1.昼下がり待合所にて
「「あ」」
休憩終わりに乗っていた魔法籠が開いて恋人のアトラスとパチリ目が合った。
そのまま目を逸らして、彼の奥の同僚たちに声をかける。
「お疲れ様です」
にっこり微笑む。
三つ下のアトラスは彼が三年目で同じ課になった。
話しかけてもなぜか冷たくされて、セクハラだと思われてるのか?と思っていたが、
夏の灯火送りの打ち上げで隣になったタイミングで、何故か告白されて付き合うことになった。
アトラスが操作レバーと私の間にするりと入った。
手を後ろで組んで指をゆらゆらしている。
ーー触れたいなあ
「秘密の恋人」ってやつなら課内恋愛の醍醐味でこっそり手を繋ぐくらいありそうなものだけど。
告白してきたのが嘘みたいに、いつも淡々としている。
ーーバレたいわけじゃないけどさあ
何を考えているかわからない。
ーー最近の子は恋愛に興味ないって言うしなあ
ーーつむじ二つあるんだ、やっぱり背高いなぁ、
異動してきたばかり頃は、馴染めるようにしたくてたくさん話しかけたけど、
あまりにもつれないから、すっかり話しかけなくなってしまった。
付き合ってからもそれは変わらない。
ーー別にいじけてるわけじゃないけど、なんだかな、目が合って微笑みかけるとかそういうの位はさあ
ぼんやりと考えていると自分たちのフロアに着いた。
女の子たちがきゃっきゃと話しながらおりていく。
私も続けておりようとすると
急に振り向いて
「…なんか怒ってる?」
「……別に」
と言ってる間にレバーを操作され柵が閉まる。
「あっ」
そのまま下がる操作をしてしまった。
魔法籠が下がり出す。
恨めしげに見つめるとふっと笑って
「じゃあ後ろ向いてるから話してよ」
先程と同じ位置に収まった。
また後ろで手を組んでいる。
さっき触れたなかった手を指先でつつきながら呟く。
「…いつも目は合わないし」
「うん」
「いつも女の子といるし…」
「そうかな?」
「なんか…」
「ん?」
「…さみしいなって」
急に恥ずかしくなって
「やっぱり気のせいかも!」
と口にすると同時に手遊びしてた指が捕まった。
「今日一緒に帰ろ」
とびきり楽しそうな顔と目が合った。