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51話・ヌコライ大公爵領


「これからきみ達はどこか行くのかい?」

「用があってシスパーラ地方へ向かう予定です」

「シスパーラ? あそこは今騒がしくなっているようだよ」

「何か起こっているんですか?」

「詳しいことは分からないけど検問を行っているんだ。何でも凶悪犯が逃げ出しただの、ヌコライ大公爵の屋敷から逃げ出した強盗犯を捜しているだのと噂されているよ」

「物騒ですね。どこでその噂をクレイさんは聞いたんですか?」

「私の実家の領地がヌコライ大公爵家の領地と隣り合っていてね、この間、妻を連れて帰省した時に聞いたんだ」



 クレイさんはそれでねと話を続けた。


「父上が隣の領地で検問をしていると聞きつけて協力を申し出たらお断りされたんだ。それはこちらの領内での問題だからと」


 検問して誰かを捜しているぐらいなら協力しあった方がてっとり早くその相手を見付かると思うのに、あれでは捜している人物が他の領地の者には知られたくないように思われたと父上は言っておられたのだとクレイは教えてくれた。

 そしてもしも、シスパーラ地方で宿泊先に困ったりしたら父を頼ると良いよと紹介状まで書いてもらった。

 帝都警備団から出るとミハイロが聞いてきた。



「あの者とは知り合いですか?」

「うん。俺が聖殿を追い出された時の事は前に話したと思うけど、その時出会った人だよ」

「そうでしたか。礼も言わずに出て来てしまいましたな」

「まあ、良いんじゃないかな。物々交換で知り合った人だから。一方的にお世話になったわけじゃないし」



 ミハイロがお世話になったお礼も言わずに出て来てしまったのでは? と、言うので苦笑した。ミハイロは元筆頭神官だけあるので礼儀に欠けることを嫌がるのだ。


「まあ、情報が入って良かったよね。検問か。大丈夫かな?」


 不審者扱いされて領地の中に入れないって事は無いと良いけど? と、言えばダニールが大丈夫でしょうと言う。


「万が一、断られたとしてもなんとかなります。最終的には検問破りもありですね」


 何か物騒な事を言い出した。乗り合い馬車に乗って大公爵領についたのは夕刻を過ぎた頃だった。検問場所では松明が焚かれていて数名の兵が待機していた。

気にしていた検問だったけれど冒険者を名乗るとあっけなく通されて肩すかしのような気分を味わった。



「良いのかなあ? こっちとしては助かったけれど」

「あちらが力を入れているのはこれから入る方ではなくて出る方みたいですよ」



 俺の呟きにミハイロが応える。言われてみれば検問では領地から出る者達に、根掘り葉掘り聞く大公爵の配下らしき者達の姿が見えた。



「まずは宿泊先か」

「お兄さん。旅行者か何か? 宿泊先を探していたりする?」

「ああ。当日予約でも受け入れてくれる宿泊先はあるかな?」

「それなら丁度良かった。小鳩亭はいかが? 食事付きでお安くしておくわ」



 一人の少女に話しかけられて皆の顔を見れば頷かれる。最悪、野宿も覚悟していたけれど、今夜は宿屋に世話になるのも良いだろうと少女の世話になることにした。


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