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8話・気に掛かるのはマダレナさまの行方だけ


「きみは幾つ? 捨て子だったと言ったね? きみは聖殿で保護されていたのかい?」

「俺は十八歳です。俺は赤子だったときに聖殿前に捨てられていたそうです。それを大神官さまが見つけて自分の養子として育てて下さったんです」



 シーメルの問いに答えると、彼は何やら難しい顔をして考え込む素振りを見せた。俺は言い出せずにいたことを言うべきか悩んでいた。



「シーメルさん」

「なんだい?」



 シーメルは考え事から気が逸れたようで、優しい目を向けてくる。俺は言ってみることにした。



「実はその一件で親友の許婚が行方不明になっているんです。俺、冒険者になって彼女の行方を捜したいと考えています」

「もしかしてあのきみが持っていたあのパペットの持ち主かい?」

「はい。その人のことが俺は心配で……」

「なるほど。分かった。協力するよ。他のギルドにも当たってみよう」

「ありがとうございます」



 シーメルは思案してから言った。



「今、考えていたんだけどね、きみにお勧めの仕事があるんだけど、どうだろう?」

「何でしょう?」

「審査の仕事を頼みたいんだ」

「審査ですか?」



 シーメルの説明で冒険者とは、ギルドで斡旋された仕事を請け負い、その仕事をこなすことでギルドから報酬が支払われると聞いていた。主な仕事内容は様々で害虫駆除から清掃業。精肉、鮮魚の卸販売。生花販売。要人の警護や、護衛。薬草探しや人捜し。失せ物探し。魔獣狩りなどある。難度が高い仕事をこなすほど報酬は高くなるそうだ。

始め冒険者と聞いた時には、未開の地に挑む探検家のような者を想像していたが、これでは何でも屋のようだ。



「君には冒険者達の審査をしてもらいたい」

「つまり覆面調査ですか?」



 驚いた。まさか同業者を審査して欲しいと言われるとは思わなかった。てっきり他の冒険者のように、ギルドで斡旋された依頼を受けることになると思っていたからだ。


「どうして? 何か問題のある冒険者がいるとでも?」


 シーメルの言葉は意外に感じた。一緒に話をしていて思ったが、シーメルは冒険者達に絶対の信用を置いている。逆に信用のならない者は自分のギルドでは受け付けないようなことも言っていた。

そのシーメルが冒険者の行動を調べて欲しいというのだ。何か問題でも起きているとしか考えられなかった。


「いや、問題行動を起こす冒険者はいないよ。これは半年に一度、ギルドで行っている冒険者の昇給の為の審査なんだ。公平を期すために今までは冒険者でないものに頼んでいた。だけど請け負ってくれていた人が定年で辞めてしまってね。そろそろ誰かにお願いしなくてはと思っていたところだ」


 俺が訝る様子を見せたせいか、シーメルは「違う、違うよ」と、否定した。担当者が辞めてしまって困っていたのだと言った。



「彼らの働きによって仕事の報酬額を半年に一度上げているのさ。その為の審査だよ。手伝ってくれないかな? 手始めにきみから給金は弾むよ?」

「分かりました」



シーメルは冗談めかして言う。別に報酬に引かれた訳ではないけれど、彼には食事や宿など面倒をみてもらったのでお礼に引き受けることにした。



「はい。俺で良かったら」

「良かったよ。なあに仕事内容としてはそんなに難しいことじゃない。冒険者達の目につかずに密かに窺って彼らの仕事の様子を報告してくれればいい。報酬はその都度、払うようにするから」



 初めは審査と言う言葉に冒険者の中に問題行動をとる者がいて、それを取り締まるために審査をするのかとうがった見方をしてしまったが違ったらしい。

見たままを報告してくれれば良いよとシーメルが言うので気が楽になった。



「これから宜しくお願いします。シーメルさん」

「こちらこそ宜しく頼むよ。アフォン君」



 幸先良いことに仕事にもありつくことが出来たし、あと気がかりなことと言えばマダレナの行方だけだ。


「どこに行ったんですか? マダレナさま」


 お腹は満たされたけど、一向に眠気に襲われる要素が無かった。彼女の事が気になって仕方ないのだ。こうなれば神頼みならぬ、神獣さま頼みか。本当、頼むよ。白猫熊さま。



「マダレナさま」

「……ぁい」









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