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4.「好き」のもっと前
「…お付き合いしてる人とか、いないんですか」
偶々一緒になった食堂からの帰り道、少し前を歩く後輩のアトラスが立ち止まって小さな声で尋ねてきた。
ーー他の子と一緒だったけど今日は珍しく目が合ったし、会話も弾んだ気がした!このまま心を開いてくれるかも!
と一人ホクホクしていたら突然の問いかけ。
ーー心開きすぎでは!?
と思ったけれど平然を装って答える。
「い、いないけど…」
「そうですか」
それだけ言うとまた歩き出してしまった。
ーー何!?
昼下がり私の机隣にある書架に来て作業しているアトラスをチラリ、見上げる。
ーーお、逸らされないのか。珍しいな
「どうしましたか」
口調がいつもより柔らかい。
「さ、さっき言ってたところ明日休みだし行ってみようかな」
昼食時に盛り上がったアトラスのお気に入りの郊外の町だ。
「いいですね、最近は女性に人気の店も増えてるみたいですよ」
アトラスは一呼吸置いて
「…一緒に行きますか」
と口にした。
「そうだね、セシル達にも声をかけて」
心を開いてくれた事が嬉しくてニコニコしながら答えると、微妙な顔をしたアトラスと目が合った。