49話・父さんを捜すことになりました
それから一ヶ月後。ヌコライ大公爵から父さん宛に婚礼のご案内が来た。
密偵の報告にあったヌコライ大公爵のもとへ身を寄せている夫人と結婚をすることにしたらしい。ヌコライ大公爵は初婚だが、お相手の夫人は再婚になるということで華美なものではなく、家族のみの質素な挙式を望んでいると言うことでぜひ、父さんに参列して欲しいと招待状が届いた。
父さんは喜んで参列することを決め、出かけていったが行方不明となった。ヌコライ大公爵からの知らせでは領内に入った途端、父さんの乗った馬車は盗賊に襲われたらしい。そこから行方が知れないと言う。
その知らせに姉はすぐに捜索の者を出したが、未だ行方が掴めていない。
俺としてはこの件に何者かの関与を疑っている。姉さんが信用する大公爵を疑いたくはないが、密偵の報告にあった謀反の疑いや、挙式の参列の誘いをかけて父さんを呼び出したのではないかという疑惑が晴れないのだ。
父の安否を心配してすぐにでも宮殿を飛び出そうとした姉さんだったが、俺が姉さんに代わって父さんを捜しに行くと言ったら泣きそうになっていた。
「今まで俺は父さん達に捜してもらっていた。今度は俺が捜し出す番だよ。必ず父さんを見つけ出すから」
「アン。わたしもついて行くから大丈夫。これでも鼻が利くのよ」
そんな俺とマダレナに、シーメルとミハイル、ダニールが同行者に名乗り出てくれたがシーメルには姉の側に残ってもらうことにした。
出立の際、姉さんは馬車を用意してくれようとしたが断った。父さんを襲ったのは物取りの犯行だったと聞いている。皇家の馬車で向かったなら盗賊らにどうぞ襲ってくれと言っているようなものだと言って。
だから冒険者を装って向かうことにした。ヌコライ大公爵を信じている様子の姉さんの前では言えなかったが俺としては大公爵の関与を疑っている。
幾ら物取りの犯行だったとしても父さんの護衛には腕利きの者達がついていた。その者達が誰一人帰って来ないというのはおかしい。
俺の予想としては、父さんは拘束されているのではないかと思っている。相手が俺に会ってないことを良いことに、相手の目を欺く為にも冒険者を装って向かうことにした。
「気をつけてね。必ずお父さまを見つけ出して一緒に帰ってきてね」
姉さんは悲痛な表情を浮かべて見送ってくれた。その顔を浮かべながら俺はマダレナを懐に押し込み、帰ってきたときには満面の笑みにしてやりたいと思いながら宮殿を出た。
「あ──。痛たたたたあ」
帝都の外れに来た時だった。一人の女性が橋のたもとで胸元を押さえてしゃがみ込んでいた。
具合が悪そうだ。
「どうしました?」
「急にお腹が痛くなって……」
妙齢の女性は俺を仰ぎ見る。綺麗な女性だった。身を屈めようとした時だった。ミハイロが無情にも言った。
「アフォン。急ぎましょう。行きますよ」
正義心の塊の彼が彼女を全然相手にしなかった。女性は俺に取りすがった。
「お願いです。助けて……」
その手が俺の懐に入り込もうとして女性は悲鳴を上げた。
「痛たっ」
女性の手に思い切りマダレナが噛みついていた。




