表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/6

3.「恋人」になるまで(前日譚・アトラス視点)




先輩のイリスは働き始めて三年目に異動してきた。


慣れない仕事をそつなくこなす、ではなくいっぱいいっぱいになってるのが可愛かったなんて言ったら怒られそうだけど、とにかく一目惚れだった。


話しかけられると気恥ずかしくて、自分のことを話すのも苦手だし上手く答えられなかった。しばらくすると懐かれててたって言ったら変だけど、親しみを持って話しかけてくれていた彼女は急にそっけなくなった。


周りの人には変わらないし、他の男性局員には普通なので、男嫌いとかでもないらしい。


となると原因は


「…俺か」


確かに愛想はなかった。返事もそっけなかったし嫌われてると思われても仕方ないかもしれない。


かといって仕事の接点はほとんどないし、今更近づく術はない。


転機が訪れたのは灯火送りの打ち上げだった。


二次会参加者の中に彼女を見つけ、カウンターで一人になったところで横の席に滑り込む。


「ディオダートくん」


少し緊張した面持ちで名前を呼ばれる。


「お隣、いいですか」


いつも話しかけてくれていたことを、今度はこちらから聞いてみる。


最初は警戒していたようだったが、元々話好きは酒が進むと饒舌になった。


「…かお」


酔っ払いがふわふわと喋る。


「なんですか」


頬に触れられた手を上から掴む。


お、振り払われない、嫌じゃないのか


ニコニコと撫でている。


「なんすか」


「…かっこいいなあって」


キャーッと言って顔を隠している。


俺は俳優かなんかか。避けられていた理由は不明だが顔は好きらしい。


「じゃあ付き合いますか」


「え〜いいの〜?」


酔っ払いがヘラヘラ笑う。ダメ押しで頬杖をついている手を握ってみる。


「うん、付き合お」


彼女は頭に?を浮かべながら、コクリと頷いた。


顔と押しにも弱いらしい。あと酒も。


「チョロいなこの人」と心配になったが


「あとどいつの顔が好きなんすか」


と続ける。挙げられた名前は全員顔の系統が似ていてヒヤッとする。


そのままぶつぶつ言いながらカウンターに突っ伏して眠ってしまった。


「珍しい組み合わせだね」


声をかけられて振り向くと他機関のルーカスがいた。


さっきのリストに上がらなかったがきっとドストライクで好きで、恐らくイリスの好きだった男。学院の先輩で最年少で局長になりそうな。できる男。


「何してんの」

ルーカスが続ける。


「さっき付き合いました」


「え〜酔っ払った子たぶらかしちゃだめだよ〜」


「いいんです、俺の顔が好きらしいんで」


「そう」


「ちゃんと送りなよ」


そういって先輩の頭を撫でようとして、少し迷って俺の頭を撫でた。


別に魔力で浮かせることもできたけど、なんとなくおぶって寮まで帰った。


まだ寝ぼけているイリスの手にメモを握らせる。ちゃんと忘れないように、酔っ払っていたからと誤魔化されないように。


-------------------

おつかれさまです。

付き合ってくれてうれしいです。

今日から恋人として

よろしくお願いします。


アトラス


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ