1話 猫耳かふぇ
R-15 とさせて頂きます。
人それぞれ捕え方が違うと思っての警告です。
でもまだまだ先になりそうです。(笑)
都内のとある有名な繁華街の大通りに面したドデカい電気屋を左に曲がり、三軒先の赤いビニールの庇が所々敗れた小さな電気屋の先を更に右に曲がる。
曲がった先の小路にはそれよりも小さな電気屋が軒を連ね、店先には所狭しと意味不明な商品が並んでいる。そして、その意味不明な商品を手に恍惚とした顔をしたお客がそこそこと群れて居るのも不思議な光景なのである。
そんな不可思議な店が並ぶ小路を可憐な少女が笑顔を携えて歩いて行く。
黒い髪の毛は両耳の上に1つづつ緩く結ばれ、それぞれの根元にはピンク色の小さな猫耳が添えられている。そしてその先に続く髪の毛は軽くウエーブがかっており、毛先は肩よりやや下辺りで揺れている。
にこにこと笑顔を乗せた顔は小さく、その中に良く納まった物だと思う大きな二つの目と少々上を向いた小さな鼻梁の下には、から揚げでも食べて来たのかと思う程に光り輝いた唇がぷるんと付いていた。
黒いワンピースから覗く白くて細いうなじ、それと同じように白くて細い手から次々と道行く人に小さな物が手渡されて行く。
黒いワンピースの下には白いレースの靴下と黒いワンストラップのエナメルの靴が、軽快に踊っている。
小さな物を手渡された人達は、そのままポケットに入れて今まで通り意味不明な商品を見ている人と、その物を手にぞろぞろと彼女の後を着いて行く人とに分かれた。
彼女は小路を真っ直ぐに歩いた先に有る、緑が生い茂った庭に佇む赤い屋根が印象的な白い洋館の大きな扉を開いたのだった。
「猫耳かふぇへ、ようこそ!」
其処には先程の少女と同じ様に黒いワンピースに白いエプロンを付けた「メイド」達が両脇に並んで笑顔で出迎えてくれるお店だった。
今日は2月14日バレンタインデー。
苺のチョコ1つと「猫耳かふぇ」会員募集中!のチラシが入った小さな袋が、店内のテーブルの上に所狭しと置かれていた。
異世界に飛ばされる前のお話です。
前置き、みたいな感じで受け止めて下さいませ。