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13話 おとぎ話




「んんーーー!・・・ちょっ・・・な・・・ふんぬぅーーー!」


覆い被さる様に重なる体は酷く大きい。その胸を叩こうが力いっぱい押そうが、ビクリともしない。

何故だ!?さっきまでバルコニーに居た筈だぞ!?

何故今ベッドの上なのだっ!?

そんでもって、目と鼻の先に少し怖い顔をした指揮官様が居るのは何故だあー!?

左手を掴まれ、右手は体と体の間に押し込められ、残った指揮官様の片腕は、あろう事か私の後頭部へと滑り込んだ。


「し、指揮官様? ええっとですね・・・」

「デュアリスだ」

「・・・デュ、デュラ、リス指揮官?」

「デュアリス」

「デュ・・・あっ・・・」

きちんと名前が言えない上に、次の言葉を飲み込むように口づけが落ちて来た。

それは噛みつく様に強引で、でも何処か切なくて・・・


驚いた私は目を閉じる事もせずに、直ぐ目の前に有る見開かれた青い瞳を見つめていた。

その瞳はまだ少し怒っているみたいで、でも何かを伝えようとする意志が青い瞳に宿っていた。


少しすると重なった唇は離れたが、その大きな手は私の唇の上を彷徨っている。

それ以上離れる事も無く、近づく事も無く、ただじっと私を見つめている。

「く、黒い髪は変じゃないですか?」

「綺麗だ」

「・・・黒い目も、」

「綺麗だ」

言い終わる前に唇を塞がれ、角度を変えて繰り返される口づけはどんどん深みを増す。

「・・・んっ・・・はぁ・・・ぁっ」


ふ、と離れた唇。半分泣きそうな顔で目を開ければ、反則的な言葉が飛び出す。

「そんな顔をするな。我慢出来ぬ」

デュアリスさんの掠れた声は妙に色っぽくて、何を言っているのか解読するのが間に合わない。

「なっ、なにっ・・・んんっ!・・・」

彼の暖かい塊が侵入し、逃げ惑う私を絡め取る。酸素を求めて抗うが、私を抱きしめる腕も力が増してより一層深くなるばかりだ。こんなに深い口づけの経験が無い自分は、只々酸素を求める事に必死だった。

(ぬぉー!何のプレイですかっ!?し、心臓が持ちましぇーん!)


意識を手放しそうになった時、彼の唇が耳たぶを含み、そして耳の裏側をなぞる。背中がぞくぞくとして体が熱くなる。

そして、小さな擦れる声が耳元で呟いた。

「名は」

「・・・みっ、美桜」

「そうか、ミオか」


(うぉー!バレてましたか!?バレてたんですね!?嘘を付くつもりじゃ無かったんですよ!?目が覚めたらもう、まりあって呼ばれてて、それが皆さんに広まってて、訂正出来る範疇じゃ無かったんですよ!偽証罪とか何かになるんですか?牢屋に入れられるんですか?嗚呼、神様仏様マリア様―!)



どうやら私は1人百面相をしていたらしく、デュラリス?デュアリス?(ああ言い辛い。デューで勘弁してもらおう)デューさんは声を立てて笑い出した。

「俺は、心を読まれても気にせんぞ」

「あ、あれは!もう使いません!」

うおぉーーーあの時のあのお姉さんの頭にあった妄想が蘇る!?

あんな事ってどんな事だあー!

そんな事ってどんな事だあー!

未成年には、物凄くエロ過ぎて、放送禁止用語が満載で悶絶してしまうのだった。

(思い出したく無いから会わない様にしていたのにぃー!乙女の純情を帰せぇー!)


「お前が何を悩んでいたのかは、大体想像がつく」

「へっ?そうなの?」

「髪の色や瞳の色を気にしているのだろう?」

「むーん。それだけじゃ無いけど、実際黒くて気持ち悪いって思われたのはショックだよ」

「俺が何を言って慰めても、お前は気にするだろう。知らなかった為に傷つく事もこれからまだあるだろうしな。だから、今から話す事を良く聞いて良く考えるんだ。いいな?」

「うん」


「初めてお前を見る者達や触れる者達はとても怖がった。それは当然その黒い色の所為だ。この世界は濃い色を持つ者を崇める傾向がある。それは昔からその者達が強い力を持ち、その力を民の為に使って来た歴史が有るからだ。しかし、闇の様に黒い色を持った者は今まで生まれた事が無い。生まれた事が無いからお伽噺が出来上がった。闇の様に黒い色を持った者を「魔女」と呼び、闇の魔法使いだと言うお伽噺が生まれたのだ。」

「お伽噺・・・もしかして、かえるに変えちゃうとか?」

「知っていたのか? そうだ、悪い事をすると、かえるとかへびとかに変身させられるという戒めの類のお伽噺だ。特に庶民には広く浸透しているな」


その話で気が付いた事が一つある。

「それでか!市井への外出許可が下りなかったのって」

「多分そうだろう。ミリアム殿はお前の事を心配しておられるからな」


広く浸透しているお伽噺は、見た事が無くても自分のすぐ隣に存在している物に等しい。

だから払拭する事は難しい事である。

そんな世界でやって行けるんだろうか?


「やはり元の世界へ戻りたいと思うだろうな」

「うん。帰りたいよ」

「そうか」

「お、おねーちゃんに、あ、あい、会いたいっ・・・うっ・・」

言葉にした瞬間に、何か抑えていた物が溢れる様に流れだし、只泣く事しか出来なかった。

震えながら嗚咽を漏らし泣く私を、ずっと優しく抱きしめてくれたデューの存在が有りがたかった。


「一人で我慢するな」

「うっ・・・ひっく・・」

「俺が守る」

やっぱりデューの胸に顔を埋めて泣く事しか出来なかった。


「俺は、初めてお前を見た時に、余りの美しさに見惚れたんだ」

目の前の瞳が揺らいでいる。大きな手は何時の間にか髪の毛を撫で、一房手に取るとそれに口づけを落とした。

「その黒い瞳を見た時は、魔法に掛ったように動けなかった」

さっき以上に私の大好きな深くて青い瞳が目の前にあって、ふっと笑うと私の瞼に口づけを落とす。そのまま頬をなぞって唇がまた重なる。

「指揮官の瞳、綺麗・・・」

「デュアリスだ」

「デュー・・・」


デューは体勢を変えて、背中越しに私をすっぽりとその腕の中に閉じ込める。

ゆっくりと頭を撫でる大きな手が気持ち良くて、そのまま寝てしまいそうになる。

「ん、眠くなるよ」

「今日はもう眠るといい」

「んー、もう少し話したい」

「また会いに来る」

「んー・・・・・」

「明日は大変だぞ?」そう言って笑っていたデューに、どうして大変なのかを聞きたかったが・・・

デューの腕の中は安心出来て、あったかくて、そのまま眠ってしまったのだった。










誰でも知っているおとぎ話系って、あんまり良い方の話って少ない気がするんですが。

悪い事をすると鬼が来るとか、おばけに連れて行かれるとか、エトセトラ

こう言うのって、親が子供に言う形で伝授されて行くんだよねー


自分、実家が蕎麦屋だったので、悪い事すると大釜に入れられると思ってました。

まるで五右衛門だわ~(笑)

これって蕎麦屋とかうどん屋とかじゃ無いと、使えないっす。

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