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67話・最終話・最後に笑うのは俺だ


「ほらほらどうした?」


 奴に押され気味で守ることで精一杯になってしまう。その間にミハイロやダニールが攻撃をして相手の気を逸らそうとしてくれるが、牛魔人にとってはミハイロ達の攻撃は蚊に刺されたぐらいのダメージしか与えられてないようだ。


「ムムム……」


 マダレナが唸りだした。振動が左手に伝わってくる。



──もしやこれは?



「レナ。ウンコか?」

「違う。こんな時に何を言い出すの?」

「ごめん」



 馬鹿な事言わないでよと良いながら、マダレナが地面に向けて聖獣破を当て始めた。地面にぽこぽこ穴が空く。



「何する?」

「まあ、見てて。後はミハイロ、ダニール。捕縛をお願いね」


 こちらのやり取りを見て牛魔人は、ほくそ笑んでいた。



「無理、無理。無理だって。何を企んでるか分からないけどオレを倒すことは出来ないよ。諦めて大人しくオレの餌になりなよ。勇者さまっ」


 牛魔人がすぐ目の前に迫ってきたと思ったら両脇から捕縛魔法がかけられた。牛魔人は俺の目の前で捕らえられ抗う。捕縛から逃れ一歩踏み出した所で地面に足を捕らえていた。


「あっくん! 行けぇ聖獣破!!」


 左手を牛魔人に向けると強い光が周囲に満ちた。


「あっくん、成敗っ」


 マダレナの言葉に誘導されるように利き手にある聖剣を牛魔人の腹に切りつけた。肉を断つ感触があって牛魔人は崩れ落ちた。

 そして虫の息だった牛魔人に聖剣を突き立てると砂のように消えていった。



「やったわね、あっくん」

「今度こそやったんだよな?」

「ええ」



 マダレナと喜び合い、ミハイロやダニールと「終わったな」と、言葉を交わし合う。ミーヤは一人放心状態にあった。




 それから俺たちは父さんと共に宮殿に戻ってきた。イギアル元殿下を連れて。彼はまだ記憶を取り戻せてなくてリシャール国に連絡を取り数日後、迎えに来た使者と共に彼は幽閉先に戻っていった。

 彼の母親であるポリーナは、父さんとリシャール国王の書簡のやり取りの中で病死扱いになったようだ。


 ロジオンに成り代わっていた牛魔人が言っていたことは半分嘘だった。調べて分かったことだがポリーナは幽閉された後、リシャール国王が付けた警備の者達の目を掻い潜って、昔なじみのロジオンを頼るべく息子のイギアルを連れて幽閉先を抜け出し会いに行った。


 ところがロジオンは偽者だった。それを知って騒ぎだそうとした為に殺されてしまい、イギアルはその事に気がつかずミーヤが母親だと思い込んでいたようだ。

 そして牛魔人がこの国を簒奪しようと企んでいることに気がつき、でっち上げの結婚式で呼び出した皇帝を暗殺しようとしている事を知り、それを知らせる為に馬車の前に飛び出したようだ。


 ロジオン大公爵は遺体がないままに身内だけの葬儀が行われた。父さんと姉さん、俺に数人の使用人達とミーヤの静かな葬儀だった。

 その後、ヌコライ大公爵家には新しい当主が入ることが決まり、使用人達はそのまま仕える事が決まった。



 数ヶ月後、俺はその屋敷にやってきていた。俺は臣下となることを希望していたが、ロジオン伯父さんの跡目を継ぐことになったのだ。

 当主となることが決まり俺は髪型を変えた。今まで瞳の色を隠すように延ばし続けていた前髪を切り横に流すことにした。


 今まで視野が狭まっていただけに、重苦しかった前髪から解放されて視界もスッキリしている。

その俺に婚約者も出来た。マダレナだ。マダレナは俺が宮殿に戻ってからパペットから元の姿に戻り告白してきた。マダレナとは付き合いが長いだけに妹のように大事に思ってきた。その彼女から異性として好きだったと顔を赤らめて言われ、絆されるようにその気持ちに応える形となったが、後から自分は鈍かっただけだと気付かされた。


 もうすでに自分はマダレナに好意を抱いていたのだと知ったのはその後のこと。

今では彼女が自分の隣にいないと落ち着かない。彼女が隣にいるのが当たり前のようになってきている。来年には挙式を上げる予定で今からそれが待ち遠しい。

 蜂蜜色した髪に薔薇色の瞳。早く彼女を自分のものにしてしまいたいのに。



「挙式まで待てそうにないな」

「あっくん?」

「子作り始める?」

「もう! ミーヤもいるのになにを言い出すの?」



 そう言いながら照れる彼女は可愛らしい。彼女付きの侍女となったミーヤは「お二人とも仲が宜しいですこと」と苦笑気味だ。

 俺の侍従のミハイロと、護衛のダニールは見て見ない振りをしてくれていた。


「きみがそんな顔するからだよ」


 ぼそっとマダレナの耳元で囁き、頬にキスすればそこに手を当ててマダレナが顔を真っ赤にしていた。



「あっくん!」

「ははははは……」



 青空の下、照れ隠しに笑って片手を振り上げるマダレナから逃れるように駆け出せば、その後をマダレナが追ってきた。


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