表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Baby Tune (ベイビーチューン) 〜謎の少女に人生を破壊されながら頭痛だけは治る件〜  作者: 末紀世(まつきよ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

外出しちゃダメ



外に出すべきではなかった。


それだけは、はっきりしている。


---


「ねえねえねえねえ!!今日どこ行くの!?」

「……クリーニング屋に服を取りに行くだけだ!」

「えーーー!!行きたい!!!」

「ダメだ」「なんで!?」「ダメだからだ!!!」


玄関の前。ドアノブに手をかけ、そのまま止まる。


(出したら終わる)


「ねえ早くーーー!!!外!!外!!!」


……終わった。 ダメと言っても無駄だ。


ドアを開ける。

「うわぁあああああああああああ!!!!!!!」


光。空気。広がる空。


「すっごーーーい!!!ひろーーーい!!!世界だ!!!ねえ世界だよこれ!!!」

「静かにしろ!!!!」


住宅街。車の走る音、遠くで鳴く犬、風に揺れる電線。


その中で――


「ねえねえねえ!!あれなに!?これなに!?全部すごい!!!」

「やめろって……」

商店街に入る。人の声、揚げ物の匂い、呼び込みの声。

「うわぁあああああ!!!いい匂い!!!」


チェリが走る。


「やめろ!!!!」


パン屋。並ぶ商品。


「これ食べていい!?」

「ダメだ!!!」


トングが勝手に動く。パンが落ちる。


「すみません!!!!」


店員が固まる。


(終わった)


さらに進む。コンビニ。電子音。


「ねえこれ昨日の!!プリン!!!」

「触るな!!!!」


冷蔵庫が開く。勝手に。


「きゃーーー冷たい!!!」

「やめろぉおおおおお!!!!」


店員が見る。


(もうダメだ)


外に出る。


人混み。ざわざわとした空気。足音、話し声。

その中で、チェリだけが違うリズムで動いている。


「ねえねえねえ!!みんななんでこんな静かなの!?」


「……え?」


「なんでそんな我慢してるの?」


一瞬、音が遠のく。


「……普通だろ」

「変なの!!!」


走り出す。

「やめろぉおおおおお!!!」


人が振り返る。


(まただ)


ズキン。


来た。視界が揺れる。音が歪む。

ユウはしゃがみ込む。

「……っ」


(やばい)


チェリが、来ない。

「……おい……」

いない。

音だけが大きくなる。


(来いよ……)


その時。


「ねえ!!!」


視界に飛び込んでくる。


「また痛いの?」


ふわり、と。

しゃがみ込んだチェリの無防備さが露わになる

「あっ…と…」


その瞬間。


音が、消えた。

さっきまでの雑音が、嘘みたいに遠ざかる。


「……はぁ……」


楽だ。


「……なんなんだよ、お前……」

「えへへー!」



無邪気な笑顔。少しだけ、怖かった。


目的のクリーニング屋に着いた頃にはもうスッキリしていた。


——帰り道。


夕方の光。オレンジ色に染まる街。


「ねえさ」

「……なんだよ」


「これ、デートってやつ?」


「は?」

「だってさ、一緒に外出て、いっぱい見て、いっぱい話して!」

「違う」


「えー!なんで!?デートじゃんこれ!!!」


「違うって言ってんだろ!!!」

「じゃあなに!?」

「……罰ゲームだよ」

「ひどっ!!!」

「むしろなんで楽しそうなんだよお前……」

「楽しかったよ!!!」

「……」


少しだけ、言葉に詰まる。


「……まぁ……ちょっとはな」

「でしょーーー!!!」


歩く。

周りの音が、少しだけ優しく聞こえる。


「……なんか」

「うるさくても、いい気がしてきた」

「でしょーーー!!せーかーいでぇーーす!」


その日も、ユウの頭痛は消えていた。


ただし――


「金もメンタルも削られたんだが!!!!」


別の意味で、限界だった。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ