漫才師ヒロシのウソのようなアホな話
泣いてる子供がいるぞ!
そら、笑って笑って
……
ちぇ…無視かよ
俺はヒロシ30歳
お笑い芸人を目指して17年目
笑わせた数よりも怒られた数や無視された数のほうが圧倒的に多い。
才能はほぼゼロなのはわかった。
でも、こんなに人を怒らせるのも才能なのか?
……
一体俺はなんなんだ?
少し肌寒くなって来た真夜中の公園
ヒロシは缶コーヒー片手に空を見上げる
「忘れられないんだよなぁ…」
そうつぶやき、静かにベンチに座った
ヒロシがまだ小学6年生の頃、まさに漫才ブームで沢山の大物が輩出された。
学校でそれを真似る子供が多く、一種のプチ社会現象化したと言っても過言じゃなかった。
ヒロシもそれに感化された1人だった。
そんな中、ただ1人だけピクリとも微動だに表情を動かさず、全く笑わない少女がいた。
彼女の名はアンナ。
最初は色んな子供がアンナを笑わせようと必死になるけど誰1人笑わす事が出来なかった。
やがてアンナは無愛想というレッテルを貼られ、誰も近付かなくなったのだ。
ヒロシはたまたまアンナと同じクラスだった。
月1回の席替え
くじ引きで誰がどこの席に行くかが決まる
アンナは窓際の前から三番目
ヒロシはその横の席になった。
「藤田さんってなんで笑わないの?」
ヒロシは率直にアンナに聞いた。
「笑うわよ。だってみんなつまんないもん」
アンナは勉強がとても出来た。
ヒロシは勉強が苦手だったのでいつもアンナに教えて貰っていた。
「ねぇ、ヒロシくん。最近誰の真似もしないね。」
アンナからの意外な発言に驚くヒロシ
「だって、みんなつまんないだもん」
そう言った時、初めてアンナが笑った。
「ヒロシ君、笑いの才能あるよ」
その日以降、急にアンナが学校に来なくなった。
「先生、アンナちゃんは?」
ヒロシは気になって仕方がなかった。
「アンナちゃんはね〜ちょっと病気で入院しちゃったのよ。みんなでお手紙書こうか」
3ヶ月後
手紙の返事が来た。
それはあまりにも理不尽で信じられない内容だった。
「アンナの母より
みんなごめんね。手紙沢山貰ったのに、アンナは喜んでずっと読んでました。
アンナは昔から表情が表に出ない病気でね。
それを治す方法が現代の医学にはないそうです。
前から余命があったんだけど、10月に病気が悪化してね、そのまま天国に行ってしまいました。」
(…え??…え?)
ヒロシは理解出来なかった。
「先生俺アホやねん。手紙何言ってるかわからへん。アンナちゃん死んでないよなぁ…」
先生は首を縦に振る事が出来なかった。
「ヒロシくん…これアンナちゃんから」
ヒロシは先生から綺麗な便箋に入った手紙を貰った。
「ヒロシ君へ、ヒロシ君と一緒にいれてとても楽しかったです。
笑うって楽しいね。
初めて人前で笑ったかも。
ヒロシ君はお笑いに向いてるよ。
私が保証する。
また退院したら沢山笑おうね
約束だからね。」
こうしてヒロシはお笑いの道を決意した。
それから17年間
対して人を笑わせる事が出来なくなった。
「よし、決めた。明日のオーディション駄目だったら諦めよう」
オーディション当日
はい、ヒロシさんどうぞ
「どーも!ヒロシです。実は17年間人を笑わせた事がないです。」
ははは、君合格
「嘘…!?」
君、嘘つくの上手いね〜。俺笑ってしまったよ。
「え!?」
ヒロシ君は人を笑わせた事に気付いてないのかな?
「あ…
そうか…
笑わせてなかったんじゃなくて、笑った人に気付かなかったのか…!」
はい、じゃあ次回からはこのアンナって子と組んで貰うからね。
あ…同い年みたいだね。
「え…!(不思議な偶然だなぁ…)」
「ヒロシくん、宜しくね。」
「はじめまして、アンナさん」
「うふふふ、本当にヒロシ君って面白いなあ」
「え!!?」
実はアンナはあの後生き延びて、病気も克服したのだった。
「本当に俺ってアホやなあ…。」
「ううん、でも本当に1回心臓止まって死んじゃったんだ…
でもね…」
「でも…?」
「でも生き返っちゃったんだ(笑)
笑えるでしょ?
お母さん早とちりだからあんな手紙書いちゃったみたい。
どんだけ、娘殺したいだろってね(笑)
えーと
なんで生き返ったのかは私も不思議なんだ。
小学校で初めて生きる理由が出来た気がした。だから頑張れたのかも。」
その後、二人からは笑いが耐えなかった。
ヒロシとアンナは17年の歳月をかけてようやく約束を果たしたのだ。
その後、彼らが3年間でとった漫才の賞の数は誰も塗り替える事が出来なかった。




