64話・全て話してもらいます
「ポリーナはどのように亡くなったんだ?」
「あの人はある晩、急に訪ねて来たの。お子さんを連れてね。何だか嫌な気がしたら旦那さまには部屋から出ないように言い含められてあたしは部屋にいた。するとしばらくしてから廊下で男女の争うような声がしたと思ったら、何かが落ちていくような音がしたの。ドアの扉が閉まったような空いたような音がしたと思ったら、ポリーナと相手に呼びかけながら慌てたような旦那さまの声がして……気になって廊下に出れば、階段下で事切れた様子の彼女を抱き上げている旦那さまがいたわ。その時に初めて知ったけど彼女ってあたしによく似ているのね」
「なるほど。きみは旦那さまに詳細を聞いたかい?」
「いいえ。旦那さまは、きみは気にしなくて良いことだと言って彼女の死体を森まで運んで埋めた」
「それでポリーナが連れてきたイギアル殿下にはどう説明をしたんだい?」
「説明なんてしてないわ。翌朝、食堂で顔を合せたら彼は驚きつつ母様と呼びかけてきたからそのまま通したの」
俺にも話が見えてきたような気がする。マダレナの言ったお互いが庇い合っているという点が特に。
「大公爵は説明しようとしたけど彼が聞く耳を持たなくて、あたし達の結婚の話を聞くと屋敷から飛び出して行ってそれっきりよ」
「殿下は人の話を聞かないから……」
ミーヤがため息をつく。俺はそれに同情した。確かに殿下は人の話を聞かないばかりか思い込みが激しい。そのせいでとんでもない目にあった俺とマダレナがいるわけだけど。
そこへ落ち着きのある男の声がした。
「ミーヤは悪くない。悪いのは私だ。処罰なら私に」
「大公爵さま」
ヌコライ大公爵がミーヤの側へ近づいて彼女の肩を抱き寄せる。ミハイロやダニールと共に頭を下げようとしたらそれを止められた。
「きみは皇帝の命を受けてこの屋敷に入り込んだのかい? アフォン君」
「いいえ。俺は俺の意志であなたに会いに来ました。ロジオン伯父さん」
ロジオンは俺の事を父さんの密偵と思い込んだようだ。俺はすっかり警戒を解いていた。
「……? 私には伯父と呼ばれるような甥御は存在しないはずだが?」
「俺は父さんの息子です。姉さんや父さんはあなたのことをずっと気にかけていました」
そういって瞳を隠していた前髪をあげてみせると、ロジオンは凝視した。
「あなたは……! 皇子殿下。今までの非礼お詫び申し上げます」
驚きながらもその場に膝をつこうとする。それを慌てて止めた。
「止めて下さい。ロジオン伯父さん。俺は父さんがここの領地に入り込んだ途端に襲われたと報告を受けて姉の代わりに捜しに来ました」
「陛下には申し訳ないことをしました」
「全て話してくれますね?」
まだ目の前の人を完全に信用したわけじゃない。でもポリーナが死んだ経緯や、父が襲われた理由などは聞いておきたかった。




