時にやわらかさが感じられるのは気分が良い」

う、バカップルを作り上げるつもりでは無かったのだが・・・

今まで以上に輪を掛けてラブラブしてる二人に、苦笑いしか出て来なかった。


ミリーは私達のリフォームする洋服が可愛いからと言って、公務以外ではほぼ毎日着てくれている。当然、ブラも大のお気に入りとなっている事が物凄く嬉しかった。


それ以来、暇が出来ればリフォームに励んでいるのだが、縫うのはもっぱらルルの仕事で、私ははさみを手に切ったり、縫い目を解いたりする事が専門となっている。

所詮二人でする仕事、一週間で2・3着仕上がれば良い方である。






待女服のリメイクがあっという間に広がった様に、ミリアムが着用するリメイクドレスも瞬く間に噂になっていた。

しかし、流石にコルセット無しに不安を覚える淑女様方は、気になりつつも二の足を踏んでいる様である。


そこで早速動き出したのが、兼ねてからコルセットを嫌悪していた王妃様だったのである。


気分的に化学繊維プリーズ!なんですがね。

でも、王妃や王太子妃がジャージ着てたら、、、泣きたくなりそうです。

違うか、笑っちゃうかな。くすくす


取り敢えず、まりあちゃんの現状です。

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