第二章 - 消えた友人
涼の親友である田島健太が突然姿を消したのは、それから数日後のことだった。健太は彼の数少ない親しい友人であり、涼が異世界について相談できる唯一の存在だった。しかし失踪する前、健太は涼に何度も奇妙な話をしていた。
「最近、夢の中で別の世界を見ているんだ。それはまるで…お前が話していたエルセリアみたいな場所だ。」
涼は最初それを冗談だと思っていたが、健太の様子は次第におかしくなっていった。夜中に電話をかけてきては、「誰かに呼ばれている気がする」「向こう側で自分を待っている人がいる」と言い出すようになった。そしてある日、彼は突然連絡が取れなくなった。
警察に相談しても、有力な手がかりは見つからなかった。しかし涼は健太の失踪が自分の秘密に関係していると確信していた。彼がエルセリアに戻った際、村の住人から奇妙な噂を耳にする。
「最近、旅人らしき人が影の魔術師に捕まったらしい。」
その話を詳しく聞こうとしたが、村人たちは急に口を閉ざしてしまった。影の魔術師。それはエルセリアにおいても滅多に名前が出ない存在だった。彼の存在は恐怖と謎に包まれており、誰も関わりたがらない。
涼は情報を得るために闇市に足を踏み入れる。そこは犯罪者や追放された魔術師が集う危険な場所だった。何度も危険な目に遭いながらも、涼は「影の魔術師」が健太の失踪に関与している証拠を掴む。その場所は現実世界のある廃工場とリンクしていると知り、涼はその工場を訪れることを決意する。