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14話 監視は不要




翌日、いつも起こしに行く筈のミリーに早朝(夜明け前だった)叩き起こされ、夜着のまま最低限の荷物を手に夜逃げの如く部屋を移された。

起こされた時、咄嗟に自分の隣を振り返ったが其処には誰もおらず、ほっと胸を撫で下ろしたのだが全く意味が無かったのを後で知ったのだった。


何故今移動するのかと言う理由は、新しい部屋へ移って直ぐに説明をされたけど、いまいちピンと来ない自分がいた。

だから、普通に待女のお仕事をしにやって来たが、ミリーの部屋へ着く前に何度も断念しそうになったのは事実である。


「やはりお部屋に戻られては如何ですか?」

「はぁ・・・またあの茨の道を通るのは嫌だよ・・・」

「ですから、本日はお休み下さいと申し上げましたのに・・・」

「だよねぇ・・・はぁ・・・」


早朝のミリーの分かった様な分からない様な説明はこうである。

今まで私が住んでいた部屋は「客室」で、一般的な待女達が住まう部屋より少しほどランクが上になる。それは途中採用だったから空き部屋が無かったのと、アルが何らかの方法で私とコンタクトを取ろうとした時には、この部屋が便利だからと云う話だった。

あの部屋に『「監視魔法」が掛けられており、魔法の類が使われた時は即刻王太子の元へ連絡が入る事になっているらしい。(直接オスカル王子に伝わる訳じゃ無く、執務に関連している方々へ連絡が入るんだとか)

これはあくまでも侵入者対策であり、私を監視していた訳では無いらしい。(どうだか)

何でも城内全体は【魔凬】(かぜ)と云う魔法の気流が流れており、今は『監視魔法』の相乗効果もあって、『転移術』をつかうと誰が何処へ行ったのかが、直ぐに分かると言う話だった。


此処で一つの疑問が浮上する。

私はほぼ毎日テレポートと言う魔法アプリを使っているが、それは『転移術』とは別なのかと言う事である。

それと同じで『風』や『光』などのアプリも日々使用している。

ミリーから聞く話の内容では、私が魔法を使っているとは思って居ない様子なのだが、これは一体どういう事なのだろうか。

そろそろ「スマホ」についての説明を兼て、ミリーに相談しなければいけない時期が来たのだと思ったが。


「王太子妃様、そろそろ急ぎませんと」

迎えの騎士が戸口でくぐもった声を掛けて来たので、ミリーも急ぎ帰って行ったのだった。

後でゆっくり話せばいいかと、その時は気軽に考えていた。



しかし、あの部屋に「監視魔法」が掛っていた事には、少々驚いている。

多分、多分であるけど、私の見た目が起因しているのは間違いないだろう。

黒髪、黒目だけど、魔力が無い自分は警戒保護対象に当たる。

今までお城の中でのほほ~んと生活していたが、どれだけ気を使われていたのかをこの時になって初めて知ったのだった。


だから、呑気に休んでなんか居られないと再認識し、仕事へ向かう事を決意する。

ミリーの説明も日本で言う「セコムしてますか?」みたいな、そんな程度の認識だった。

やっぱりまだまだ自分の考えは甘かったと実感するのである。



今まで住んでいた部屋は西側の塔の二階に有り、ミリーの部屋の割と近くだった。

今朝移動した部屋は、南の塔の奥にある日当たりの良い一階の部屋だった。しかし余り使われて居ない所為か埃っぽく、寝具も少し湿っぽかった。

面倒でもお昼休みに一度戻って、布団を干したり掃除をしなきゃいけないだろうと考えていたが、今はその気持ちも何処かへ行ってしまっている。



南の塔を抜けるまでは普通だった。偶にすれ違う騎士や待女さんと挨拶を交わし、そのまま真っ直ぐ中央の吹き抜けまで出た。

その吹き抜けを左に曲がり、大きな階段を下り、ぐるりと回ってまた左へ進む。そのまま進むと庭園が見え、庭園を右に見ながら回廊を渡ると、其処が王太子と妃の塔となる。


一番最初の「後悔」は吹き抜けから階段を下りる時に訪れた。

「マリア様、何時からなのですか!?」

「マリア様、昨夜の御渡りはデュアリス指揮官様で間違い御座いませんよね!?」

「マリア様、どの様にしてお知り合いになられたのですか!?」

「マリア様、告白はどちらからですか!?」

「マリア様、!?・・・・・・・」以下略。

囲まれたのは殆どが西塔の待女達にである。普段から気軽に話したりもするし、困って居ればお互い手伝ったりもしている皆様方だ。顔見知りだからこそ容赦無く質問を浴びせて来るし、好奇心も沢山お持ちなので沢山の事を知りたいのである。

それは分かる。私だって十分に気持ちは分かるが、言える事と言えない事も有る事を分かって欲しい所である。


こっちの塔の待女達は比較的若い女性が多い。それは王太子や妃、それらに仕える若い宰相等の所為だと教えられている。(何だか、高校を思い出してしまうわー)


階段の下でも掴まり、庭園前でも掴まり、後少しでルルの待つ控えの間だと思う所でまた掴まってしまったのだった。その様子を少し離れた所から見ていた執務官達も、にやにやと笑って見ているだけで、誰も助けてはくれなかったのである。

(薄情者―!いつか私も上から目線で笑ってやるー!)



身も心も瀕死の状態で辿りついた控の間では、私を見るなり瞳をきらきらさせたルルから更なる追い打ちを掛けられたのだった。

(お願い。勘弁してくれよ)




デューの言っていた「明日は大変」の意味を理解し、「休んだ方が良い」と言ってくれたミリーの言葉も今やっと理解したのだった。


何だか仕事を休むのも気が引けて、昨夜泣いた為に腫れていた瞼をミリーの『治癒の力』で直して貰ったものの、何だか無駄な事だった様に今は思う。



嗚呼、そんな事よりも早くミリーに伝えなきゃと、急いでミリーの部屋へと向かったのだった。




監視されてたこの事実!

アプリは魔法に当たらないのか?感知センサーの故障か?

魔法が有っても無くても、噂話は楽しいですからね!(笑)

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