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無限の宇宙を旅するガイアイーグル号。その中で操縦桿を握るロイと、隣でけたたましくしゃべる相棒ロボ吉の会話が、静かな船内に響いていた。

ロボ助は充電中のため眠っていた。


「ロイ様、本当にどこかにたどり着けるんですかね?」

ロボ吉の機械音声が、どこか不安げに響く。彼はロイの無鉄砲な行動には慣れているつもりだったが、それでもこの無計画な旅には内心ハラハラしていた。


「黙らっしゃい!」ロイが怒鳴る。「宇宙には美女がいるって、俺は信じてるんだ!」


「はあ、美女ですか…。ロイ様のその情熱、時々感心しますけど、99%無駄になってますよね」


「いいか、ロボ吉。1%でも可能性があるなら、それは挑む価値があるんだ。人類はそうやって歴史を切り開いてきたんだぞ!」


「それ、ただの言い訳じゃないですか?」


そんなやりとりをしながら、彼らはレイメル銀河の境界線を越えた。光速移動を続ける船内では、体感時間で約24時間が経過していたが、ロイは疲れた様子も見せず、何やら古びた本を読んでいた。


「ロイ様、それって…本ですか?電子書籍じゃなくて?」


「ああ、そうだ。昔のSF小説だよ。なんでも、この宇宙のどこかには、地球に似た星があるって話だ。そこには美しい海と緑の大地、そして…絶世の美女が住んでるらしい」


「それ、ただの作り話じゃないんですか?」


「いいんだよ。夢を見るのも旅の楽しみのひとつだろ?」


ロイはそう言いながら、サラダチキンとフリーズドライのサラダ、そしておにぎりを取り出した。


「うまいな、このサラダチキン。フリーズドライでもちゃんと味が残ってる」


「なぜ宇宙食の中にサラダチキンが…?調理の効率とか考えたら、もっと他にあるでしょうに」


「細かいことは気にするな!」ロイは笑いながらおにぎりを頬張り、ガイアイーグル号を操作し続けた。


その時だった。前方に琥珀色の光を放つ美しい銀河が広がっているのをロイが発見した。


「なんだこれは…!見たことのない銀河だ!」


「ロイ様、あれは未登録の領域ですね。調査データも存在していません」


「よし、俺がこの銀河をコバルト銀河と名付ける!」


ロイは自信満々に宣言し、ガイアイーグル号を加速させた。しかし、未知の銀河に突入して間もなく、突然の警告音が船内に鳴り響いた。


「ロイ様、接近する未確認物体があります!どうやら戦闘機のようです!」


「なに!? 誰が俺を狙ってるんだ!」


スクリーンには複数の敵機が映し出されていた。その動きは洗練されており、明らかにただの警告ではない。


「くそっ!仕方ない、ここは振り切るしかないな!」


ロイは操縦桿を握り、船を急旋回させた。光速航行を駆使して敵を振り切るため、機体にかかる負荷をものともせず、惑星ルルロントへと不時着する。


「ここは…どこだ?」


ロイが船外に出ると、目の前には果てしなく続く砂漠と、青く輝く美しい海が広がっていた。その光景は、彼がこれまで見てきたどの惑星とも違っていた。


「ロイ様、宇宙服を着てください!外の環境が安全とは限りません!」


ロボ吉の声を無視して、ロイは深呼吸をした。


「大丈夫だ。酸素濃度は地球とほとんど同じだぞ」


ロイが海に向かって歩き出すと、不思議な光景が目に飛び込んできた。水面を滑るように泳ぐイルカのような生物。しかし、よく見ると、その顔は人間の少女そのものだった。


「なんだこれは…!顔が人間、体がイルカ!?最高じゃないか!」


ロイが叫ぶと、その生物が海面から顔を出し、話しかけてきた。


「えっと…来訪者の方ですか?」


その声は、どこか親しみやすく、透き通っていた。ロイは興奮のあまり、叫び声に近い勢いで答えた。


「好きです!付き合ってください!」


彼女は驚いた表情を浮かべ、一瞬言葉を失ったが、すぐに笑顔になった。


「面白い人ですね。気に入りました!」


彼女の自己紹介によると、名前は山田花子。通称「山田」。種族はドルフィーネで、人間とイルカのハーフだという。


ロイはその話を聞くと、彼女に完全に心を奪われた。


しかし、その時だった。空から謎の飛行物体が現れ、ルルロントを攻撃し始めたのだ。


「敵か!」


ロイは咄嗟に山田を庇い、空を見上げた。周囲に漂う重力が地球の1/1000程度であることに気づいた彼は、軽々と宙を舞い、敵の戦闘機に接近した。


「飛べるじゃないか!」


彼は拳で敵機を叩き壊そうとしたが、やはり限界を感じた。すぐにイーグルファイト号を発射させ、プロトンレーザーを発射。次々と敵機を撃墜していく。


「白旗だ!」


敵はついに降伏し、ルルロントの平和は守られた。


戦闘が終わり、ロイは再び山田の元へ向かった。

「なあ、少し乗せてくれないか?」

「えっ…いいですけど?」


山田のイルカの体にまたがると、彼女は少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「ちょっと、くすぐったいです…」

ロイは彼女の首元に顔を寄せ、冗談混じりに言った。

「ここ、意外と柔らかいな」

「やめてくださいよ!もう、変な人♡」


その後、二人は海で遊び、ルルロントの美しい風景を堪能した。だが、ロイの心の中には、ある女性の記憶が影を落としていた。


「渡部彩奈…俺はまだ、お前を忘れられていない…」


ロイの目に一瞬、悲しみが宿る。それに気づいた山田は、そっと彼の手を握った。


「ロイさん、大丈夫ですよ。ここは楽しい場所ですから、いっぱい笑ってくださいね」


その優しさに、ロイの心は少しずつ癒されていくのだった。


続く

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