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傘の花

作者: ヰ星夭
掲載日:2026/05/02

 私が学校に行こうと駅に向かっているときの話。

 普段は自転車で駅まで行くのに、今日は雨なので歩いて向かっている。傘をさして自転車に乗るのも考えたのだが、最近道路交通法規が色々変わったみたいで警察のお世話になりたくなかったので渋々徒歩を選択した。

 いつもなら電動アシストのおかげで軽々登れる坂道をゆっくり時間をかけて登る。普段は駅に向かう汗だくの人が数人いるはずが今日は見当たらない。何故か考えたらバスという手段があることに気づいた。もっと早く気づいていればこんなに苦労しなかったのになんて思ったがもう駅近くまで来たので仕方なかった。

 長い坂道を登っていると傘を差しながら杖をつく人が前に見えた。傘で顔は見えないがぶつからないように横にずれようとした時、おじいさんの声で、「すみません、ダイソーってどこですか?」と聞かれた。私は驚いてえっと…としどろもどろしてしまった。ダイソーは私が来た道の途中にある。そのことを思い出し、振り返って指を差しながら、「この坂道を降りながら突き当たりを左に行くと右手に見えます」と頭で景色を思い出しながら説明する。私が必死に説明を終えると「そうですか、どうもありがとうお嬢さん」と礼をして坂道を降りていった。私は少し足早にその場を去ろうとした。心の中が何かで満たされて興奮していたのだ。胸を張って大股の一歩一歩を踏みしめる。こんな朝から始まる1日はどれほど幸せか。雨の日の憂鬱な気分を一瞬にして晴らしてくれた。

 そういえば感謝をするのを忘れていた。私は振り返ってせめて礼だけしようと坂道を降りているおじいさんを探した。しかし傘の花一つない静けさがそこには広がっていた。相変わらず雨は降っている。それでも私は雨に濡れることを気にしないで坂の下に向かって深々と頭を下げた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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