46話・女性を怒らせると怖い
「そういえばレナちゃんは? お部屋にいるの?」
「ミハイロさん達に預けてきた。来たがっていたけどね」
目の前の豪勢な食事を見て思う。レナにも食べさせてやりたかったなって。すると目の前の料理が片っ端から消えて無くなった。
「え?」
「どうしたの? あら、アフォンって結構食べるのね? まだまだあるらしいから遠慮しないで食べなさいよ」
「あ。うん」
これは明らかにマダレナが食べている。どこにいる? と、思ったら姉さんのドレスの影に隠れていた。
「レナ」
つまみ上げると姉さんが「まあ」と、笑った。
「来ていたのね? レナちゃん、何が食べたい?」
「ハム」
「あげるわ」
パペットと姉さんが楽しそうに会話をしていた。パペツトが食事するって、姉さんはおかしく思わないの?
「姉さん、疑問に思わないの?」
「何が?」
「パペットが食事しているんだよ。おかしくない?」
「でも中身は聖女さまでしょう? 有りじゃない?」
「え? 有りなの?」
おかしいと思うのは俺だけ? 疑問符を浮かべた俺に姉さんがグラスを差し出して来た。
「まあ、飲みなさいよ。嫌な事は飲んで忘れるのに限るわ」
「姉さん。うわあ。酒臭い」
姉さんはかなりの量を飲んでいたようだ。少し酔ってる? だからパペットが食事しようが気にしてない?
思わす周囲を見渡せば、皆が姉さんと似たような状態で出来上がっていた。
「祝いの席なんだから飲まなきゃ損よ。ねぇ、お父さま」
「その通りだ。これはおまえの為に開いた宴席だからな。飲め、飲め!」
そう言いながら赤ら顔の父さん。父さん、あんたもか! 父さんに肩を抱かれてちびちびグラスを煽ることになってしまった。
後日。カールルとピンク頭には処罰が下った。俺の祝いの場を騒がした事と、次期皇帝になると言ってのけたことからカールルには伯爵への降格処分の上、宮殿への出入りを禁じられ、ピンク頭はその彼と婚姻することに。
カールルとピンク頭を結婚させるなんて甘い処分じゃないかと思ったら、姉さんへの慰謝料を払うことになってカールルは先祖代々受け継がれてきた領地を全て没収されることになりそうだし、今までのようなお金にものを言わせた生活は送れないらしい。
ピンク頭の実家は、俺の祝いの席で二人がしでかした事に相当腹を立てており、カールルに嫁入り前の娘を傷物にした責任を取って欲しいと責め立て、娘には勘当を言い渡した。ピンク頭の実家としては早くも娘を切り捨てたらしかった。
祝いの席でのこと、名だたる貴族らが集まる中でやらかしたことなのでカールルには断ることも出来ずに渋々ピンク頭を引き取ることにしたようだ。
これから慎ましい生活を送る中であの二人がどう耐えてやっていけるかしらねと、姉はスッキリした表情を見せていた。その隣には愛らしい笑みを浮かべたパペットがいる。
「安心して、アン。あいつは夜の生活はてんで駄目になっているから、あの二人にとっても地獄だと思うわ」
そういうレナの円らな瞳には黒いものが宿っていそうで怖い。女性は怒らせない方がいいようだ。一つ学んだ。




