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続きです!
楽しんでもらえると、幸いです(❁´ω`❁)
私はフラリア・フォーリー、マーキュリアル王国のフォーリー伯爵家の長女として生まれた。
生まれてから何不自由なく、愛情を持って育ててくれた両親、優しい使用人たち、可愛い妹、、、
そんな理想のような家族は5年前、私が10歳の時に頬から花が咲いた瞬間に砕け散った。
花咲奇病は非常に稀な病気である。伝染る訳では無いが、病にかかったものが無くなるとまたどこかで別のものが病になるという特徴を持つ。
体の至る所から花が咲き、その花は摘んでも枯れることがない。治療法がわからず、最後には内蔵にまで花が咲き、病にかかったものの形を残して全身が花になり死んでしまう恐ろしい病だ。
病とは言われているが、その美しさと残酷さを兼ね備えた亡骸を見た人々は「これは呪いだ」と口々にいった。
いわく、自然を破壊し、街を作った人間に対して精霊が怒っているのだと。
そのような勝手な推測を立てるくせに、自らの文明は放棄しようとしない、出来ない身勝手な人々は、その病にかかった者を文明のための生贄であるとし、罪から目を背けるように彼らを忌み嫌った。
それは血の繋がった両親でさえ、同じだった。
由緒正しき伯爵家の娘が呪いにかかったとわかった瞬間、世間体を気にした両親は私を屋敷に閉じ込めた。
周囲の人々には「娘は体が弱くて外には出られない」と話しているらしい。
なんとも不愉快な話である。
毎日、毎日、自分の身体から咲き誇る花たちを見つめながら暮らしている。
自然と枯れることが無いため、時々どこかへまとめて持っていかれるその花はただのゴミとして処理されているのだろう。
逃げ出したいと切に願う。
しかし、そう思う度に逃げられないと言う絶望が目の前を暗くした。
世間知らずの伯爵令嬢である私が、外の世界で上手くやれるだろうか。
10歳の時から誰も私には近づきたがらなくなってしまった為、身の回りの事は一通りできる。
しかし、それだけで生きていけるほど世間が甘くないことも知っている。
働くにもこのような病を患っていれば雇先もないだろう。
まさに八方塞がりで、どうしようも出来ないという揺るぎない現実が立ちはだかっているのだ。
幸いにも、私が死ぬ事で呪いが自分に降かかることを恐れた両親が食事や衣服など最低限の物を与えてくれるため、病以外で死ぬ予定は今のところない。
ならばこのまま、この状況に身を任せようと思っている。
まぁこの考えは諦め以外ほかならないのだが。
そんなある日、急に空が、海が、森が、生気をなくした。
空はどんよりと曇り、雨も降らない。海は濁った灰色となり、魚の姿が見られなくなった。森は、草木が枯れ、春なのに冬のような光景が広がっているのだという。
この事態に国は焦り、原因を探した。
しかし、原因不明であり、どんどん悪化するこの事態に王国は神のお告げをいただくことに決めた。
神のお告げとは一年に一回、月と太陽が重なる日だけ、高位神官が祈り続けることで聞くことが出来る。
その時、神は嘘偽りのない真実を一つだけ教えてくれるというのだ。
そして、儀式は成功し、神はこう仰ったという。
『精霊の愛し子が精霊を守っておらぬ。それゆえ、新しい精霊が生まれず精霊たちが怒り震えておるのだ。精霊の愛し子にそう伝えよ。』
神はそれだけ告げていった。
「精霊の愛し子」という存在はこの国では誰も知らなかった。
その愛し子がこの事態の原因だと言われても誰のことか分からない。
しかし、精霊と言われると、思い当たる存在がひとつある。
そう、花咲奇病を患っているものである。
直ぐに国王の勅命で、花咲奇病を患っているものが捜索された。
たとえ貴族であっても、勅命に逆らえば国家反逆罪とみなされかねない。
諦めた両親は自分たちの娘が、花咲奇病を患っていることを国王に内々に伝えた。
そこでやっと、私は5年ぶりの外に出ることが出来たのだ。
ありがとうございました^^*