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41話・まさか自分が皇帝になれるとでも?


「カールル。何事?」


 こちらが入室許可も与えてないのに堂々と、金髪に青い目をした一瞬誰かさんを思わせるような容姿をした美男子が入ってきた。よくよく顔を見たら全然あのお馬鹿さんには似てなかったけれど、同類の匂いがする。

 名前もカールルって軽いな。



「殿下のご機嫌伺いに参りましたら、十八年間行方知れずになっていた皇子さまが見付かったと窺いまして」

「誰かしら? あなたにそのようなことを告げ口したのは。宮殿にはずいぶん口の軽い子猫ちゃんがいたものね」

「ははは。殿下は手厳しい。わたくしはゆくゆく王配となる身。それゆえわたくしにとって義理とは言え、皇子さまがみつかったのです。報告があるのは当たり前でしょう」

「あなたの可愛い子猫ちゃんが鳴いて教えたのかしら? 子猫ちゃんは私の側付きから外すわ」



 何気ない会話であるように聞こえるが、「子猫ちゃん」と、言うのはカールルと懇意の仲である女官のように聞こえた。

「子猫」という隠語を使いながら誰のことを指しているのか姉とカールルの間では話が通じている。その上、姉に不貞を見透かされているのに堂々とした態度のカールルには呆れた。


「妬いているのですか? 殿下。子猫ちゃんは愛玩動物ですよ。それ以上でもそれ以下でもない。単なるペット相手にあなたが妬かれるほどのものでもありますまい。それに結婚前に他の女性を知っておくのも必要だと思いますが? 結婚したらあなた以外、相手は出来なくなるのですから」


 カールルは明らかに姉を馬鹿にしていた。結婚したら浮気は出来ないのだから、婚姻前の女遊びくらい目を瞑れと言ってのけたのだ。

 姉さんはカールルのこういった性格を知っていて反論してもどうにもならないと思っているのだろう。ため息を漏らしていた。


「そう、分かったわ。だったら子猫ちゃんをちゃんと躾ておいてくれないかしら? 最近では飼い主が誰か分かってないようでわたしに牙を剥いてくるときがあるから」


 恐らく話題にのぼった「子猫ちゃん」は、未来の王配になるカールルの愛人となって気が大きくなったようだ。皇女である姉さんに刃向かうと聞かされて気まずく思ったのかカールルは俺に話を振ってきた。



「やあ、きみが皇子さまか? 宜しくね。わたしはカールル。このベルリアン帝国のセトム大公爵の地位にある。ジュアンヌ殿下の許婚だよ」

「宜しくお願いします。俺はアフォンです。セトム大公爵」

「なんだ。堅いなぁ。ゆくゆく義理とは言え、兄弟になるんだから遠慮しないでアフォン君」

「そうなれると良いですね。セトム大公爵」



 こんなやつが義理とはいえ、兄になるのは勘弁して欲しい。姉さんがこいつの女性関係で苦労かけさせられているのが可哀相に思った。


「……? きみ、まさか自分が皇帝になる気でいるとでも? 厚かましいね。いくら十八年前に攫われて戻ってきたからと言っても、そう簡単に皇帝になど慣れないよ」


 カールルの発言に驚いた。そんなこと考えてもなかった。俺の考えたこととは姉さんの幸せ。こんなやつと一緒になっても幸せになれる気がしない。イラッときた。


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